BTCは下降チャネルで揉み合い ツイストスティープニングで追い風か?:7月のBTC相場

5月から失速も底堅く
6月のビットコイン(BTC)ドルは10万4628ドルで取引を開始し、月初は6日の5月米雇用統計を控え同意に欠ける展開となった。一方、5日には「トランプ減税法案」による財政悪化や電気自動車(EV)助成金停止を巡り、テスラ(TSLA)のイーロン・マスクCEOとトランプ大統領がSNS上で批判の応酬を繰り広げると、TSLA株を筆頭に米ハイテク株が急落。BTCも巻き添えを喰らう格好で連れ安を演じ、10万ドル割れ目前まで下落した。
しかし、翌6日の東京時間には買い戻しが入り反発すると、米雇用統計の上振れを受けた米国株相場の反発に連れて10万5000ドル台に戻した。また、6日にNY証券取引所に上場したサークルが9日、時間外取引で急騰したことで、BTCは11万ドルにタッチした。
ところが、9日以降は中東情勢を巡る懸念が連日ヘッドライン化し、現物フローは限定され、イスラエルとイランが一触即発となる中、12日には10万5000ドル台まで下落。翌13日東京時間にイスラエルがイランの核施設を攻撃すると、10万3000ドル近辺まで押した。その後は買い戻しが入り、事態収束への楽観ムードから一時は10万9000ドルまで戻すも、17日にはトランプ大統領がテヘランからの避難を呼びかける発言をしたことで、米軍事介入のテールリスクが意識され反落。その週末にも相場は軟化し続け、22日には米軍がイランの核施設3箇所を攻撃。これに対してイラン議会がホルムズ海峡の封鎖を承認したことで、政界経済の減速や中東情勢のエスカレーションが嫌気され、BTCは一時9万8000ドル近辺まで急落を演じた。
一方、ホルムズ海峡封鎖が有効的な対米報復措置にはならないとの見方もあり、BTCは急落後に買い戻しが入った。他方、週明け23日にイランが事前通告の上でカタールの米軍基地に攻撃したが、被害は皆無に終わると、各当事国がカードを切ったことで停戦合意期待が浮上。この日の米国時間にはトランプ大統領からイスラエルとイランの停戦合意が発表され、相場は10万ドル台中盤に戻した。
停戦発効直後は両国間で違反があったとの報道もあったが、事態はエスカレートしなかった。また、パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長が、当局者の過半数が年内利下げを支持していると発言したこともあり、BTCは強含みに推移。29日には米減税法案が上院採決に進んだことを好感し、10万9000ドルに肉薄したが、早期成立は困難という見方もあり、その後は頭打ちとなって10万7198ドルで6月の取引を終えた。

確り値固めもリテール不在
中東情勢悪化による地政学的リスクに米国の軍事介入と、連日のリスクイベントで短期ではイベントドリブンで神経質な値動きとなったBTCドルだったが、1ヵ月を通して概ね10万ドル台での値固めの様相を呈し、月足終値は初めて10万ドル台後半の乗せ底堅さを印象付けた。
こうした中、機関投資家によるETF経由の資金フローは6月も堅調となり、月次では45.8億ドルの純流入を記録(第2図)。また、先月は20営業日中でアウトフローがあったのはたったの3日営業日のみとなっており、地政学的なリスクが意識される中でも機関投資家層はBTCのエクスポージャーを増やしていたと言える。

こうして底堅く推移したBTCだが、5月に引き続きブロックチェーン上の長期筋と短期筋の割合は上昇し、リテール層の流入が乏しいことが示唆されている(第3図)。
税制の優位性からリテールマネーがビットコイン財務戦略企業に流れているとの見方もあるが、本邦での暗号資産(仮想通貨)の取引はグローバルで見れば数パーセント程度であることに鑑みると、ビットコイン財務戦略企業以外にも資金の受け皿となっているアセットがありそうだ。
ただ、そもそもの背景としてはBTC相場のボラティリティ低下、即ち仮想通貨特有の高いアルファというエッジが薄れてきたことがグローバルに影響していると指摘され、BTC相場が高値を連日更新するような局面となれば、自ずとアルファを狙ったトレードが盛んになり、リテールマネーの回帰が起きるとみている。よって、「本格的な強気相場はこれから」という見通しに変わりはない。

7月の見通し:いよいよブレイクアウトか?
では、「BTC相場が高値を連日更新するような局面」がこの先くるかが問題となる訳だが、足元では、BTC相場では見慣れた下降チャネルのパターンが形成されている(第4図)。昨年も3月から10月にかけて長期的な下降チャネルが形成され、相場は上方向にブレイクアウトした。
ただ、今回の下降チャネルは昨年ほど長期化しない可能性が指摘される。7月1日には米議会上院がトランプ減税法案を可決させ、残りは下院審議のみと成立が近づいている。下院審議が難航するとの見方もあり、当初共和党が目指していた独立記念日までの成立は揺らいでいるものの、7月中の法案成立は濃厚と言え、米連邦政府の財政悪化懸念からバックエンドの利回りは上昇しやすいと言えよう。
他方、6月は複数のFRB当局者から7月の利下げを支持する声が上がっており、パウエル議長もそれが時期尚早とは言い切れないというスタンスを示した。勿論、利下げの有無はデータ次第ではあるが、7月の米連邦公開市場委員会(FOMC)に向けて利下げ期待が強まれば、フロントエンドの利回りは低下しやすいと言えよう。
つまり、FRBのタカ派シフト期待と財政赤字拡大懸念によって、7月は米国債利回りのフロントエンドの低下とバックエンドの上昇が見込まれ、カーブツイストによる利回り曲線のスティープ化が起こる可能性がある訳だ。
BTCにとっては長年相場の支援材料として意識されてきた金融緩和に加え、長期国債からの逃避マネー流入が期待されると指摘され、7月中の下降チャネルからのブレイクアウトは十分にあり得るとみている。仮にブレイクアウトに成功すれば、相場が走る可能性が指摘され、12万ドル台に乗せる展開が視野に入る。

