BTCは週初の下げ幅を奪回 米景気は底堅いがインフレは大丈夫か?
10月30日〜9月6日のビットコイン(BTC)対円相場の週足終値は、前週比19,982円(0.21%)安の9,359,051円と、4週ぶりに下落したものの下げ幅は極めて限定的だった。
週明けに「石破ショック」や1日のイランによるイスラエルに対する大規模ミサイル攻撃を受けて、先週のBTC円は937万円から一時は865万円周辺まで下値を模索した。一方、ドル建てで節目の60,000ドル周辺となる同水準で下げ渋ると、週央からは底堅い推移に転じた。
4日には、9月の米雇用統計が大幅上振れとなり、米経済の景気への懸念が後退し、リスクオンムードが広がる中、BTC円は920万円を回復した。
6日未明には、米大統領選候補者のトランプ前大統領がペンシルベニア州で行った演説にイーロン・マスク氏も登壇。直接的な関係があったかは定かではないが、週末には予測史上のポリマーケットでトランプ氏の勝率がやや上昇し、BTC相場の下支えとなったか。今朝方から相場は小締まる展開となっており、始値から買い優勢で950万円に肉薄している。
4日の米雇用統計の発表まで60,000ドル周辺で方向感に欠ける展開が続いていたBTC相場だったが、9月の非農業部門雇用者数は25.4万人と市場予想の14万人を大幅に上回り、失業率も4.2%から4.1%に低下した。これにより米経済の底堅さが意識され、4日の米国市場ではリスクオンムードが広がった訳だが、FF金利先物市場ではFRBによる11月の大幅利下げ観測が消滅し、政策金利が据え置かれる可能性を2.1%織り込んだ。
BTCにとっては「景気のソフトランディング」と「利下げサイクル」が組み合わさることがベストなシナリオと言え、景気の底堅さからFRBが利下げを渋る状況に陥ることはあまり芳しくないと指摘される。FF金利先物市場では現状、97.9%の確率で11月に25ベーシスポイント(bp)の利下げが予想されている訳だが、今週は8日から多くのFRB高官の発言を控えており、彼らが利下げを急がない姿勢を示せば、市場の金利据え据え置き観測が強まるだろう。
また、今週10日未明にはFOMC議事要旨と、夜には米9月消費者物価指数(CPI)の発表も控えており、結果次第では米債利回りとドルの更なる上昇がBTC相場の上値を圧迫する可能性もあるだろう。
他方、テクニカルの側面では、BTCドルは再び下降チャネル(第2図内紫線)の上限を試す展開となっており、本日は既に200日線周辺で推移している。円建てでも一目均衡表で「強い買いシグナル」とされる三役好転を示現しており、需給の改善が示唆されている。
また、先週1日のイランによるイスラエルに対するミサイル攻撃を受けて、米国の現物ビットコインETFからはおよそ1カ月ぶりに2億ドルを超える資金の純流出が確認されたが、その後流出額は減少し、雇用統計の発表があった4日のETFのネットフローは純流入に転じた(第3図)。FRBの利下げ方針によってETFフローも影響を受けることは否定できないが、米経済の底堅さが資金流入のカギになっていると言えそうだ。
以上に鑑みて目先のBTC相場は底堅い推移が期待されるが、10日の米国時間序盤に発表される9月の米CPIを切っ掛けに方向感がでてくるとみている。上述の通り、本日の相場は取引開始から強含に推移しているが、ドル建てで200日線や下降チャネル上限が密集する63,500ドル〜65,200ドルエリア(≒942.5万円〜967.7万円)を突破するには相応に強い買い材料が必要と指摘され、米インフレの継続的な鈍化が確認されるまで、安心はできないだろう。
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bitbank Report 2024/10/07:BTCは週初の下げ幅を奪回 米景気は底堅いがインフレは大丈夫か?