BTCドルはついにブレイクアウト 11月はいきなりボラタイルになるか?:11月のBTC相場
史上最高値に肉薄
10月のビットコイン(BTC)ドルは63,329ドルから取引が始まった。1日には、イランがイスラエルに対してミサイル攻撃を行ったことで、中東情勢の緊迫化を背景にBTCは60,000ドル割れを試す展開となるも、節目の水準で下げ渋ると、9月の米雇用統計の大幅上振れを受けて下げ幅を縮小した。
10月の第2週に入ると、米国の消費者物価指数(CPI)や卸売物価指数(PPI)といったインフレ指標の発表を控え、一時は60,000ドルを僅かに割り込む場面もあったが、前年比のインフレは両指標とも緩やかに低下し、底堅い推移が続いた。
一方、10月中盤に差し掛かると、予測市場のポリマーケットで米大統領選挙におけるトランプ氏の勝率が上昇。するとBTCも強含みに推移し、徐々に70,000ドルに接近していった。
21日、相場は69,409ドルまで上昇し上げ渋っていると、利益確定の売りが入り反落。ただ、70,000ドルトライ失敗への失望感から相場は一時65,000ドル近辺まで水準を下げるも、テスラの好決算を契機に米ハイテク株が上昇し、下値を支えられた。
その後もイスラエルによるイランへの報復攻撃や、テザー社が米司法省の調査を受けているとの報道で相場は上値を抑えられたが、イスラエルの攻撃が抑制的だったと後日判明したことや、テザー社が司法省調査を否定したことで相場は徐々に戻りを試すと、28日には米国市場でトランプトレードによって暗号資産(仮想通貨)マイニング株やマイクロストラテジーの株価が上昇し、BTCも連れ高で70,000ドルを試した。すると、翌29日のアジア時間に相場は70,000ドルの上抜けに成功。この日もナスダック総合の上昇が支援となり、史上最高値の73,742ドルに肉薄した。
ついにブレイクアウト、この先は?
BTCドルはついに今年3月から続いた下降チャネルからのブレイクアウトに成功した。尚、先月も指摘の通り、パターンフォーメーション的にブレイクアウト後の相場はチャネル形成直前の値幅と道東幅動きやすいとされ、セオリー通りの値動きとなれば11月中旬には90,000ドル手前までの上昇が見込まれる(第2図内白線)。更に、長期的に昨年末からの相場上昇幅を鑑みれば、来年の4月には大台の100,000ドルに到達する見通しだ(第2図内黄線)。
一方、11月は初旬から5日の米国大統領選挙、7日の米連邦公開市場委員会(FOMC)と2つの目玉材料が立て続けに待ち受けており、外部環境の見通しは一概に明るいとは言い切れない。
米大統領選に関しては、10月はトランプ氏が予測市場でのリードを伸ばし、BTC相場の支援材料になったと指摘される。ポリマーケットでは10月、8月にハリス氏が民主党の大統領候補に就任して以来で初めてトランプ氏の勝率が50%台後半に乗せると、月後半にかけてはおよそ3カ月ぶりに60%台に戻した(第3図)。
予測市場でのトランプ氏の勝率が上昇したことで、市場はトランプ氏の当選を織り込んでいるとも言えるが、依然として30%強はハリス氏の当選を予想しており、トランプ氏の勝利は100%織り込まれ切っているとは言えない。
しかし、選挙の行方は結果が出るまで安心できない。また、米国の大統領選では一般投票の後にそれぞれの選挙区を代表する選挙人団による投票があり、結果が出るまでにラグがある。実際、2020年のトランプ対バイデンでは、トランプ陣営による再集計の要望によって結果が明確になるまで1カ月半近くもの時間を要した。
予測市場での下馬評通り、集計の段階でもトランプ氏が優勢となれば、集計から選挙人団投票まで比較的スムーズに進み、BTCにとっては素直に追い風になるとみているが、ハリス氏が優勢となれば、先月も指摘の通りトランプ勝利期待の剥落がBTC相場の重石になると可能性に注意しておきたい。
また、投票日から二日後に最終日を迎えるFOMCも不透明感が強い。米連邦準備理事会(FRB)が9月に50ベーシスポイント(bp)の利下げを決定して以降、米国では底堅い消費や労働市場の強さを示す指標が出てきている。結果として、9月の大幅利下げを皮切りに米国の金融政策は速いペースでの利下げサイクルに突入したかと思われたが、経済見通しで示された年内残り50bpの利下げが実現されるか疑問が生じている。
実際のところ、9月の雇用統計では月間の非農業者雇用者数が+25.4万人と市場のコンセンサス(+14万人)を大きく上回ったが、前年比のCPIとPPIは緩やかに減速してはいる。しかし、11月のFOMC会合で25bpの利下げが決定されたとしても、その先の金利の道筋は依然としてデータに依存していると言え、FRBがハト派的な姿勢を弱める公算は2カ月前と比較して高くなっているだろう。
よって、11月のBTCは初旬からボラタイルな展開が見込まれる。米大統領選挙の投票日からFOMCまでは二日間あり、トランプ氏優勢で票の集計が始まればBTCは上値を伸ばし、ドル建てでの市場最高値更新が見えてくる。また、相場が史上最高値を更新すれば、テクニカルやボットによるトレンドフォローの買いが入りやすいと指摘され、相場上昇に拍車が掛かる可能性がある。
FOMCに関しては、市場は緩やかなペースでの利下げを織り込んでいることから、利下げペースを緩める旨の発言などはサプライズにならないだろう。ただ、利下げを一時停止させるような示唆があれば、BTC相場に下押し圧力を掛けるとみている。
プロは仕込みに走っている?
今月のBTC相場の方向感を左右する重要イベントが二つも待ち受けているが、ETFとデリバティブ市場では気になる動きが確認されている。
レポートでも取り上げた通り、シカゴマーカンタイル取引所(CME)のBTC先物建玉は15日に市場最高値を更新した(第5図)。近年では、投資家のポジションの偏りよりも建玉の増減の方が相場の方向感やトレンドのモメンタムの指標として機能していると言え、足元の建玉の増加は強気のサインと指摘される。また、米国の現物ビットコインETFでは資金のフローが9月から改善しており、10月29日には8.7億ドルと歴代で3番目に大きい額の順流入を記録しており(第6図)、機関投資家達は重要イベントを前にポジションを仕込んでいる。
外部環境的には不透明感が残る11月のBTCだが、こうした資金の流れから鑑みるに、プロはブレイクアウト後の相場上伸を見込んでいる模様だ。