ビットコインのホワイトペーパーとは?記載内容や今後の将来性について
ビットコインのホワイトペーパーとは?記載内容や今後の将来性について
ビットコインのホワイトペーパー(Bitcoin: A Peer-to-Peer Electronic Cash System)は、サトシ・ナカモトが提示したビットコインの説明資料です。ホワイトペーパーは、ビットコインをはじめとする多くの仮想通貨の仕組みを把握するうえで不可欠な資料です。
ホワイトペーパーを読めば、ビットコインの価値や限界を把握できるため、根拠をもって投資判断できるようになります。
一方で、ホワイトペーパーは専門用語が多く英語で書かれているため、多くの方にとって読むにはハードルが高めです。
本記事では、ビットコインのホワイトペーパーの概要から主要な内容、将来性まで解説しています。
【この記事を読むとわかること】 ・ビットコインのホワイトペーパーの概要 ・ビットコインのホワイトペーパーの内容 ・ビットコインの将来性 |
本記事を読めば、ビットコインの基本的な仕組みや特徴を理解し、仮想通貨に関する知識が深まるでしょう。
ビットコインのホワイトペーパーとは?
ビットコインのホワイトペーパーは、分散型デジタル通貨の仕組みを説明した資料です。従来の金融システムを根本から変える、新しい電子マネーの設計図となっています。
まずは、ビットコインのホワイトペーパーの基礎を以下の順番で確認しましょう。
- サトシ・ナカモトが発行したビットコインの説明資料
- 仮想通貨を支える技術の基礎を記載
サトシ・ナカモトが発行したビットコインの説明資料
ビットコインのホワイトペーパーとは、サトシ・ナカモトによって発表された、ビットコインをはじめとした仮想通貨の基盤技術が記載された資料です。
サトシ・ナカモトは、ビットコインの創始者として知られる人物で、国籍や性別などは謎とされています。
2008年11月1日、サトシ・ナカモトはmetzdowd.comの暗号理論に関するメーリングリストに、ホワイトペーパーへのリンクを投稿しました。2010年半ばまで、サトシ・ナカモトは他の開発者とともに、ソフトウェアの改良を続けているとされています。
ビットコインのホワイトペーパーは、現在のほぼすべての仮想通貨を支えている基盤技術のはじまりとして、伝説的な資料として知られています。
仮想通貨を支える技術の基礎を記載
ホワイトペーパーでは、分散型台帳や暗号学的ハッシュ関数、プルーフ・オブ・ワーク(PoW)など、ビットコインに不可欠な技術について詳しく解説されています。
各技術を組み合わせた結果、ビットコインは中央管理者なしで機能する「安全かつ信頼性の高い仮想通貨システム」を実現しました。ホワイトペーパーは、技術的基盤を詳細に説明し、仮想通貨の可能性を示す重要な文書といえます。
ビットコインのホワイトペーパーに書かれている11の内容
ビットコインのホワイトペーパーには、11の重要な項目が含まれています。各項目を確認しましょう。
- P2P電子マネーシステムの提案
- トランザクションの仕組み
- タイムスタンプ・サーバー
- プルーフオブワーク(PoW)システム
- ネットワークの動作手順
- インセンティブ構造
- プライバシーの保護
- 価値の結合と分割
- セキュリティモデル
- スケーラビリティ
- 分散型合意形成
1. P2P電子マネーシステムの提案
P2P(ピアツーピア)電子マネーシステムは、従来の金融機関に依存しない新しい決済方法を提案しています。P2Pシステムのおかげで、銀行や企業などの中央管理者が存在しなくても、ユーザー間の直接取引を可能にしました。
たとえば、海外にいる友人に送金する場合、従来の銀行送金だと手数料が高く、送金が完了するには数日かかるのが一般的です。しかし、P2Pシステムを使えば低コストの送金が数分で完了し、世界中の誰とでも簡単にお金のやり取りができます。
P2Pの詳細については、以下の記事を参考にしてください。
https://bitbank.cc/knowledge/column/article/bitbankplus-column-p2p
2. トランザクションの仕組み
トランザクションは「お金の取引」を意味し、ビットコインの取引では暗号技術を用いた電子署名の技術を採用しています。取引履歴は、世界中のコンピューターで共有される大きな帳簿(ブロックチェーン)に記録されるため、取引記録は誰でも確認可能です。
たとえば、AさんがビットコインをBさんに送金する場合、送金履歴がネットワーク全体で記録されます。取引履歴の改ざんは困難なため、不正取引や二重支払いを防止できます。
3. タイムスタンプ・サーバー
タイムスタンプ・サーバーは、取引が行われた正確な時間を記録するための技術です。デジタル通貨特有の、二重支払い問題を解決するためにも必要です。
たとえば、ビットコインを使った2つの取引が同時に発生した場合、タイムスタンプによって先に処理された取引のみが有効となります。後の取引は拒否されるため、二重支払いが発生する心配はありません。
4. プルーフオブワーク(PoW)システム
プルーフオブワーク(PoW)システムは、ブロックチェーン上に新しいブロックを作成する際に、複雑な数学的問題の回答を要求するシステムです。数学の問題を解けば、ブロックを生成する権利が取得できます。
計算には膨大な処理能力と電力が必要となるため、誰でも問題を解ける訳ではありません。問題を解く人々は「マイナー」と呼ばれ、計算能力が高いコンピューターを使って回答を導き出します。
問題が回答された後にブロックを生成(マイニング)すると、新しいビットコインを報酬として受け取れます。もし生成したブロックを改ざんしようとすると、すべてのブロックを再計算しなおす必要があるため、莫大な時間と資源が必要です。
プルーフオブワーク(PoW)システムの詳細については、以下の記事を参考にしてください。
https://bitbank.cc/knowledge/column/article/bitbankplus-column-pow
5. ネットワークの動作手順
ビットコインのネットワークは、世界中のコンピューターとつながった大きなシステムです。新しい取引が発生するとネットワーク全体に広がり、各コンピューターが取引を確認します。
たとえば、友人にビットコインを送ると、送金の情報はネットワーク上にあるすべてのコンピューターに伝わります。本当にビットコインを送金したのか、すでに使っていないかなどを確認する作業が各コンピューターの役割です。
コンピューターが「問題なし」と判断すると、取引は正式に記録されます。コンピューターが自動で取引履歴を確認する仕組みのおかげで、中央の管理者がいなくても、システム全体が正しく機能します。
6. インセンティブ構造
インセンティブ構造とは、ビットコインのシステムを維持する人々に報酬を与える仕組みです。ネットワークの安全性と成長を促進するためにも重要な構造です。
たとえば、マイナーと呼ばれる人々が取引情報の詰まった新しいブロックを作成(マイニング)すると、報酬(新しいビットコインなど)が受け取れます。
インセンティブが発生する仕組みにより、多くの人がシステムの維持に協力するようになり、ネットワーク全体の安全性が保たれます。新しいブロックを作成するマイニングの仕組みについては、以下の記事を参考にしてください。
https://bitbank.cc/knowledge/column/article/kyokasho-mining
7. プライバシーの保護
ビットコインはプライバシーの保護を考え、匿名性と透明性が備わったユニークな方法を採用しています。ホワイトペーパーで提案されている技術により、すべての取引において、個人を特定する情報は公開されません。
たとえば、仮想通貨を保管するウォレットには口座番号と同じ仕組みのアドレスが存在し、誰でも閲覧可能です。ただし、ウォレットアドレスを保有しているユーザーが誰かはわかりません。
プライバシーは保護されながらも、取引履歴は誰でも見られるため、システムの透明性は保たれます。
8. 価値の結合と分割
ビットコインの「価値の結合と分割」は、通貨の使い方を柔軟にするための仕組みです。ビットコインは単位を細かく分割できるため、小さな取引から大きな取引まで柔軟に対応できます。
たとえば、ビットコインが入っているウォレットの中に、0.01BTCと0.006BTCが入っていたとしましょう。もし0.016BTCの支払いが必要な場合、すべてを「結合」して送金できます。
一方で、0.02BTCをもっていて0.008BTCの支払いをする場合、支払い分0.008BTCとお釣り0.012BTCへ「分割」できます。
9. セキュリティモデル
ビットコインのセキュリティは、暗号技術とインセンティブ構造の組み合わせにもとづいて成りたっており、システムが外部から攻撃されないように設計されています。
たとえば、ビットコインのネットワークを乗っ取るには、世界中のマイニング用コンピューターの半分以上を制御しなくてはいけません。ネットワークの過半数の計算力を制御するには膨大な費用がかかり、仮に成功しても損失が大きくなります。
ネットワークを攻撃するより、セキュリティ向上に協力した方がプラスになるよう設計されているため、ビットコインの安全性は保たれています
。
10. スケーラビリティ
スケーラビリティとは、システムが成長しても効率よく機能し続けるための度合いです。ビットコインのホワイトペーパーでは、スケーラビリティを向上させるため、以下3つの方法が提案されています。
提案されている方法 | 説明 |
ブロックヘッダーのみの保存 | 古い取引の詳細情報を削除し、ブロックの要約情報のみを保持してストレージを節約する方法 |
マークル木の活用 | 大量の取引データを効率的に要約し、完全なブロックを保持せずに支払いを検証する方法 |
SPV | すべてのデータをダウンロードせずに取引を確認する方法 |
上記の方法を組み合わせると、ビットコインネットワークは大量の取引を効率よく処理できます。システム全体の処理能力が向上すると、多くの人々がより速く、より少ないリソースでビットコインを利用できるようになります。
11. 分散型合意形成
分散型合意形成とは中央の管理者がいなくても、ネットワーク全体で正しい情報を共有し、合意する仕組みです。
ビットコインでは各参加者(ノード)が独立して取引を検証し、最長のチェーンを選択します。最長のチェーンが選択される理由は、最も多くの計算力(作業証明)が投入されたチェーンであり、改ざんが最も困難であると考えられるためです。
たとえば、取引情報の詰まった新しいブロックが作られると、ネットワーク上にあるすべてのコンピューターが正当性をチェックします。正式なブロックと判断されチェーンへ追加されるためには、過半数のコンピューターによる「OK」のサインが必要です。
分散型合意形成の仕組みのおかげで、単独でのシステム操作はできず、全体の信頼性が保たれます。
ホワイトペーパーに書かれた技術に課題は存在する
ビットコインのホワイトペーパーで提案された技術には、実用化に向けていくつかの課題があります。最大の問題はスケーラビリティで、現在のシステムでは大量の取引を処理できません。
たとえば、ビットコインのメインネットワークでは、平均して10分に1回、1ブロックあたり約2,000件の取引しか処理できません。クレジットカード会社が1秒間に数万件処理できる点と比べると、処理数は少ないといえます。
しかし、処理速度の問題や制限に対処する「ビットコインレイヤー2(L2)」の開発が進み、高速・低コストな取引が可能になりつつあります。今後、新しい技術革新により、スケーラビリティ問題は解決されていくでしょう。
ホワイトペーパーから読み取れるビットコインの将来性
ビットコインのホワイトペーパーは、従来の金融システムを根本から変える可能性を示しています。中央管理者不在の分散型システムにより、低コストで迅速な国際送金が実現可能です。
ホワイトペーパーから読み取れるビットコインの将来性をまとめると、以下のとおりです。
- 送金・決済システムとして世界中で普及する
- 金融システムの課題を解決する
送金・決済システムとして世界中で普及する
ビットコインは取引手数料が低く処理速度も速いため、国境を越えた送金・決済システムとして世界中で普及する可能性があります。
たとえば、海外在住の労働者が母国に送金する場合、銀行から送金すると手数料は5〜10%かかります。
一方、ビットコインは送金手数料が1%未満に抑えられる場合もあるため、余計な出費がかかりません。誰でもビットコインでの送金や決済を行えるため、将来性は高いといえます。
金融システムの課題を解決する
ビットコインは中央管理者を必要としない分散型システムとして、従来の金融システムに依存しない、低コストかつ迅速な国際送金を実現しました。そのため、金融サービスへのアクセスが限られた地域の人々に対して、大きな価値をもたらします。
ビットコインの発行量には上限(2100万枚)が設定されていて、人為的に増やせません。ゆえに、ビットコインは政府や中央銀行の金融政策の直接的な影響を受けにくい特徴があります。
この性質により、インフレに悩む国々において、ビットコインは価値の保存手段として機能する可能性があります。
将来性を期待して仮想通貨取引を始めるなら、ビットコインがおすすめです。ビットコインの売買ができる取引所については、以下の記事を参考にしてください。
https://bitbank.cc/knowledge/column/article/bitbankplus-column-howtochooseexchange
ビットコインのホワイトペーパーに関するよくある質問
最後に、ビットコインのホワイトペーパーについてよくある質問を2つ紹介します。
- 日本語で書かれたホワイトペーパーはありますか?
- MacOS内にホワイトペーパーが存在したのは本当ですか?
日本語で書かれたホワイトペーパーはありますか?
公式の日本語版ホワイトペーパーは存在しません。しかし、有志によって翻訳された非公式な日本語版がいくつか存在します。
ただし、翻訳版は原文の意味を誤って解釈し、技術的な用語や概念の説明に若干の違いがある可能性もあります。そのため、可能な限り英語の原文を参照して、内容を把握する方法が望ましいでしょう。
MacOS内にホワイトペーパーが存在したのは本当ですか?
MacOS内にビットコインのホワイトペーパーが存在していたのは事実です。MacOS Sierraのバージョン10.12.0から10.12.3まで、システムファイル内にホワイトペーパーのPDFが含まれていました。
発見されたのは2017年で、Apple社が意図的に行ったのではなく、開発の中で誤って含まれてしまったと説明しています。後のアップデートで、ファイルは削除されました。
ホワイトペーパーの内容を理解したら取引所でビットコインを購入してみよう
ビットコインのホワイトペーパーは、仮想通貨の技術と課題を把握するうえで重要です。理解を深めた後、実際にビットコインを購入すると、実用的な価値や現実的な課題をより把握しやすくなるでしょう。
ビットコインを購入する場合、信頼できる取引所を選び、少額から始めればリスクを最小限に抑えられます。国内取引所で仮想通貨投資を始め、徐々に知識と経験を積み重ねていきましょう。