コスモス(ATOM)とは、ブロックチェーン同士の相互運用性やスケーラビリティの課題を解決するために構築された、分散型のネットワークエコシステムです。ATOMは、ネットワークのセキュリティを支えるステーキングや、ガバナンス投票に使用されます。
通貨記号 | ATOM |
発行者 | Jae Kwon / Ethan Buchman |
発行上限 | 無し |
承認方式 | DPoS |
発行日 | 2019年4月23日 |
ビットバンク取扱開始日 | 2025年5月13日 |
公式サイト | |
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ソースコード |
2014年:プロジェクトの着想とTendermintの開発
Jae Kwon氏が、ビザンチン・フォールト・トレラント(BFT)コンセンサスアルゴリズムを採用したTendermintを開発し、コスモスプロジェクトの基盤を構築しました。
2016年:ホワイトペーパーの公開とICFの設立
コスモスのホワイトペーパーが公開され、スイスに本拠を置くInterchain Foundation(ICF)が設立されました。ICFは、コスモスの研究開発を支援する非営利団体です。
2017年:ICOによる資金調達
コスモスは、ネイティブトークンであるATOMのInitial Coin Offering(ICO)を実施し、約1,700万ドルの資金を調達しました。
2019年:コスモスハブのローンチ
コスモスエコシステムの中心となるコスモスハブが稼働を開始しました。これにより、異なるブロックチェーン間の相互接続が可能となる基盤が整いました。
2021年:IBCプロトコルの導入
Inter Blockchain Communication(IBC)プロトコルが有効化され、異なるブロックチェーン間でのトークンやデータのやり取りが可能となりました。
2023年:USDCの対応と流動性ステーキングの導入
ステーブルコインUSDCがコスモスエコシステムに対応し、また、ATOMの流動性ステーキングが可能となりました。
2025年:企業との連携と技術革新
トヨタファイナンシャルサービスなどの大手企業が、コスモスの技術を活用した分散型金融サービスの研究開発を進めています。また、コスモスSDKのアップグレードやEVM互換性の向上など、技術革新が進められています。
コスモスは、独立したブロックチェーン同士を繋げて、分散型社会を実現するためのInternet of Blockchains(ブロックチェーンのインターネット)を構築することを目指しています。
IBCは「ブロックチェーン間通信」プロトコルと呼ばれ、異なるブロックチェーン同士が安全かつ直接にデータや価値をやりとりするための標準規格です。
IBCでは、まずトランスポート層(TAO)でブロックチェーン間に安全な接続を確立・認証し、その上のアプリケーション層でトークンのやり取りやクロスチェーンの機能を定義します。この仕組みにより、トークンの移転やクロスチェーンのスマートコントラクト呼び出し(インターチェーンアカウント)など、様々なチェーン間連携が可能になります。
要するに、IBCによってエコシステム内の別々のブロックチェーン同士がシームレスに接続し、ネットワーク全体での相互運用性を実現しています。
コスモスでは、エコシステム内の各独立ブロックチェーンを「ゾーン」と呼び、それらをつなぐ中核ネットワークとしてコスモスハブというブロックチェーンが存在します。コスモスハブはハブとしての役割を持ち、各ゾーン間の接続と情報交換を仲介します。
具体的には、コスモスハブがIBC経由で各ソーンと通信し、異なるゾーン間でのトークン移転やデータ共有を可能にします。
Interchain Security(ICS)はコスモスにおける新しい機能で、ネットワーク間でセキュリティ(バリデータによるブロック検証能力)を共有する仕組みです。
具体的には、コスモスハブが自らのバリデータ集合を他のゾーンと呼ばれる新規チェーンに提供し、そのゾーンのブロック検証も担当します。これにより、新興のゾーンは自前で多数のバリデータを集めなくても、コスモスハブと同等のセキュリティを享受できるようになります。
ATOMは、コスモスハブのネットワークセキュリティを維持するために使用されます。
具体的には、ATOMの保有者は、保有するATOMをバリデーター(検証者)にデリゲート(委任)し、ステーキングを行うことができます。
バリデーターは、ブロックの生成やトランザクションの検証を行い、その報酬を得ます。得られた報酬の一部は、ATOMをステーキングした保有者に分配されます。
ATOMは、コスモスハブのプロトコル変更やネットワークの運営方針に関する意思決定に使用できます。
提案は、少額のATOMをデポジットすることで、誰でも提出することができます。
2024年10月16日、コスモスSDK、IBC Protocol、Tendermint Coreを開発する企業ALL IN BITS(AiB)は、コスモスが採用するLiquid Staking Module(LSM)にセキュリティリスクが存在すると公表しました。
具体的には、ATOMの流通基盤であるコスモスハブ内に実装されたLSMに、スラッシングを回避し、そのリスクを他のバリデーターに転嫁できるという脆弱性の存在が公表されました。さらに、LSMの開発コードの大部分が、北朝鮮に関係する人物によって提供されていたことが判明しており、これらの事実がコミュニティに開示されず、隠蔽されていたとされています。
北朝鮮の開発者が関与していたことにより、未発見の脆弱性やバックドアの存在、またLSMにおけるスラッシング回避機能の影響範囲などが懸念されます。しかし、2024年12月にOtterSecが実施したコード監査の結果を踏まえると、複数の脆弱性が指摘され、すべて修正済みであることが確認されています。なお、LSMにおけるスラッシング回避にかかる脆弱性については、直ちに修正を要するものではないと整理されています。
この見解は、プロトコルのセキュリティを担保するステーキングとは異なり、LSMが任意で利用可能な機能にとどまることから、当該脆弱性によってプロトコル全体が破綻する可能性は極めて低いとの整理に基づくものであると考えられます。