BTCは急落から戻りを試す展開 米仏内政の不透明感に注意
6月24日〜6月30日のビットコイン(BTC)対円相場の週足終値は、前週比26,846円(0.27%)安の10,102,220円と、終値ベースではほぼ変わらずだった。
先週はMt.Goxの管財人事務所が7月からの弁済開始を発表し、BTC円は週明けから1000万円を割り込み、下値を模索する展開を演じたが、その後は反動高で戻りを試した。しかし、心理的節目で、ドル建てで6.2万ドル周辺の水準となる1000万円で相場は上値を抑えられ、週央は揉み合いに転じた。
28日には、米連邦準備理事会(FRB)がインフレ指標として注目する5月の米個人消費支出(PCE)価格指数が発表され、結果は市場予想通り+2.7%から+2.6%と伸びが鈍化したが、①30日のフランス総選挙1日目を控えた政局不安による欧米国債利回りの上昇、②米大統領選の第一回テレビ討論会でトランプ前大統領が優勢となったからか、財政支出拡大懸念で米国債相場が下落(利回りは上昇)、③米債利回りの上昇を受けた米株の反落などがBTC相場の重石となり、BTCは上値追いに失敗し反落した。
しかし、相場は60,000ドル水準(≒965.3万円)周辺で下げ止まると、週末には28日の下げ幅を縮小。直接の関係があるか定かではないが、米国の予想市場でバイデン大統領が大統領選を離脱する可能性が上昇した他、仏総選挙の即日開票で極右政党の国民連合(RN)が首位に立ったことが報道されると、相場は1000万円を回復した。
今週のBTC相場は引き続き戻りを試す余地があると見ているが、上値余地は限定的か。Mt.Gox弁済開始や、米独政府によるBTCの送金と、大口によるBTC売却の思惑が浮上する中、相場はドル建てで2度60,000ドル割れを試すも下抜けに失敗、底堅い値動きとなっている。
ただ、米大統領選やフランスの総選挙を巡っては不透明感が強く、一概にBTC相場にとって好環境とも言えない状況だ。
東京時間28日に開催された米大統領選の第一回テレビ討論会では、バイデン大統領の活力に欠けるパフォーマンスが話題となり、討論会を主催したCNNの視聴者アンケートでは、67%がトランプ前大統領の勝利と答えた。今年の大統領選に向けてトランプ氏は暗号資産(仮想通貨)業界への支持を強めており、業界とってはトランプ氏の優勢が歓迎されるものの、法人税の大幅引き下げなどに伴う財政支出の拡大、ひいてはインフレの再燃などが懸念されており、伝統的金融市場では大統領選の行方を警戒する動きがある。
翻って、フランスの総選挙では、極右政権の誕生という政治的リスクが台頭し、週末のBTC相場を押し上げたようにも見えるが、欧州域内で仏国債のリスクプレミアムが上昇している点が気掛かりだ。BTCは地政学的なリスクや国の財政危機に強い一面も確かに持ち合わせているが、金融市場が不安定化しショックを起こせば、ボラティリティの高さから売られやすいのも事実だ。市場からは仏国債相場急落(利回りは急騰)によるショックを懸念する声も散見され、7日に行われる2回目の投票まで気が抜けない状況と言えよう。
他方、FRBの金融政策を左右する米国のインフレを巡っては、5月分のデータが出揃い、いずれも緩慢ながら鈍化傾向を示した(第2図)。こうした中、今週は全米供給管理協会(ISM)の製造業・非製造業の購買担当者景気指数(PMI)と一連の雇用関連指標の発表、さらにはパウエルFRB議長発言とFOMC議事要旨の公開も控えており、材料が目白押しとなっている。
経済指標の面では、インフレや消費の減速傾向が示されており、引き続きBTCにとってはネガティブサプライズが出る公算は低いと指摘されるが、タカ派的だった6月FOMCの議事要旨には注意したい。
さて、本日のBTCドルは既に63,000ドル台(≒1022万円)後半まで戻しているが、64,000ドル台前半(≒1030万円)には、一目均衡表の雲下限(64,663ドル≒1041万円)、5月1日安値〜同21日高値を基点とするレンジの半値押し64,250ドル(≒1034万円)、ボリンジャーバンドのセンターライン(64,126ドル≒1032万円)といったチャートポイントが密集している。米経済指標の結果次第では、上値を試す展開も視野に入るが、米仏の政治的不透明感を鑑みれば、積極的な買いが入りづらい状況と言え、目先では64,000ドル台前半のエリアが相場のレジスタンスとなろう。仮に相場が同エリアの上抜けに成功しても、次の上値目途は節目の65,000ドル(≒1046万円)や一目均衡表の基準線が推移する65,300ドル(≒1051万円)となりそうだ。
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bitbank Report 2024/07/01:BTCは急落から戻りを試す展開 米仏内政の不透明感に注意