マルチシグとは?ブロックチェーンとの関係や仕組みをわかりやすく解説!
マルチシグ(マルチシグネチャー)とは、複数の秘密鍵で取引を管理し、セキュリティを高める仕組みです。
多くの仮想通貨取引所で採用されているマルチシグの仕組みを理解しておくと、安心して資産を預けられるようになるでしょう。
本記事では、マルチシグの仕組みやメリット・デメリット、対応ウォレットについて解説します。
【この記事を読むとわかること】
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自分の資産をより安全に保護するためにも、ぜひ参考にしてください。
マルチシグ(マルチシグネチャー)とは?
マルチシグ(マルチシグネチャー)とは、複数の署名を用いて取引を管理し、仮想通貨のセキュリティを強化する技術です。仮想通貨を安全に管理・送金するためのシステムで、仮想通貨やブロックチェーンの技術と関連しています。
ここでは、マルチシグの詳細と仮想通貨やブロックチェーンとの関係性について解説します。
- 仮想通貨を安全に管理・送金するためのシステム
- マルチシグと仮想通貨やブロックチェーンとの関係性
仮想通貨を安全に管理・送金するためのシステム
マルチシグとは、複数の署名を用いて取引を管理し、仮想通貨のセキュリティを強化するシステムです。通常、ひとつの秘密鍵で取引が行われるのに対し、マルチシグでは複数の管理者による署名が必要です。
たとえば、企業が資産を管理する際に2つ以上の秘密鍵を設けておけば、単独での不正取引を防げます。
マルチシグは複数の署名によって、ハッキングや不正アクセスのリスクを大幅に減らし、仮想通貨の安全性が格段に向上します。
仮想通貨について詳しく知りたい場合は、以下の記事を参考にしてください。
https://bitbank.cc/knowledge/column/article/kyokasho-useful
マルチシグと仮想通貨やブロックチェーンとの関係性
マルチシグは、仮想通貨やブロックチェーンの技術と密接に関連しています。
ビットコインやイーサリアムなどの仮想通貨を取引する場合、承認手続きとして管理者の署名が必要であり、その際にマルチシグを利用する場合があります。
一般的にはひとつの秘密鍵で行われますが、マルチシグを利用すると取引の承認手続きに複数の署名が必要です。複数の署名によって、ブロックチェーンの透明性は確保され信頼性が高まります。
マルチシグは分散型のセキュリティ対策として機能し、仮想通貨の安全な管理と送金をサポートするシステムです。
マルチシグの仕組み
マルチシグは仮想通貨取引のセキュリティを強化する際に必要なシステムで、仕組みをまとめると以下のとおりです。
- 複数の電子署名によって安全性を高める
- 秘密鍵を分散管理して漏洩・紛失リスクを回避する
複数の電子署名によって安全性を高める
マルチシグは取引の承認に複数の電子署名を求め、仮想通貨の安全性を大幅に高めます。複数の署名が必要なため、ハッカーがすべての秘密鍵を手に入れるのは困難です。
たとえば、3つのうち2つの秘密鍵での署名が必要な場合、マルチシグは「2-of-3」または「2/3」と表現されます。もし秘密鍵が漏洩しても、もうひとつの鍵がない限り取引は完了しません。
マルチシグの仕組みによって誤送金や不正送金を防止し、結果として取引の透明性と信頼性が向上します。
秘密鍵を分散管理して漏洩・紛失リスクを回避する
マルチシグでは、秘密鍵を複数の場所で分散管理するため、漏洩や紛失のリスクを大幅に軽減できます。
通常、すべての資産がひとつの秘密鍵で管理されますが、マルチシグは複数の鍵が必要であるため、ひとつの鍵が漏洩してもすべての資産が危険にさらされる心配はありません。たとえば、2-of-3のマルチシグ設定では、3つのうち2つの秘密鍵での署名が必要です。
ひとつの鍵を紛失した場合、残りの2つの鍵で取引が完了するため、内部不正や外部からの攻撃から仮想通貨を守れます。
マルチシグのメリット
マルチシグは仮想通貨を安全に保管するためのシステムです。導入のメリットをまとめると以下のとおりです。
- 不正アクセスに対するセキュリティが強化される
- 秘密鍵の紛失リスクを軽減できる
- 誤って送金するリスクを低減できる
不正アクセスに対するセキュリティが強化される
マルチシグとは、複数の秘密鍵で署名し取引を承認する仕組みです。単一の秘密鍵は、一度鍵が盗まれるとすべての資産が危険にさらされますが、マルチシグであれば不正アクセスに対するセキュリティを大幅に強化できます。
しかし、マルチシグでは複数の鍵が必要なため、ひとつの鍵が漏洩しても不正な取引を防げます。悪意のある第三者が、秘密鍵を手に入れてハッキングする可能性が極めて低くなるため安全です。
もし企業同士が仮想通貨のやり取りをする場合、マルチシグを導入し、複数の承認者による署名が必要な仕組みにすることで、内部不正のリスクを低減できます。
全体的なセキュリティが強化されるため、企業や組織が取引時に仮想通貨を扱っている場合、マルチシグの導入が推奨されます。
秘密鍵の紛失リスクを軽減できる
マルチシグは複数の秘密鍵を管理する必要があるため、単一の鍵を紛失しても残りの鍵があれば資産へのアクセスが可能です。そのため、秘密鍵の紛失リスクを軽減できます。
たとえば、3-of-5の設定でのマルチシグは5つの鍵のうち3つ取引が承認されれば問題ないため、2つの鍵を紛失しても資産へのアクセスは可能です。
マルチシグにより資産の安全性が高まり、大切な資産を守れます。秘密鍵紛失以外の仮想通貨取引のリスクについては、以下の記事を参考にしてください。
https://bitbank.cc/knowledge/column/article/bitbankplus-column-trading-risk
誤って送金するリスクを低減できる
マルチシグでは、取引を実行する前に複数の署名が必要であるため、送金先や金額の入力ミスが減少し、誤送金のリスクを低減できます。
たとえば、金額の大きい取引では財務担当者と上司の両方が取引を確認し、署名しなくてはいけません。個人でも、重要な取引に対して複数のデバイスで確認を行えば、誤った送金をするリスクがなくなります。
もし仮想通貨を誤送金してしまうと、回収は極めて困難です。そのため、マルチシグは安全性を高める有効な手段として注目されています。
マルチシグのデメリット
セキュリティを強化するために利用されるマルチシグではありますが、デメリットも存在します。具体的なデメリットをまとめると、以下のとおりです。
- シングルシグより管理が複雑化する
- 設定に時間がかかる
- 手数料が発生する
シングルシグより管理が複雑化する
マルチシグは、複数の秘密鍵で署名を行うため、単一署名である「シングルシグ」より管理が複雑です。
複数の鍵を安全に保管して管理する必要があるため、セキュリティ対策を強化する一方で、管理の手間が増加する点はデメリットといえるでしょう。
たとえば、3-of-5のマルチシグ設定では5つの鍵のうち3つを安全に管理しなくてはいけません。
しかし、マルチシグを採用している仮想通貨取引所の場合、取引所で鍵を管理する場合が多いため、ユーザー側のデメリットが軽減されます。
設定に時間がかかる
マルチシグの設定は、シングルシグに比べて時間がかかります。複数の鍵を生成・設定する必要があるため、初期設定に時間がかかりがちです。
たとえば、2-of-3のマルチシグ設定を行う場合、3つの鍵を生成して異なる管理者に割りあてます。各鍵の管理方法や保管場所を決める必要があるため、初期設定の手間が増えてしまいます。
設定に時間はかかりますが、後々のセキュリティリスクを大幅に減少させられるため、「安全性」を確保するために必要な作業といえるでしょう。
手数料が発生する
マルチシグでは取引の承認に複数の署名が必要となるため、シングルシグより高い追加の手数料が発生します。
たとえば、ビットコインのマルチシグ取引では通常の取引手数料に加え、追加の手数料が必要です。発生する手数料は、取引の複雑さやネットワークの混雑状況によって異なります。
ただし、手数料が増加した分だけ署名の数が増えるため、取引のセキュリティが大幅に向上するメリットがあります。また、取引の頻度を減らせば、手数料の負担はかかりません。
そのため、手数料とセキュリティのバランスを考慮して、マルチシグの利用を検討しましょう。
マルチシグの活用事例
ビットコインやイーサリアムにはマルチシグが実装されており、マルチシグ対応のウォレットが広く利用されています。
国内仮想通貨取引所「bitbank」もマルチシグを採用しており、顧客資産の保護と安全性の確保を最優先課題としています。マルチシグを導入することで、ブロックチェーンネットワークに参加しているデバイスを分散させ、セキュリティ向上を可能にしました。
他にも、マルチシグを採用した取引所は存在し、顧客資産の保護に努めています。
マルチシグ対応のおすすめウォレット4選
仮想通貨を保管できるウォレットの種類によっては、マルチシグを採用している場合があります。マルチシグ対応のおすすめウォレットをまとめると、以下のとおりです。
- Gnosis Safe
- BitGo
- N Suite
- ラビーウォレット
Gnosis Safe
Gnosis Safeは、セキュリティと柔軟性に優れたスマートコントラクト※を基盤とした、マルチシグ対応のウォレットです。複数の署名が必要な設定により、不正アクセスを防ぎ、資産の安全性を確保します。
※ブロックチェーン技術を活用した自動契約システム
2-of-3や3-of-5の設定が可能で、イーサリアムエコシステムとの高い互換性をもち、分散型アプリケーションとの連携が可能です。ユーザーフレンドリーな仕様と豊富なカスタマイズオプションによって、初心者から上級者まで幅広いユーザー層に適しています。
公式サイト:https://safe.global/
BitGo
BitGoは、投資家向けに設計された高セキュリティのマルチシグウォレットで、大規模な資産を安全に保管するための機能が充実しています。
3-of-5のマルチシグ設定が利用でき、複数の署名が取引の承認に必要となり、不正アクセスを防止します。もしハッキングにあっても、最大2億5千万ドル(約390億円)の保険が適用されるため安心です。
API※の提供により、企業は自社のシステムとBitGoを簡単に統合し、効率的な資産管理も可能です。
※異なるソフトウェアをつなぐための仕組み
公式サイト:https://www.bitgo.com/
N Suite
N Suiteは、セキュリティと効率性を兼ね備えた企業向けのマルチシグウォレットです。
N Suiteがもつ最大の特徴は、秘密鍵を共有管理できる点です。企業内の複数のメンバーが鍵を保管できるため、不正アクセスのリスクを大幅に減少させます。
オンライン完結型で、NFT発行や仮想通貨の送金をスムーズに行えるため、Web3領域への参入障壁が低くなります。
公式サイト:https://www.nsuite.io/
ラビーウォレット
ラビーウォレットは、個人投資家向けのマルチシグ対応ウォレットで、高いセキュリティと使いやすさが特徴です。
ラビーウォレットはシンプルな画面で直感にて操作ができるため、初心者でも簡単に使用できます。
24時間対応のカスタマーサポートがあり、技術的な問題が発生した際、迅速に対応してくれる点も魅力です。
公式サイト:https://rabby.io/
マルチシグに関するよくある質問
最後に、マルチシグについてよくある質問を2つ紹介します。
- マルチシグとコールドウォレットの違いは?
- マルチシグとMetamaskの違いは?
マルチシグとコールドウォレットの違いは?
マルチシグとコールドウォレットの主な違いは、セキュリティ対策方法と使用方法です。
マルチシグは、取引の承認に複数の署名を用いてセキュリティを強化します。一方、コールドウォレットはインターネットから隔離されたデバイスに秘密鍵を保管し、ハッキングリスクを最小限に抑えます。
どちらも高いセキュリティを提供しますが、使用目的に応じて選ぶべきでしょう。頻繁に取引を行う場合はマルチシグが適しており、長期保管にはコールドウォレットが適しています。
ウォレットの作り方については、以下の記事を参考にしてください。
https://bitbank.cc/knowledge/column/article/bitbankplus-column-wallet
マルチシグとMetamaskの違いは?
マルチシグとMetamaskの違いは、主にセキュリティと機能性です。マルチシグは取引を承認するために複数の署名を必要とし、セキュリティを強化します。
一方、Metamaskはシングルシグウォレットであり、ひとつの秘密鍵で取引が承認されます。設定や管理はMetamaskの方が簡単ではありますが、セキュリティリスクが高まる可能性もあるため注意が必要です。
用途に応じて、どちらのウォレットを使用するかを検討しましょう。
マルチシグを理解して安全に資産を管理しよう
マルチシグとは、複数の署名を用いて取引を管理し、仮想通貨のセキュリティを強化する技術です。
マルチシグの活用によって、仮想通貨の管理と取引の安全性が大幅に向上し、不正アクセスや誤送金のリスクが低減されます。
管理が複雑で設定に時間はかかりますが、マルチシグを正しく理解して活用していけば、仮想通貨の安全な管理が実現可能です。
頻繁に仮想通貨の取引を行う場合、マルチシグを導入している仮想通貨取引所が推奨されます。