仮想通貨取引のリスクにはどんな種類がある?過去事例や対策方法を紹介
仮想通貨には、元本割れやハッキング被害などのリスクが存在します。過去の事例や対策方法を知っておかないと大切な資金を失ってしまうかもしれません。
思わぬ損失から資産を守るためにも、仮想通貨取引に関するリスクを事前に把握しておきましょう。
本記事では、仮想通貨リスクについて以下の内容を解説しています。
【この記事を読むとわかること】
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仮想通貨取引のリスクや対策方法について気になる方は、ぜひ参考にしてください。
【結論】仮想通貨取引にはリスクが存在する
結論として、仮想通貨取引にはリスクが存在します。まずは過去に起こった仮想通貨に関する事件から見ていきましょう。
- コインチェック事件
- The Dao事件
- FTX破綻事件
コインチェック事件
2018年に国内仮想通貨取引所「コインチェック」にて、管理していた仮想通貨ネム(NEM)が全額ハッキングされ、約580億円の被害が発生しました。
ハッキングされた原因は「マルウェア感染(有害なプログラムのシステム侵入)」で、社員がメールリンクを開いたため起こりました。
コインチェック事件で問題になった点は、以下の3つです。
- ネムがホットウォレット(ネットにつないだまま)で管理されていた
- 送金時のセキュリティ認証が弱かった
- ウイルスに関する社内の認識が欠如していた
事件後コインチェックは、大手証券会社である「マネックスグループ株式会社」の子会社になりました
業界大手のノウハウを活かして、管理体制の大規模改善を実行したため、事件前と比べるとセキュリティが強化されています。
The Dao事件
The Dao事件は2016年に起こったハッキング事件で、被害総額は約360万イーサリアム(ETH)、事件当時のレート換算で約52億円でした。
TheDAOは、イーサリアムのプラットフォーム上に作られた分散型の投資システムです。投資家から集めた資金の投資先を投票で決定し、利益が発生した場合は投資者に還元します。
TheDAOはICO(Initial Coin Offering:新規の仮想通貨を発行して資金を調達する施策)で約150億円を資金調達しましたが、資金移動システムの脆弱性により、約52億円の資金が流出してしまいました。
The Dao事件は、「ハードウォーク(既存のブロックチェーンを利用して新しい種類を生成する技術)」と呼ばれるシステムによって解決します。
ハードウォークにより生み出されたイーサリアムクラシック(ETC)とイーサリアム(ETH)に分岐したことで、事件は収束に向かいました。
The Daoは仮想通貨の特徴でもある分散型金融を体現したシステムであったため、当時業界を震撼させました。
FTX破綻事件
FTX破綻事件は、2022年に起こった海外大手取引所が経営破綻した事件です。FTXは海外の大手仮想通貨取引所であり、サム・バンクマン・フリード氏が2019年に設立しました。
FTXが破綻した理由として、以下の3つが挙げられます。
- 財務状況が悪く自転車操業だった
- 顧客資金を投資資金として流用していた
- 預かり資金の管理体制がリークされ信用を失った
破産に追い打ちをかけるようにハッキング被害にも遭ってしまい、約900億円相当の仮想通貨が盗まれました。
FTXの日本法人である「FTXジャパン」の顧客資産は、管理体制が別々であったため、返還対象者には返金対応されました。一部対応が終了していないユーザーもいるため、返金問題は現在(2024年4月時点)続いています。
仮想通貨取引のリスクと対策法
仮想通貨取引には価格変動やハッキングリスクをはじめ、他の金融商品にはないリスクが存在します。
本章では、仮想通貨における以下7つのリスクと対策について解説します。
- 価格変動リスク
- 取引所のハッキングリスク
- コールドウォレットの破損リスク
- パスワード紛失リスク
- 流動性リスク
- 破綻リスク
- 法令・税制変更リスク
価格変動リスク
仮想通貨には価格変動のリスクがあるため、当然資産が減少するケースもあります。「元本割れ」とも呼ばれており、株式投資や投資信託などあらゆる金融商品に存在するリスクです。
仮想通貨投資は価格上昇で利益を出せるケースもあれば、下落で元本割れする可能性もあります。
損失リスクへの対策として、余剰資金や少額での取引がおすすめです。すでに用途の決まっている生活資金を投資に回すと、精神的に余裕のある取引ができなくなるからです。
仮想通貨への投資は、基本的に余裕資金内で実施しましょう。
取引所のハッキングリスク
過去の事例からもわかる通り、仮想通貨取引所はハッキングされる可能性があります。
取引所 | 時期 | 被害総額 |
マウントゴックス | 2014年 | 470億円 |
コインチェック | 2018年 | 580億円 |
ビットポイント | 2019年 | 35億円 |
FTX(海外) | 2022年 | 500億円 |
国内仮想通貨取引所「コインチェック」や海外大手取引所FTXでも、過去にハッキング被害に遭っています。
ハッキングはいつ起こるかわかりません。見えないリスクに備えるためにも以下の対策をおすすめします。
- コールドウォレット(インターネット上に存在しないウォレット)で資金管理する
- 国内取引所を利用する
- 取引所を複数使って資産を分散する
過去にハッキングがあった取引所は、基本的にセキュリティが見直されています。加えて国内取引所は、「暗号資産交換業者登録一覧」として金融庁から認可を受ける必要があります。
予期せぬハッキングリスクを防ぐためにも、あらかじめ対策しておきましょう。
コールドウォレットの破損リスク
仮想通貨のハッキング・セキュリティ対策に利用されるコールドウォレットには、破損リスクが存在します。
コールドウォレットは、USBメモリタイプに仮想通貨を送金して管理できるウォレットです。そのため、サイバー攻撃などインターネットを介した攻撃から資産を守れます。
しかし、コールドウォレット(USBメモリ)を何年も放置していると、寿命で電源がつかなくなったり、正常に動かなくなったりする可能性があります。
USBメモリのメーカー保証が切れた場合、保管していた仮想通貨が値上がりしていても売却できません。そのため、コールドウォレットは定期的に移動させましょう。
仮想通貨ウォレットの詳しい内容につきましては、以下の記事も参考にしてください。
https://bitbank.cc/knowledge/column/article/kyokasho-wallet
パスワード紛失リスク
仮想通貨への投資を進めていると、ある日取引所やウォレットのパスワードを紛失してしまう可能性があります。
マウントゴックス事件(マウントゴックス社がハッキングされた事件)にちなんで「セルフゴックス」とも呼ばれています。
たとえば、仮想通貨黎明期に購入したビットコインやイーサリアムの価値が数億円まで上がったとしましょう。パスワードを忘れると、当然1円も引き出せません。
仮想通貨は、他の金融商品と比べるとまだ歴史の浅い市場であり、パスワード忘れにより引き出せないケースがあります。
パスワードはメモ帳やノートなどに記載して、記憶に頼り過ぎない習慣をつけましょう。
流動性リスク
仮想通貨取引を進める際は、流動性(売買の活発度を表す指標)にも注意しましょう。仮想通貨は取引数量が高くなるほど、流動性が高くなります。
つまり、流動性が低いと売却したいときに手放せず、損失を抱えてしまう可能性が発生するわけです。
仮想通貨は銘柄ごとに人気が異なり、流動性(取引量)に差があります。
銘柄 | 取引量 |
---|---|
ビットコイン(BTC) | 約6兆6千億円 |
イーサリアム(ETH) | 約3兆3千億円 |
エイプコイン(APE) | 約90億円 |
ステラルーメン(XLM) | 約160億円 |
参考:CoinMarketCap「暗号資産時価総額上位100」
時価総額上位を比較しても、取引量に大きな差があるとわかります。
時価総額上位の場合、売却できない可能性はほとんどありません。しかし、流動性が低いと、悪いニュースが出た場合、売却したいタイミングでも売却できないリスクもあります。
流動性リスクを抑えたい方は、ビットコインやイーサリアムなど知名度が高く取引量の多い銘柄を選択しましょう。
破綻リスク
仮想通貨取引所は破綻するリスクがあり、最悪の場合、出金停止になり資金を取り出せない可能性があります。
たとえば、2022年に起こった海外の大手取引所「FTXトレーディング」の場合、FTXの財務状況が悪く、顧客の資金を投資に流用していた事実が明るみに出てしまい経営破綻しました。
実際、FTXに預け入れていた資金を出金できなかった投資家も存在します。大手取引所でも破綻する可能性はゼロではないため、以下の対策をできるだけ進めておきましょう。
対策 | 理由 |
---|---|
取引所口座を複数開設し資産分散する | 大手の仮想通貨取引所であっても破綻するリスクがある |
ウォレットを用意して資金を分散する | ウォレットに移動しておくと破綻リスクの影響がなくなる |
国内取引所を利用する | 金融庁の認可を得ているため、破綻リスクが少ない |
国内取引所は、海外と比較すると取り扱い銘柄数やサービスは少ないですが、金融庁の認可を得て運営しているため、安心して利用できます。
暗号資産交換業者は金融庁・財務局への登録が必要です。利用する際は登録を受けた事業者か金融庁・財務局のホームページで確認してください。 |
仮想通貨投資を進めたことのない方は、仮想通貨取引所の破綻リスクも視野に入れて、国内取引所で取引を始めましょう。
法令・税制変更リスク
仮想通貨は比較的新しい分野であるため、他の金融商品と比べて法整備が追いついていません。
法令や税制面が整うと、税負担やハッキングリスクの軽減が期待できます。ただ、現状は投資家保護の観点から、仮想通貨取引に対して規制が厳しい状態です。
- レバレッジ倍率の上限が低い
- 取り扱い銘柄に自由度がない
- 税率が高い
仮想通貨の今後につきましては、以下の記事も参考にしてください。
https://bitbank.cc/knowledge/column/article/cryptocurrency-future
仮想通貨取引の損失リスクを抑える3つの方法
仮想通貨取引において、発生する可能性が高いリスクは「価格変動リスク」です。
本章では、損失リスク(価格変動リスク)を抑える以下3つの方法を紹介します。
- 少額取引をする
- レバレッジ取引をしない
- 余剰資金で実施する
少額取引をする
仮想通貨投資を進めるときは少額から投資をすると、損失リスクを抑えられます。
少額から投資しておくと、予想とは違う値動きをして損失を抱えた場合でも冷静な対応をとれます。
一方で、一攫千金を狙って多額の資金を投じると、値動きが気になってしまい、損失が膨らんでも冷静な対応ができません。
bitbankの場合、最低取引数量は0.0001BTC(約500〜1,000円)で始められます。まずは、少額取引でリスクを抑えて取引に慣れましょう。
レバレッジ取引をしない
損失リスクを抑えるために、レバレッジ取引を控えるのも一つの手です。
レバレッジ取引は保有資金以上の金額で売買するため、効率よく資産を増やせる一方、以下のデメリットが存在します。
- 想定以上に損失が膨らむ
- 保有資金以上の金額を管理する難易度が高い
- 手数料が現物取引よりかかる
レバレッジ取引は損失リスクが大きい手法であるため、ルールや取引のコツを理解せずに始めるのは危険です。
レバレッジ取引を始めたい方は、まず通常の取引に慣れましょう。
余剰資金で実施する
仮想通貨取引は余剰資金で行い、生活資金を使わないよう心がけましょう。
仮想通貨は価格変動が大きいため、一攫千金が狙えるギャンブル的な投資(投機)をする方もいます。
仮想通貨バブルが起こった2017年には、余剰資金以上の金額を投資して借金を抱えてしまう投資家も出てきてしまいました。
仮想通貨は歴史も浅く、過去のデータも少ないため、短期的な値動きを予測するのは困難です。損失リスクを抑えるためにも、余剰資金かつ少額から取引を始めましょう。
仮想通貨のリスクに関するよくある質問
最後に、仮想通貨のリスクについてよくある質問を2つ紹介します。
- 仮想通貨の危険性は?怖いところは?
- 仮想通貨を放置するのはリスクが高い?
仮想通貨の危険性は?怖いところは?
仮想通貨の危険性は、株式投資や法定通貨など他の金融商品と比較して値動きが大きいところです。
たとえば、ドル円が1年で2倍になるケースになる可能性は低いですが、仮想通貨の場合は突然10倍になる可能性があります。
大きな利益を獲得できる一方で、多大な損失を発生させるリスクもあるため、投資する際は余裕資金で行いましょう。
仮想通貨を放置するのはリスクが高い?
仮想通貨の放置は取引所の破綻やハッキング、価格変動リスクがあるため、こまめに確認しましょう。
ただし、放置できる程度の金額で投資するのは有効な投資戦略です。取引所の破綻やハッキング、価格変動リスクを抑えたい方は、以下の項目を意識してみましょう。
- 取引所が正しく運営されているか
- 保管しているウォレットが安全に作動するか
- 少額・積立・長期保有を意識しているか
仮想通貨取引は国内取引所で始めるのがおすすめ
仮想通貨取引にはハッキングリスクや価格変動リスクがあり、損失を抱える可能性があります。
過去には仮想通貨取引所がハッキング被害で、多額の盗難にあった事例も存在します。仮想通貨取引を円滑に進めるためにも、あらかじめ各リスクに対しての対策を講じておきましょう。