仮想通貨投資をするなら法律は知っておくべき!最新の改正や今後の動向を解説
暗号資産(仮想通貨)は法律上「財産的価値をもつデジタル資産の1種」であり、ドルや円などの法定通貨とは扱いが異なります。
市場が新しく、投資家保護の観点から法律改正がたびたび行われているため、投資をするなら最新の内容を理解しておきましょう。
本記事では、仮想通貨の法律に関する以下の項目を解説しています。
【この記事を読むとわかること】
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仮想通貨の法律について気になる方は、参考にしてください。
仮想通貨(暗号資産)は法律上「資産」として扱われる
仮想通貨は法律上「暗号資産」とされており、財産的価値をもつデジタル資産の一種です。
※以降は「暗号資産」と表記
日本円やアメリカドルなどの法定通貨とは税金としての扱いが異なり、暗号資産の価値は購入価格と時価との差額で決定します。
たとえば、100万円で購入した暗号資産を200万円で売却したとすると、200万円すべてが保有資産として扱われるのではなく、差額の100万円が課税対象です。
参考:国税庁「暗号資産等に関する税務上の取扱いについて(情報)」
また、現金化せずに暗号資産を商品やサービスの決済に利用した場合は、以下の計算式で課税対象となる所得金額を求められます。
所得金額=商品価額(ビットコインの譲渡価額)-1BTC 当たりの価額×支払った数量 参考:国税庁「暗号資産等に関する税務上の取扱いについて(情報)」 |
暗号資産は法律上取引や利用しても問題のない「資産」として定義されているため、売買や決済は法律上問題ありません。
暗号資産の詳しい内容につきましては、以下の記事も参考にしてください。
https://bitbank.cc/knowledge/column/article/kyokasho-useful
暗号資産の法律が改正された歴史
暗号資産は、知名度や取扱業者が増加するにつれて、ユーザー保護の観点から法律が改正されてきました。
暗号資産の法律改正の歴史を知ってしておくと、投資するうえで気をつけるべき点がわかるため、下表で確認しましょう。
改正年月 | 改正された法律 | 改正内容 |
2017年4月 | 資金決済法、犯収法 |
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2020年5月 | 資金決済法 金融商品取引法 金融商品販売法 |
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2022年5月 | 外為法 | 経済制裁の抜け穴として、暗号資産 が利用されることへの対応 |
2022年6月 | 資金決済法 | ステーブルコインに対しての規制 |
法律改正は、暗号資産に関する問題が起こったタイミングで、利用者を保護するために行われています。
資金決済法の改正で規制された8つの内容
資金決済法は、資金決済に関する利便性向上や利用者保護を目的としている法律で、暗号資産にも影響があります。
ここでは、資金決済法の改正により規制されている内容について以下8つを解説します。
- 暗号資産交換業者に登録制を導入
- カストディ業者に規制を適用
- 法令上の呼称を「仮想通貨」から「暗号資産」に変更
- 広告・勧誘規制を整備
- ICOの規制
- 交換業者の顧客資産に関する管理方法を規制
- 交換業者が取り扱う暗号資産を変更する際に事前届出が必要
- ステーブルコインの発行者と仲介者を規制
暗号資産交換業者に登録制を導入
2017年4月、資金決済法の改正により、暗号資産交換業者には登録制が導入され、暗号資産取引所の運営には金融庁の認可が必要になりました。
規制により、取引所口座開設時における本人確認を義務付けたほか、以下のような制度的枠組みを整備しています。
- 最低資本金(1,000万円以上)
- 顧客に対する情報提供
- 顧客財産と業者財産の分別管理
- システムの安全管理
参考:金融庁「暗号資産(仮想通貨)に関連する制度整備について」
暗号資産交換業者は消費者保護の観点から、資金決済法上の登録が必要になっています。
カストディ業者に規制を適用
資金決済法により、暗号資産の管理のみを行う業者(カストディ業者)についても規制が適用されました。
暗号資産におけるカストディ業者の例としては、ウォレットアプリやハードウォレットなどを取り扱う業者があげられます。
カストディ業者に規制された内容は、本人確認義務や顧客資金の分別管理義務などです。
暗号資産は、リスク回避の観点から購入した銘柄をウォレットに保管しているユーザーもいるため、各国が協調して規制に取り組んでいます。
法令上の呼称を「仮想通貨」から「暗号資産」に変更
資金決済法の改正で「仮想通貨」から「暗号資産」に、法律上の呼称が変更されました。
呼称が変更になった理由は以下のとおりです。
- 主要20ヶ国・地域(G20)首脳会議などの国際会議で「クリプトカレンシー(暗号資産)」と呼称されたため
- 仮想「通貨」という名称がユーザーの誤解(法定通貨と混同)を招いたため
暗号資産に呼称が変更された背景には、国際的にはクリプトカレンシーと呼ばれていたことや、ユーザーが暗号資産と法定通貨の役割を混同したことがあげられます。
広告・勧誘規制を整備
資金決済法の改正で、暗号資産交換業者による過剰な表現を用いた広告や勧誘にも規制が入りました。
規制により広告や勧誘には、たとえば以下の行為が禁止されています。
- 虚偽表示・誇大広告の禁止
- 投機を助長するような広告・勧誘の禁止
- 暗号資産の価格の動向を誤解させるような表示の禁止
- 利用者の判断に影響を及ぼす重要事項の不表示の禁止
規制以降は、暗号資産取引のリスクや取引条件が明確に表示されるようになり、過剰な広告や勧誘による消費者の誤解や不適切な投資が防止されました。
ICOの規制
ICO(Initial Coin Offering)は、詐欺や投資家保護の観点から、各国で規制が強化されています。
ICOは、暗号資産の新規プロジェクトが資金を調達するために使われる手段ですが、その匿名性と規制の不備を悪用した詐欺が多発したため規制対象になりました。
具体的な規制内容は以下のとおりです。
- トークン発行者による投資家への情報開示
- トークンの売買の仲介業者に対する販売・勧誘規制
- トークン発行者に対する登録制の導入
- トークンが有価証券に該当する場合、金融商品取引法の規制対象
規制によりICOでトークンを発行し、資金調達を行う場合、発行者や仲介業者は金融庁に認可を受ける必要があります。
交換業者の顧客資産に関する管理方法を規制
暗号資産交換業者は、顧客資産の保護と交換業者の信頼性を確保するため、資産管理に関する規制を受けています。
具体的な規制内容は、以下のとおりです。
- 顧客の暗号資産を信頼性の高い方法(コールドウォレット等)で管理することを義務付け
- ホットウォレットで管理する顧客の暗号資産については、別途、見合いの弁済原資(同種・同量の暗号資産)の保持を義務付け
- 暗号資産交換業者自身の暗号資産と顧客の暗号資産を明確に区分し、直ちに判別可能な状態で管理することを義務付け
- 顧客の暗号資産の95%以上を、信頼性の高い方法(コールドウォレット等)で管理することを義務付け
業務の遂行に必要な資金以外は、コールドウォレットによりオフラインでの資金管理が義務付けられました。
交換業者が取り扱う暗号資産を変更する際に事前届出が必要
暗号資産取引所が、取り扱う暗号資産を変更する場合も、事前に届出が必要になりました。
取扱銘柄に規制が入った背景としては、取引記録が公開されずマネーロンダリングに利用されやすい暗号資産銘柄が登場したためです。
違法性のある銘柄を取り扱ってしまうと、ユーザーの取引リスクが高まるため、事前届出を義務化して問題がないかチェックする仕組みをとっています。
ステーブルコインの発行者と仲介者を規制
価格を一定に保つ目的がある「ステーブルコイン」にも、信頼性を高めるため、発行者と仲介業者に規制が入りました。
法律上ステーブルコインには「デジタルマネー類似型」と「暗号資産型」の2種類があり、以下のように特徴と規制内容が異なります。
デジタルマネー類似型 | 暗号資産型 | |
特徴 | 法定通貨と連動する | アルゴリズムによって価格の安定を図る |
具体例 | USDT USDC | DAI sUSD |
規制(発行者) | 銀行・資金移動業者 | 規制なし |
規制(仲介業者) | 電子決済手段等取引業者 | 暗号資産交換業者 |
参考:金融庁「安定的かつ効率的な資金決済制度の構築を図るための資金決済に関する法律等の一部を改正する法律案 」
ステーブルコインは海外取引所で、法定通貨の代わりに基軸通貨として活用されているため、発行者の信頼性が重要です。
そのため、ステーブルコインの発行者や仲介業者に規制をかけて、ユーザー保護を図っています。
ステーブルの詳しい内容につきましては、以下の記事も参考にしてください。
https://bitbank.cc/knowledge/column/article/bitbankplus-column-stablecoin
金融商品取引法の改正で規制された3つの内容
金融商品取引法は、経済の健全な発展や投資家の保護を目的とした法律であり、暗号資産も規制対象です。
ここでは、金融商品取引法で規制された内容について以下3つを解説します。
- 暗号資産デリバティブ取引の規制
- STOに関する規制
- 風説の流布・相場操縦禁止
暗号資産デリバティブ取引の規制
金融商品取引法の改正により、暗号資産を原資とするデリバティブ取引も規制対象になりました。
暗号資産におけるデリバティブ取引とは、先物取引やオプション取引、差金決済取引(CFD)などのレバレッジを利用した取引のことです。
具体的な規制内容は以下のとおりです。
- 交換業者がデリバティブ取引を取り扱うときは、第一種金融商品取引業登録が必要
- レバレッジ倍率の「上限を2倍」に設定
暗号資産のデリバティブ取引は、ハイリスクな金融商品であるため、リスクを限定するためにレバレッジに上限をかけたり、取引業者も登録制にしたりするなどの規制をかけました。
暗号資産のレバレッジ取引につきましては、以下の記事も参考にしてください。
https://bitbank.cc/knowledge/column/article/bitbankplus-column-leverage-trading
STOに関する規制
STO(Security Token Offering)は、ICOと同じくトークンを活用した資金調達方法の一種であり、金融商品取引法で規制されています。
ICOは多くの場合、管理者が存在しないシステムを基盤としていますが、STOは法的に認められた信頼できる運営元がシステムを管理している資金調達方法です。
STOの規制内容には、投資家への情報開示や仲介業者の販売規制が含まれます。
さらに、STOは有価証券として扱われるため、発行者は有価証券届出書の提出や目論見書の作成など、従来の有価証券発行と同様の手続きが求められます。
風説の流布・相場操縦禁止
暗号資産取引には、不当な価格操作が行われていると指摘を受けているため、風説の流布・価格操作などの不公正な行為を禁止しています。
たとえば、不公正な行為には、取引する銘柄や取引所、時間を示し合わせて一斉に購入して価格を吊り上げる方法があります。
暗号資産に関して、風説の流布や相場操縦に関する法律は曖昧ですが、金融商品取引法の改正で禁止されているため注意しましょう。
仮想通貨でのインサイダー取引は法律で規制されていない
インサイダー取引の禁止などを記した日本の金融商品取引法では、有価証券(株式など)のみが対象となっており、暗号資産は明確に規制されていません。
インサイダー取引とは、市場における内部情報を利用して行われる取引で、とくにリーク情報を悪用して不正に利益を得る行為が該当します。
たとえば、とある暗号資産プロジェクトを運営する人物が、価格に影響するビッグニュースを発表する前に自分の保有枚数を増やし、ニュース発表後に価格が吊り上がったタイミングで売却する方法があります。
国内の取引では、明確に暗号資産のインサイダー取引を禁止していません。しかし「風説の流布・相場操縦禁止」にあたる可能性があるため、暗号資産のインサイダー取引は行わないようにしましょう。
【参考】海外における暗号資産の法律
暗号資産の規制に関しては、国によってスタンスが異なります。海外における暗号資産の法律規制は、以下のとおりです。
国/地域 | 主要な法律/規制 | 内容 |
アメリカ | ・証券法の適用 ・金融犯罪対策 ・税金 |
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欧州連合(EU) | Markets in Crypto-Assets(MiCA)規制 |
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中国 | 総合的な規制 |
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韓国 | 特定金融情報法 |
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シンガポール | 支払いサービス法(PSA) |
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アメリカや欧州、シンガポールは規制があるものの暗号資産には前向きなスタンスをとっている一方で、中国や韓国は、国内取引所の閉鎖や規制強化を行うなど慎重な姿勢を見せています。
暗号資産に関する法律の今後
暗号資産は、ユーザーを保護するため、法律の改正を進めています。
ここでは、暗号資産に関する法律の今後について以下3つを解説します。
- 法人保有の暗号資産に時価評価課税が適用される可能性
- 個人利益に分離課税が適用される可能性
- 各国の税務当局へ非居住者の暗号資産取引情報の提供を要請
法人保有の暗号資産に時価評価課税が適用される可能性
現在法人が保有している暗号資産は、含み益も課税対象です。しかし、個人と同じく利益確定時が課税対象になるよう、日本暗号資産ビジネス協会(JCBA)と日本暗号資産取引業協会(JVCEA)が法改正を要請しています。
自由民主党デジタル社会推進本部の議論により、暗号資産に対する規制や税制は問題点があると指摘されたためです。
法人保有の暗号資産に関する法改正が進んだ場合、大企業も参入しやすくなり、関わりの深いWeb3関連事業※の拡大にも期待できます。
※次世代のインターネットの形態であり、ブロックチェーン技術を用いてユーザー同士で透明性の高い取引が可能。
個人利益に分離課税が適用される可能性
現在、暗号資産取引による利益は雑所得として総合課税の対象であり、税率は所得額に応じて最大55%(住民税を含む)です。
しかし、「法人保有の暗号資産に時価評価課税が適用される可能性」と同様に、規制や税制に関しては審査基準や課税対象基準の強化が問題視されているため、分離課税が適用される可能性もあります。
分離課税になった場合、株式投資や国内FXと同じく、暗号資産取引の利益にかかる税率も「一律で20%」になると期待されています。
たとえば、暗号資産取引で1億円の利益を出したと仮定して、総合課税と分離課税で手元に残る金額がいくら違うのか下表で確認してみましょう。
課税金額 | 手元に残る金額 | |
総合課税 | 1億円×55%-479万6,000円(控除額)=約5,020万円 | 4,800万円 |
分離課税 | 1億円×20%=2,000万円 | 8,000万円 |
参考:国税庁「No.2260 所得税の税率」「No.1521 外国為替証拠金取引(FX)の課税関係」「暗号資産に関する税務上の取扱いについて(情報)」
法律が改正されて暗号資産にかかる税金が分離課税になった場合、手元に残る金額も大きくなるため、今後に期待しましょう。
暗号資産の税金につきましては、以下の記事も参考にしてください。
https://bitbank.cc/knowledge/column/article/bitbankplus-column-tax
各国の税務当局へ非居住者の暗号資産取引情報の提供を要請
OECD(経済協力開発機構)で暗号資産に関する議論があり、今後は、各国の税務当局へ非居住者の暗号資産取引情報の提供をする運びになりました。
日本人が海外の取引所で暗号資産取引をした場合、その情報を国内の税務当局に報告する仕組みです。
現在はルール策定の段階ですが、今後は各国が取引所の情報を提供し合い、暗号資産投資家を守る環境の整備が予想されます。
暗号資産は法律規制によって安全な取引が可能となっている
暗号資産は新しい市場であるため、法整備は追いついていない状況ですが、問題解決のため金融庁が中心となり都度規制をかけています。
現状は、レバレッジ倍率や交換業者の取扱銘柄にも規制がかかるなど、投資家にとって有利な環境とはいえません。
しかし、法律規制がないと詐欺目的の通貨や、リスクが高すぎるハイレバレッジ取引を提供される危険性もあります。
法律規制によって、安全な取引が可能になっている側面もあると理解しておきましょう。