PoW(プルーフ・オブ・ワーク)とは?仮想通貨との関係をわかりやすく解説
PoWとは「Proof of Work(プルーフ・オブ・ワーク)」の略で、仮想通貨アルゴリズムの一つです。
ビットコインをはじめとする仮想通貨が採用している仕組みで、取引の正当性を検証し、ブロックチェーンのセキュリティを維持する役割があります。
本記事では、PoWの仕組みやメリットとデメリット、PoS(Proof of Stack:プルーフ・オブ・ステイク)との違いについて詳しく解説します。
【この記事を読んでわかること】
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PoWの概要について詳しく知りたい方は、参考にしてください。
PoWはブロックチェーンを支える技術
PoW(プルーフ・オブ・ワーク)は、ブロックチェーンのセキュリティを維持するためのコンセンサスアルゴリズム※の一つです。ビットコインをはじめとする仮想通貨で採用されています。
※仮想通貨取引の承認システム
PoWでは、マイニングと呼ばれる作業でセキュリティが確保されています。マイニングは、複雑な計算問題を解くことで取引を承認、報酬を得られる仕組みです。
計算問題を解くには膨大な計算資源が必要であるため、ブロックチェーンの改ざんは困難だといわれています。
つまり、PoWはブロックチェーンの安全性と信頼性を高めるための仕組みといえます。仮想通貨の全体像について知りたい方は、以下の記事を確認してみてください。
https://bitbank.cc/knowledge/column/article/kyokasho-useful
PoWを用いたマイニングの手順
PoWを用いたマイニングの手順は以下のとおりです。各手順について詳しく見ていきましょう。
- ナンスを生成
- ハッシュ値の探索
- ノード検証によりブロック承認
1.ナンスを生成
ナンスは「ハッシュ値」と呼ばれる数値を探すために生成される数字です。
ブロックチェーン上で正しく取引を実施しているかの承認が目的のマイニングを進めるために、ナンスを生成します。
ハッシュ値は、任意のデータを不規則な文字列に変換する「ハッシュ関数」と呼ばれる関数から算出されます。ハッシュ関数は取引データとナンスから導き出される数値であり、適切なナンスを生成するために必要です。
2.ハッシュ値の探索
マイナー※がナンスを生成してハッシュ値を探索する理由は、定められた目標値以下のハッシュ値を見つけることで、マイニングが成功するからです。
※マイニングを行う団体や個人
そのため、マイナーはハッシュ値が目標値を下回るまで、ナンスを変更しながらハッシュ関数の計算を繰り返します。
目標となるハッシュ値は、ブロックが生成される間隔を一定の速度に保つため、ネットワーク全体の計算力に応じて調整されます。
3.ノード検証によりブロック承認
マイナーが目標値以下のハッシュ値を見つけると、ブロック※1が新たに生成されます。新しく生成されたブロックは、ネットワーク上のノード※2に共有されます。
※1:取引データをまとめた単位。一定期間に発生した複数の取引が含まれる。
※2:ブロックチェーンネットワークに参加しているコンピュータ。
各ノードは、受け取ったブロックにおける取引データの整合性やハッシュ値の正当性などを検証し、問題がなければブロックチェーンに追加します。
過半数のノードが新しいブロックを承認すると、ブロックチェーンに追加されます。
新たなブロックが生成されるとマイニングは完了です。適切なナンスとハッシュ値を見つけたマイナーに報酬が与えられます。
マイニングについて詳しく知りたい方は、以下の記事を参考にしてください。
https://bitbank.cc/knowledge/column/article/kyokasho-mining
PoWとPoSの違い
PoWとPoS(Proof of Stake )の違いは、以下のとおりです。本章では、各項目について詳しく解説します。
比較項目 | PoW | PoS |
特徴 | マイニングによって報酬を得る | 仮想通貨を多く保有するほど報酬が得られる |
消費電力 | 膨大な計算資源を必要とするため大きい | コインの保有量に応じて権利が与えられるため小さい |
セキュリティ | 51%攻撃※が困難であり、高いセキュリティを確保している | 大量のコインを保有する投資家が、ネットワークを支配する可能性がある |
ブロック生成速度 | 計算量の多さから生成間隔は比較的長い傾向にある | 計算資源を必要としないため、ブロックを高速で生成できる |
代表的な仮想通貨 | ビットコイン(BTC) ビットコインキャッシュ(BCH) ライトコイン(LTC) イーサリアムクラシック(ETC) モナコイン(MONA) | イーサリアム(ETH) カルダノ(ADA) ポルカドット(DOT) ソラナ(SOL) コスモス(ATOM) |
消費電力の大きさ
比較項目 | PoW | PoS |
消費電力 | 膨大な計算資源を必要とするため大きい | コインの保有量に応じて権利が与えられるため小さい |
PoWでは、マイニングに膨大な計算資源が必要となるため、多くの電力を消費します。一方、PoSではマイニングに計算資源を使用しないため、PoWと比較して消費電力を抑えられます。
PoSでは、保有しているコインに応じてブロック生成の権利が与えられるため、専用のマイニングマシンを必要としません。そのため、PoSはPoWと比べて環境に優しいアルゴリズムといえます。
セキュリティの高さ
比較項目 | PoW | PoS |
セキュリティ | 51%攻撃が非常に困難であり高いセキュリティを確保している | 大量のコインを保有する者がネットワークを支配する可能性がある |
PoWにおいてブロックチェーンの改ざんを行うためには、計算力の50%以上を負担する必要があります。
PoWの場合、マイナーが世界中に分散して存在し、それぞれが膨大な計算リソースを利用します。
そのため、ひとつの個人・団体が50%以上の計算資源を負担する「51%攻撃」と呼ばれる攻撃手法の実現が困難です。ブロックチェーンの改ざんが極めて難しく、セキュリティを高レベルで保っている点がPoWの強みです。
一方、PoSではコインの保有量に応じてブロック生成の権利が与えられるため、大量のコインを保有する投資家が、ネットワークを支配する可能性があります。
ただし、PoSでも以下のような対策が施されており、一定のセキュリティは確保されています。
懸念点 | 対策 |
富の集中による中央集権化 | ・コインの保有量に上限を設定 ・バリデータ(PoSネットワークの参加者)選出方法の工夫 |
ロングレンジ攻撃※1の可能性 | チェックポイント※2の導入 |
※1:ブロックチェーンに対する攻撃の一種
※2:特定のブロックを不可逆な基準点として、過去にさかのぼる改ざんを防ぐ仕組み
ブロック生成の速さ
比較項目 | PoW | PoS |
ブロック生成速度 | 計算量の多さから生成間隔は比較的長くなる傾向にある | 計算資源を必要としないため高速にブロックを生成できる |
PoWは、一定時間内にブロックが生成されるよう計算難易度を調整するため、PoSと比べるとブロック生成間隔は長い傾向にあります。
ビットコインの場合、計算量の多さから約10分に一つしかブロックが生成されません。一方で、PoSを採用しているイーサリアムは、ブロック生成速度が15秒と高速です。
ただし、 新しいブロックが生成された直後は他のノードに取引を承認される必要があるため、ブロック生成間隔の短さが、必ずしも取引の速さに直結しません。
PoWのメリット
PoWの原理を利用する仮想通貨には以下2つの特徴があります。各特徴について詳しく確認していきましょう。
- 取引記録の改ざんが困難である
- 信頼性が高い
取引記録の改ざんが困難である
PoWでは、新しいブロックを生成するために莫大な計算資源を消費するため、取引記録の改ざんがほぼ不可能とされています。
一度承認されたブロックを改ざんするには、すべてのブロックについて再計算が必要です。そのため、ブロックチェーン上の取引記録は事実上不可能であるため、改ざんが困難です。
PoWは仮想通貨における取引記録の信頼性を高め、不正を防ぐうえで重要な役割を果たしています。
信頼性が高い
PoWでは、取引記録の改ざんが困難であることから、ブロックチェーンに対する信頼性が高くなります。
ブロックチェーンに記録された取引は多数のノードで検証されるため、改ざんが難しく「信頼性の高い記録」として扱われます。
PoWによる信頼性の高さは、ビットコインをはじめとする仮想通貨の価値を支える重要な特徴です。
PoWのデメリット
PoWにはセキュリティや信頼性といったメリットがある一方、デメリットもあります。各デメリットについて詳しく解説します。
- 電力消費量が大きい
- 51%攻撃を受けるリスクがある
電力消費量が大きい
マイニングを行うマイナーは、高性能な専用マシンを使用し、常に高負荷な状態で稼働させるため莫大な電力を消費します。環境負荷の観点から、莫大な電力消費はPoWの課題といえます。
また、電力コストの高騰は、マイニングの収益性に直接影響を与えるため、マイナーにとっても課題です。PoWの電力消費量の大きさは、仮想通貨の普及を妨げる要因の一つといえます。
51%攻撃を受けるリスクがある
51%攻撃はPoWの仕組み上、非常に困難といわれているものの、決して不可能ではありません。
現状、51%攻撃には膨大な計算が必要であり、大規模な仮想通貨ネットワークでは実現がほぼ不可能といわれています。しかし、技術の発展によって、今後51%攻撃が実現される可能性はゼロではありません。
51%攻撃による損失を最小限に抑えるためにも、「PoWの仕組みを採用しているから安心」とはならない可能性があることを理解しておきましょう。
PoWと仮想通貨の注目ニュース
Powと仮想通貨は密接に関わっており、日々注目のニュースが配信されています。
本章では、PoWと仮想通貨に関するニュースを2つ紹介します。
- 2022年9月イーサリアムがPoWからPoSへ切替え
- Zcashが2024年第一四半期にPoWからPoSへ移行を計画中
2022年9月イーサリアムがPoWからPoSへ切替え
2022年9月、イーサリアムは「The Merge(マージ)」と呼ばれるアップグレードを実施し、コンセンサスアルゴリズムをPoWからPoSへと移行しました。
PoSへの移行により、イーサリアムのエネルギー消費量は99.95%削減されると試算されています。また、PoSではステーキング※による報酬が得られるため、イーサリアムの保有者にとってもメリットがあるといえます。
※仮想通貨を保有して報酬を得るシステム
イーサリアムにとって転換点であり、仮想通貨業界全体に影響を与えるイベントとなりました。
Zcashが2024年第一四半期にPoWからPoSへ移行を計画中
プライバシー保護に優れた仮想通貨「Zcash」が、PoWからPoSへの移行を計画しています。
PoSは、PoWと比較してエネルギー効率が高いため、Zcashネットワークのパフォーマンスを改善できると期待されています。
ただし、PoSはコイン保有量が多いほど有利になるシステムです。大口の保有者がネットワークの意思決定に大きな影響力をもつため、仮想通貨最大の長所である「ネットワークの分散性」の低下が懸念されています。
PoWに関するよくある質問
最後に、PoWについてよくある質問を2つ紹介します。
- ゲームのPoWと仮想通貨のPoWは違うのですか?
- PoWに将来性はありますか?
ゲームのPoWと仮想通貨のPoWは違うのですか?
仮想通貨とゲームにおけるPoWは、導入目的が異なります。
項目 | 目的 |
仮想通貨 | ・ネットワークのセキュリティ:不正な取引や二重支払いを防ぐ |
ゲーム | ・ゲームの公平性:すべてのプレイヤーに平等なプレイ体験を提供する |
ただし、両者ともにPoWを使用しているため、ブロックチェーンネットワークの基本的なセキュリティについては共通しています。
PoWに将来性はありますか?
PoWとPoSにはそれぞれメリット・デメリットが存在するため、将来どちらも活用されることが予想されます。
PoWは長年にわたり仮想通貨を支えてきた実績があり、セキュリティの高さや改ざんの難しさから、今後も重要な役割を果たし続ける可能性があります。
しかし、電力消費量の大きさや51%攻撃のリスクといった課題から、将来的にはイーサリアムのように、PoSへシフトする仮想通貨が登場することも予想されます。
仮想通貨の基礎知識としてPoWを理解しておこう
PoWはブロックチェーンを支える根幹技術であり、ビットコイン誕生から現在まで、仮想通貨の信頼性を担保しつづけています。
基礎知識としてPoWを知っておくと、仮想通貨関連のニュースに対する理解度が高まり、投資判断にも良い影響を及ぼします。
PoWの仕組みやPoSとの違いを把握して、仮想通貨取引に役立てましょう。