P2P(ピアツーピア)とは? 仮想通貨との関係や活用事例をわかりやすく解説
P2P(ピアツーピア)とは? 仮想通貨との関係や活用事例をわかりやすく解説
P2Pとは「Peer to peer(ピアツーピア)」の略で、端末(ピア)同士が直接データをやり取りするネットワークです。
P2Pは、ビットコインをはじめとする仮想通貨やLINEなどにも使われている技術で、今後はさらに多くの業界に普及していくと言われています。
本記事では、P2Pの基本情報やメリット・デメリット、活用事例などを紹介しています。
この記事を読んでわかること
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P2Pは仮想通貨に使われている根幹技術であり、投資を始めるうえでの基礎知識でもあります。これから投資を始める予定の方は、ぜひ参考にしてください。
P2Pとは?仮想通貨とはどのような関係なのか
P2Pとは端末間で直接通信し、データ共有を行うシステムです。
端末は「ピア」もしくは「ノード」と呼ばれ、ビットコインを代表とする仮想通貨の分野で広く利用されています。
仮想通貨分野で使用される目的は、ブロックチェーン技術を利用して、通貨の分散化やセキュリティの向上、透明性を確保することです。
ビジネスの分野でもP2Pは利用されますが、効率性やコスト削減、システムの柔軟性向上などが目的のため、必ずしもブロックチェーン技術を使用しません。
まずは全体像を把握するために、以下2点を確認していきましょう。
- クライアントサーバー方式との違い
- P2Pはブロックチェーンの根幹技術
クライアントサーバー方式との違い
ネットワークのおける通信方式には、P2P方式とクライアントサーバー方式の2つがあります。
P2P方式 | クライアントサーバー方式 | |
通信方法 | 中央サーバーなしで端末同士の通信 | 中央サーバーを介して通信 |
ネットワーク | 端末が独立して相互作用する分散型ネットワーク | サーバーに接続する中央集権型ネットワーク |
データ交換方法 | 端末同士が直接ファイル共有 | サーバー経由のファイル共有 |
セキュリティ | 端末同士でウイルスが拡散 | サーバー攻撃に対して脆弱 |
両者の違いは、中心となるサーバーの有無です。クライアントサーバー方式は、一般的に使用されている通信形式で、ユーザーの端末からのアクセスに基づいて、サーバーがデータを提供する仕組みです。
P2P方式は、データの集中管理を担うサーバーが存在しないため、ネットワークに接続された端末同士が直接データの交換を行います。
P2Pはブロックチェーンの根幹技術
P2Pではネットワーク上の端末が直接通信するため、中央集権型のサーバーが不要となります。
ブロックチェーンによって各端末に情報が分散されると、データの改ざんが困難になるためセキュリティの強化につながります。
ビットコインをはじめとする多くの仮想通貨でブロックチェーン技術が採用されているのは、改ざんが困難になるメリットがあるからです。
P2Pの種類
P2Pには主に3つの種類があります。本章では各タイプごとに特徴を解説します。
- ピュアP2P
- ハイブリッドP2P
- スーパーノード型P2P
ピュアP2P
ピュアP2Pは中央サーバーを使用せず、ネットワーク内の各端末(ノード)が直接情報を交換するシステムです。
ピュアP2Pでは、各端末が共有すべきデータの一部を保持し、必要に応じてデータを相互に検索します。
端末間で情報を補完しあうため、効率的な情報共有が可能となり、ネットワーク全体の情報量が充実する仕組みです。
ハイブリッドP2P
ハイブリッドP2Pは、ピュアP2Pとクライアントサーバーを組み合わせて管理する方式です。
分散したデータは各端末がもっているものの、不足している情報を探す場合は、中央サーバーに問い合わせます。
各端末がもっている情報は中央サーバーに管理されているため、サーバーに問い合わせると、必要なデータ情報の所在が把握できる仕組みです。
スーパーノード型P2P
スーパーノード型P2Pは、端末のインデックス情報※をスーパーノードという端末が管理する方式です。
※各端末がもっている情報の所在を示し、目次の役割を果たす
スーパーノードには、通信が安定している高性能なコンピュータが複数選抜されます。
選ばれたスーパーノードは、ネットワーク上の端末情報を管理し、各端末からのリクエストを受けて、必要なデータの検索を実施します。
P2Pをブロックチェーンで使用するメリット
P2Pをブロックチェーンで使用するメリットとして、以下の3点が存在します。各メリットについて詳しく解説します。
- 通信が安定している
- データの改ざんを防げる
- 安価でシステムが構築できる
通信が安定している
P2Pではデータを複数の端末で分散して管理できるため、通信が安定しています。
クライアントサーバー方式では、通信するコンピュータの数が増えるほどサーバーにかかる負荷が増加し、サーバーダウンのリスクが高まります。
一方で、P2Pではネットワーク全体の負荷を分散させられるため、安定した通信を維持できるのです。
さらに、特定の端末が停止しても他の端末が通信を継続できるP2Pでは、全体のシステムが停止するリスクをほぼゼロにできます。
データの改ざんを防げる
ブロックチェーン技術を活用すると、複数のコンピュータでデータを管理できるため改ざんを防げます。
情報が正しいか決めるには、複数のコンピュータのチェックを通る必要があるため、不正な改ざんが起きにくいシステムになっているのです。
また、ブロックチェーン上では、ユーザーの実名ではなく長い英数字の羅列であるアドレスが使用されたり、取引データが暗号化されたりしています。ゆえに、ユーザーを特定するのも困難であるため、高い信頼性とセキュリティを担保できます。
安価でシステムが構築できる
P2Pでは、サーバーを用意しないため運用コストを削減しつつ、低コストでシステムを構築できます。
クライアントサーバー方式の場合、中央のサーバーでデータ管理する必要があるため、大量の情報を処理できるサーバーを用意しなければいけません。加えて、システムを維持していくためのサーバーの保守や運用費などのランニングコストも発生します。
P2Pの場合、低コストでシステムを構築できるため、大手企業だけでなく、スタートアップ企業や中小企業でも実行に移しやすいメリットがあります。
P2Pをブロックチェーンで使用するデメリット
P2Pをブロックチェーンで使用するデメリットも理解しておきましょう。本章では、各デメリットについて解説します。
- ネットワーク容量が許容範囲を超えやすい
- セキュリティリスクがある
- 記録されたデータを削除できない
ネットワーク容量が許容範囲を超えやすい
P2Pでは、データの送受信を断続的に実施するため、ネットワーク容量の許容範囲を超えるリスクがあります。
すべての取引記録がネットワーク上の各端末に保存されるため、データ量が時間とともに膨大になり、ストレージが増加しやすくなるからです。
また、取引記録の更新作業や、新しい情報を追加する作業が複雑になるため、処理速度が遅くなる問題も出てきます。
データ量の増加による新規参入の障壁や処理速度の低下は課題である一方、技術の進歩によって徐々に解決しつつあります。
たとえば、ライトニングネットワークの導入によって、ビットコインの取引処理能力が大幅に向上し、手数料の削減と高速取引が可能になりました。
P2Pの抱える課題は着実に解決されており、より多くの人々が参加しやすい環境に進化しつつあります。
セキュリティリスクがある
P2Pは各コンピュータが直接データを交換するため、相手のセキュリティ体制に欠陥があると、セキュリティに影響を与えてしまうリスクがあります。
さらに、ウイルスが侵入した際に、感染源の特定が難しい点も問題です。近年、P2Pにおけるセキュリティ問題は、暗号化通信やブロックチェーン技術の活用で改善されつつあります。
P2P技術を利用する際は、セキュリティリスクもあらかじめ考慮しておきましょう。
記録されたデータを削除できない
ブロックチェーン技術における特徴の一つに、一度ブロックに記録されたデータは、削除や変更ができません。
データの透明性と信頼性を確保するうえでメリットである一方、誤った情報が記録された場合はデータを削除できない点がデメリットです。ブロックチェーン技術をシステムに組み込む場合は、住所や年齢などのプライバシー情報の取り扱いに注意が必要です。
ブロックチェーン上のデータは完全に削除できませんが、不要になったデータを無効化するための工夫も進められています。技術的な進歩により、ブロックチェーンのメリットを活かしつつ、プライバシー保護と柔軟性の向上が期待されています。
P2Pの活用事例
本章では、P2Pが実際に活用されている事例について以下の4つを紹介します。
- ビットコイン
- LINE
- ファイル共有ソフト
- ゲーム
ビットコイン
ビットコインは、P2Pを基盤としている仮想通貨の代表格です。
ビットコインは、P2Pを利用することでユーザー同士が直接取引できるため、送金手数料の削減や処理時間の短縮が実現しています。
また、ビットコインのブロックチェーンもP2Pで構築されており、各取引の記録が全参加者に共有されるため、データの改ざんが困難です。
ビットコインは、P2Pを利用して効率的かつ安全に運用される仮想通貨としての地位を築いています。
LINE
LINEでは、ユーザー間でやり取りされる写真や動画などのデータがP2P方式で直接共有できるため、無料※で利用可能です。
※有料サービスも存在
LINEでは、ユーザーアカウント情報を中央サーバーで管理しつつ、ユーザー間でやり取りされるメッセージの内容自体は暗号化しています。
LINEのサーバーでもメッセージを読み取れないため、プライバシーの確保を効果的に実現しているといえるでしょう。また、大規模なサーバーを設置する必要がなくなるため、運営コストの削減につながります。
ファイル共有ソフト
P2Pは、BitTorrentやMuleなどのファイル共有ソフトウェアで利用されています。
サーバーの経由が必要ないのはもちろん、場所を問わずにユーザー間でデータを送受信できるため、効率的かつ速いデータ転送が可能です。
しかし、過去には著作権で保護されたコンテンツの不正共有が問題となった事例があるため、違法データのやり取りをしないよう慎重に扱う必要があります。
ゲーム
マルチプレイヤーオンラインゲームにおいて、プレイヤー間の接続にP2Pが利用されます。
たとえば、任天堂はニンテンドーDSやWiiにP2Pを採用し、世界中のプレイヤーを簡単に接続させ、ゲームを楽しめるようにしました。
今後はクラウドゲーミングや仮想現実(VR)技術との組み合わせにより、リアルタイム性が求められるゲーム環境でのP2P活用が期待されています。
P2Pと仮想通貨の現状
本章では、P2Pと仮想通貨の現状を紹介するため、以下2つのニュースを紹介します。P2Pを取り巻く環境は日々進歩しているため、最新の動向をチェックするのに役立ててください。
- 金融庁が新ガイドラインでP2P送金停止を示唆している
- X(旧Twitter)がP2P決済サービスを検討している
金融庁が新ガイドラインでP2P送金停止を示唆している
金融庁の新ガイドラインによって、P2P送金に一定の制限を設ける可能性が示唆されました。不正送金と仮想通貨の関連が問題視されている現状を考慮した結果とされています。
ただし、全面的な禁止ではなく、不正送金対策として一定の制限を設けることが想定されています。
さらにガイドラインによると、仮想通貨取引のユーザー保護を強化し、投資の税制見直しも提案されている状況です。
P2P送金の規制強化は、仮想通貨市場のセキュリティ向上に貢献し、新たな送金ルートや手法を生み出す可能性があります。
X(旧Twitter)がP2P決済サービスを検討している
X(旧Twitter)は、2024年にP2P決済サービスの開始を検討していると発表しました。
P2P決済の取り組みはユーザーの利便性を高め、新しいビジネスチャンスを生み出す可能性があります。
2024年3月時点で、決済手段として仮想通貨の採用は確定していません。しかし、XのCEOであるイーロン・マスク氏が仮想通貨を支持していることから、業界では期待が高まっています。
P2P決済に仮想通貨が用いられると、市場が活性化し、ビットコインやイーサリアムなどの価格が上昇する可能性もあります。今後の動向に注目しましょう。
仮想通貨の基礎知識としてP2Pを理解しておこう
P2Pは、仮想通貨とブロックチェーンの基盤を作る重要な技術です。
仮想通貨に興味をもつ方や投資を考えている方は、仕組みを理解することで、仮想通貨の世界をより深く理解できるでしょう。
また、仮想通貨を取り巻く環境は、日々進歩しています。たとえば、X社がP2P決済に仮想通貨を導入すると、通貨の価値上昇が期待できます。仮想通貨投資をする方は、P2Pに関する最新動向をチェックしておきましょう。