BTCは史上最高値更新から調整 3月の下落をどう読む?:4月のBTC相場
ETFフローに支えられ史上最高値更新
3月のビットコイン(BTC)対ドルの月足は7連騰を記録し、初めて70,000ドル台に乗せた。相場は2月28日の時点で昨年第四・四半期の米GDP成長率の下方修正を受けて60,000ドルに乗せると、3月4日にはブラックロックのビットコインETF(IBIT)の商いが活況となったことや、コインベース(COIN)の株価上昇に連れて65,000ドルを突破。翌5日にはそれまでの史上最高値となる69,000ドルにタッチし急反落を演じたが、米国の現物ビットコインETFへの資金流入が好調さを維持したことで6日から徐々に戻りを試すと、10日には終値で史上最高値を更新、翌11日には70,000ドル台に乗せた。
一方、相場は13日、前日のETFのネットフローが初めて10億ドルを超える純流入を記録し74,000ドルに肉薄したが、翌日からはETFへの資金流入が急減したことで失速。18日にはおよそ2週間ぶりにネットフローが純流出に転じたことで、相場は19日に65,000ドルを割り込んだ。
しかし、19日〜20日に米連邦準備理事会(FRB)が開催した連邦公開市場委員会(FOMC)では、政策金利の誘導目標レンジが据え置かれたと一方で、タカ派にシフトすると予想されていた年内の利下げ回数想定が3回に維持されたことで、BTCドルは急反発を演じ65,000ドルを回復。その後は70,000ドルまで戻せず失速するも、グレイスケールのETF(GBTC)からの資金流出ペースがピークアウトしたことや、コインベースの株価上昇を好感し、25日には70,000ドルにタッチした。
月末にかけては、デリビットのBTCオプションカットに向けて上値を重くする場面もあったが、4月3日に半減期を迎えるビットコインキャッシュ(BCH)の相場が強含み、BTCも連れ高で底堅く推移した。
相場はディストリビューション局面へ
BTCドルは3月14日に付けた史上最高値73,742ドルから20日までの7日間でおよそ-17%の下落を記録した。また、相場が史上最高値を付けるとほぼ同時にETFへの資金フローも急減し、ETFへの需要で支えられてきた今年のBTC相場は腰が折れる格好となった。
尤も、これまでBTC相場の長期的な上昇局面では、-17%の値幅調整は何も驚くほどのことではないと言える。重要なのは、2月からの相場上昇がこれから「長期的な上昇局面」に発展する余地が残されているかということだ。
ここで参考になるのがビットコインの需給構造を表すオンチェーンデータだ。以前にも指摘の通り、BTC相場が長期且つ本格的な上昇局面に入った際は、BTCの持ち手が長期保有者(LTH)から短期保有者(STH)に移り変わる。つまり、新規の需要が増加し、長期保有者から短期保有者へBTCがディストリビューション(分配)されることで、相場が押し上げられる仕組みだ。
昨年はBTC相場が上昇したにも関わらず、ブロックチェーン上では新規の需要を示すBTCのSTHアドレス数増加が低下していた。しかし、今年の2月に入るとSTHは相場の上昇と共に上昇し始め、その件数は230万件から330万件まで上昇した。よって、需給構造の側面では、足元の相場はこれまでのマーケットサイクルで確認された「長期的な上昇局面」、即ちディストリビューション局面に入ったと言える。
また、半減期を迎える前にBTC相場が急速に上昇したことで、市場では相場トレンドの持続性に懸念を示す声も散見されるが、これまでのディストリビューション局面ではSTHアドレス数が500万〜600万件まで上昇してきたことを考慮すると、需要サイドの余力は残されていると指摘される。
4度目の半減期へ
さて、4月20日前後には遂にビットコインの4度目の半減期が迫っている。第2図からもわかる通り、BTCの相場は半減期に向けた織り込みで相場が上昇しやすいが、半減期通過後のには相場が方向感を失なったり、調整したりしてきている。ただ、今回の半減期では現物ビットコインETFというこれまでになかった変数があり、3月の月次レポートでも指摘の通り、その需要を甘く見てはいけないか。
上述の通り、3月のETFへのフローは12日の10.5億ドルをピークに急低下し、18日〜22日にかけてはネットフローが5営業日連続で純流出となり、相場に下押し圧力を掛けた。フローにブレーキが掛かった大きな理由としては、流入トップ2のIBITとFBTCへのフローが急減したことと、GBTCからの資金流出が急増したことと言える。しかし、BTC相場の過熱感が後退し、6万ドル台前半で底打ちとなると、トップ2への資金流入は徐々に回復し、GBTCからの資金流出ペースも落ち着き始め、25日から3月の最終営業日となった29日まで日次フローは資金の純流入を維持した(第3図)。
IBITとFBTCへの資金流入が急減したそもそもの背景を単純にBTC相場の過熱感とは断定できないが、3月には金(ゴールド)ETFへの資金流入が復調し始めたことに鑑みるに、過熱感を帯びていつ大幅に調整してもおかしくないBTCよりかは、ボラティリティが比較的安定している金の方に資金が集まった格好か。
また、GBTCからの資金流出に関しては、破綻した暗号資産(仮想通貨)融資企業ジェネシスが、2月に米裁判所から承認を受けたGBTC売却計画を実行に移した可能性が濃厚となっているが、後にオンチェーン上のアクティビティでジェネシスがGBTCの売却で得た利益で現物のBTCを購入している可能性が浮上。さらに、資金流出がピークとなった3月18日から現在までにGBTCからは30億ドルを超える資金が流出している訳だが、ジェネシスの売却計画では3500万口のGBTC、ドル建てにして約13億ドルとなっており、同社によるGBTC売りの大半は既に完了している可能性もある。
以上に鑑みると、GBTCからの資金流出はそれほど気にする必要はないと言える上、流出のペースも落ち着く運びだと言えよう。また、BTC相場の過熱感は後退しており、ETFへの資金フローも安定するだろうと見ている。ただでさえマイニングで産出されるBTCの発行量を超えるペースでETFがBTCの保有量を増やしており、4月の半減期以降も相場を押し上げる材料となる可能性があるだろう。
4月の見通し
4月のBTCドルのメインシナリオは、高値揉み合いからのブレイクアウトを想定している。目先では史上最高値近辺の74,000ドルが相場のレジスタンスとなりそうだが、半減期に向けて同水準の上抜けが視野に入る。4月の想定レンジの上限としては、90,000ドルを見ているが、BTCドルの長期足で過熱感が残る点も考慮して、メインシナリオとしては80,000ドルを上限と見据える。
仮にETFへの資金フローが想定通りに回復しなかったとしても、BTCドルの下値は限定されると見ている。3月のFOMC経済見通しでは、年内の利下げ回数見通しが12月の3回から維持され、米国債利回りには頭打ち感が出てきた。勿論、FRBによる利下げ開始のタイミングは依然として不明瞭ではあり、ここから金利が順調に低下していくイメージも持ち難いが、反対に上昇し続けていくことも想定し難い。よって、マクロ的な相場の下押し圧力も限定されよう。
BTCのオプション市場では、60,000ドル、65,000ドル、そして70,000ドルに建玉が集中しており、相場は60,000ドル台では引き続き底堅さを発揮するだろう。最悪の場合でも、週足でボリンジャーバンドのセンターラインや一目均衡表の基準線が推移する50,000ドル近辺は最終防衛ラインとして機能すると見ている。