BTC週足は大幅続落 Mt.Goxの弁済開始をどう見るか?
7月1日〜7月7日のビットコイン(BTC)対円相場の週足終値は、前週比1,119,763円(11.08%)安の8,982,457円と4週続落し、およそ4ヵ月半ぶりの安値となった。
ドイツ政府によるBTC売却の思惑と、Mt.GoxのBTC・BCH弁済が始まったことで、先週のBTCは下値を模索する展開を繰り広げ、5日東京時間にMt.Goxのコールドウォレットから4.7マンBTC(≒4111億円)の送金が確認されると、相場は900万円を割り込み、866.1万円まで下落した。
一方、5日欧州時間には売りの過熱感からBTCは反発を開始すると、6月の米雇用統計で失業率が4.0%→4.1%に上昇し、4・5月の月間民間部門雇用者数の増加が下方修正されたことで、労働市場の緩みが示唆され、900万円を回復、終値では東京時間の下げ幅の殆どを掻き消した。
週末のBTC相場も小確りとした推移が続き、7日には940万円台を回復したが、ドイツ政府が週末もBTCを送金し続けたことや、シカゴマーカンタイル取引所(CME)のBTC先物に窓を開けることを嫌気したからか、週末後半にかけて戻り売りが入り、終値では900万円の維持に失敗した。
5日にMt.Goxの弁済が正式に始まり、14.3万BTCの内、約32%となる4.7万BTCの送金が確認された。BTC相場の動きとしては、ある程度想定通り、弁済開始の正式発表後に「事実確定の買い戻し」が入り、それまで反応が薄かった米国の経済指標にも素直に反応した印象だった(先週は6月の米製造業・非生業業PMIが下振れたにも関わらず、相場は下落していたが、雇用統計には上昇で反応した)。依然として残りの約68%の弁済が残っている訳だが、今の所、市場は弁済の影響を過剰に警戒していた可能性が指摘される。
また、米国の景気の緩やかな減速とインフレの低下により、FF金利先物市場では米連邦準備理事会(FRB)による9月の利下げ着手の可能性が1週間前の57.9%に比べ70.8%まで織り込まれている。こうした早期利下げ期待を反映したからか、5日の米国の現物ビットコインETFには、相場の急落にも関わらず1.43億ドル(≒229億円)と日次平均の1.22億ドル(≒196億円)を上回る資金の純流入が確認された。市場では、Mt.Goxの弁済開始に伴い、ETFの需給悪化を懸念する声も散見されていたため、需要が維持されただけでもある意味ポジティブだろう。
しかし、週末後半の売りにより、BTCのドル建て相場は終値で高値レンジ下限を割り込み、保ち合い下抜けで下降トレンドの開始が示唆され、テクニカル的にはハッキリと「アク抜け」とは言い切れない状況だ(第2図)。日足では相対力指数(RSI)が「売られ過ぎ」の30%を下回る直前となっており、足元の下落がベアトラップになる可能性もあるが、相場が終値でレンジ下限を回復しない限り、安心はできないだろう。
オプション市場では、引き続き55,000ドル以下のオプションを積極的に物色する動きは確認されないが、7月12日限や19日限と言った期限の近い限月で48,000ドル〜55,000ドルのプットオプションの建玉がやや積み増しされている。依然として建玉のボリュームゾーンは60,000ドルストライク周辺に変わりはないが、先週5日のように「相場が短期間で下値を試し戻ってくる」と言った不安定な動きには引き続き警戒しておきたい(第3図)。
以上に鑑みるに、BTCはMt.Gox弁済開始発表後の買い戻しやFRBによる早期利下げ期待、さらにはETFへの需要維持がある一方、テクニカル的な不安感が払拭され切っておらず、ベースシナリオとしては、目先では揉み合いを想定する。相場は、短期的に55,000ドル(≒882.9万円)以下の下値を試す展開も視野に入るが、オプション市場の動向を考慮すると、50,000ドル台前半では買い戻しが入りやすいか。相場が高値レンジ下限の56,500ドル(≒907万円)を終値で回復すれば、テクニカル的なムードの改善も期待できるだろう。
また、BTC相場が米雇用統計に反応したことから、今週はパウエルFRB議長の議会証言や6月の米消費者物価指数(CPI)と卸売物価指数(PPI)も材料視されると指摘される。上述の通り、直近の米経済は景気の緩やかな減速とインフレの低下が示されており、FRBによる早期利下げのヒントが掴めれば、BTC相場には支援材料となろう。
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bitbank Report 2024/07/08:BTC週足は大幅続落 Mt.Goxの弁済開始をどう見るか?