ビットコインを保有している企業傾向、ビットコイン価格にどう影響を与えている?
ビットコインを保有している企業ってどんな企業?
ビットコインは誕生から10年以上が経過し、値動きも以前よりは安定してきていることから企業が購入するケースが増えています。投資目的や事業に関連して保有しているケースなど様々な理由で企業がビットコインを購入しています。
今回はどのような企業がビットコインを保有しているのかを調査していきます。またビットコインの価格や企業の株価にどのような効果をもたらしているのかも見ていきましょう。
上記はCoingeko.comが提供しているビットコインを保有している企業ランキングです。こちらの企業はいずれも上場している企業となっています。
2023年時点でビットコインを最も保有している企業は、SNSでも有名となっているマイケル・セイラー氏がCEOを務めるMicroStrategyです。MaicroStrategyは12.9万BTCを保有しています。ビットコインの総供給量に対して0.6%ほどを1社で保有しています。MicroStrategyはデータ分析ソフトウェアの提供を行う企業ですが、2021年の冬ごろからビットコインを購入し始め話題を呼びました。
ランキング2位となった企業はMarathon Digital Holdingsでビットコインのマイニングを行っている企業です。こちらの企業のビットコイン保有は約1万BTCとなっており、かなり多くのビットコインを保有しています。アメリカを中心にマイニングを行っており、ナスダックに上場しています。Marathon Digital Holdingsは事業としてマイニングを行っているため、多くのビットコインを保有しています。
上記のランキングには入っていませんが、電気自動車を販売するTeslaも多くのビットコインを保有していると言われています。2月時点のコインデスクの記事によると1.84億ドル相当のデジタル資産がバランスシートに記載されており、1万BTC近いビットコインを保有していると考えられます。Teslaは正確な保有数を公表していないためランキング外となっています。TeslaのCEOであるイーロンマスク氏は暗号資産にかなり興味を持っており、ドージコインなどに関しても度々SNSを通じて言及しています。
次にランキングした企業は、アメリカの老舗暗号資産取引であるCoinbaseです。Coinbaseは2012年に創業し、2021年にナスダックへ上場しパブリック企業となりました。Coinbaseは9000BTCを保有していることがわかっており、テスラを入れると4番目にビットコインの保有が多い企業となっています。Coinbaseは取引所を運営しているため、事業に関連して多くのビットコインを保有しています。
Square inc.(現Block)はモバイル決済サービスを提供する企業ですが、ビットコイン関連の事業も多数行っており、Twitterの創業者でもあるジャック・ドーシー氏によって設立されました。Blockもナスダックに上場しており、約8000BTCを保有していることが報告されています。ビットコインのウォレットもサービスとして提供しており、Cash Appと呼ばれるプラットフォームからBTCの購入や送金を直接行うことができます。
以上がCoingekoに掲載されているビットコインの保有数トップ4にテスラを加えた企業一覧になります。業種別で見るとメイン事業がビットコインや暗号資産にフォーカスした企業が2社で、IT企業が2社、自動車製造が1社となりました。ビットコインに関連したサービスを提供する企業が上位にランクインしていることがわかります。SquareやTeslaはビットコインを活用したサービスの開発も行っており、ビットコインに関連した事業を行っている企業がビットコインを保有している傾向があります。逆にビットコインを純粋な資産として保有する企業はまだ多くないとも言えます。
企業の損益率
続いてビットコインを保有している企業の損益を見ていきましょう。保有数が多い企業の順でMacroStrategyは4.5億ドル(約630億円)の損失が出ています。足元でビットコイン価格が低迷している影響もありますが、2021年頃から買い始めたMacroStrategyでも損失が出ています。2021年から2022年の高値圏で多くのビットコインを購入したため、現在は含み損を抱えた状態となっています。
保有数2位のMarathon Digital Holdingsは123万ドル(約1.7億円)の利益を出しています。同社は2010年に創業しており、かなり古くからビットコインを保有しているものと推測され、数年前から保有しているビットコインの含み益が多く出ていると考えられます。
Teslaは今年2月時点における損益は1.4億ドル(195億円)の損失と一部で報道されています。Teslaは2021年2月頃にビットコインが4万ドル近辺で取引されていた時期からビットコインの購入を開始しており、保有数の正確な数字は公表されていないものの損失が出ていることがわかっています。
CoinbaseはMarathon Digital Holdingsと同様に暗号資産業界の初期に創業したため、かなり前からビットコインの購入を開始していると推測されます。Coinbaseの保有ビットコインに対する含み益は7100万ドル(約99億円)に上ると見られています。
Blockは他社と比べると最近ビットコインの関連サービスの提供を開始した企業の一つですが、保有ビットコインの損益を見ると僅かに利益を出していることが報告されています。200万ドル(2.8億円)の利益を計上しています。
企業の損益状況から、保有しているビットコインで含み益が出ている企業は、2018年より以前にビットコインの購入を開始している企業がほとんどという結果でした。多くの企業はビットコイン関連のサービスを提供することで利益を上げており、ビットコインの含み益で利益を出すには最低でも4年かそれ以上のスパンの保有期間が必要ということがわかってきました。これは個人レベルの投資も同様にビットコインや他の暗号資産の長期投資で利益を出すには、かなりの期間を要することを示しているのではないでしょうか。
ビットコイン保有起票の株価チャート
では次にビットコインを保有する企業の株価チャートから、ビットコイン価格との関連性があるか見ていきましょう。
上記はナスダックに上場するMacroStrategyの株価チャートです。現在の株価は300ドル近辺で取引され、約2ヶ月移動平均線の8EMAを上回り推移しています。株価は2020年10月頃から強い上昇トレンドに入り、高騰します。10月に157ドルだった株価は2021年2月までに1300ドルまで上昇し、約1年4ヶ月で約8倍になりました。一方、2021年後半は上値が重い展開となり、2022年6月には150ドル程度まで下落しています。2023年に入ると株価は底堅く推移し、今年は98%の上昇となっています。
Marathon DigitalHoldingsの株価は2020年頃11月から大きく上昇し始めています。11月の2.5ドルから2021年11月には82ドルまで上昇し、1年で上昇率は3300%を記録しました。好調だった株価は2022年に入るとトレンドが反転し、下落し始めました。株価は2022年12月には3ドル近辺まで売られました。一方、2023年は上昇しており現在は10.5ドルで取引され、年初来の上昇率は330%となっています。
次はTeslaの株価を見ていきましょう。Teslaの株価もこれまでの他社の値動き同様に2020年下半期から上昇トレンドが始まっており、6月に56ドルで取引されていた株価は2021年11月に408ドルまで上昇しました。1年半で約7倍になりました。高値を付けた後は上値が重くなり、2022年12月には114ドルまで下落しました。今年はトレンドが反転しており、足元で底堅い推移となっています。現在は229ドルまで上昇し、今年の最高値で取引されています。2023年の上昇率は109%となっています。
Coinbaseは2021年4月に上場しており、ビットコインを保有する企業の中では最近上場した企業となります。2021年は暗号資産業界が盛り上がっていたこともあり、Coinbaseの上場は大きな話題を呼びました。しかしこの時期が相場の天井となり、株価は上場後に一方的に下落する流れになりました。2021年4月は350ドルだった株価は2022年12月に33ドルまで下落しました。今年に入ると他の企業と同様に底堅い動きとなり現在は、51ドルで取引されており上昇率は53%を記録しています。
Blockも他の企業同様に似たようなチャートが形成されています。株価は2020年5月頃の80ドルから上昇トレンドが始まり、2021年8月に288ドルを付けたところで天井を打ちました。株価は2021年後半から本格的に下落トレンドが始まり、2022年10月に足元の安値となる50ドルを記録しました。Blockの株価は2023年に入ってもやや上値が重い展開となっており現在は66ドルで取引されています。
ビットコインのチャート
最後にビットコインのチャートを見ていきましょう。ビットコインも他の株価同様に2020年夏頃から本格的な上昇トレンドが始まっています。7月時点で価格は9300ドルで取引されていましたが、2021年4月には63800ドルまで上昇しました。10ヶ月で約6倍となりました。その後2021年の上半期は一時3万ドルまで売られるも、2021年冬には6万7000ドルの史上最高値を記録しています。2022年からは本格的な下落トレンドに入り、2022年11月のFTXが発生した際に1万6000ドルまで下落しました。2023年は徐々に買い戻しが入り、現在は2万6000ドル近辺で取引され、年間の上昇率は61%となっています。
2020年以降で見ると、多くの株価とビットコインのチャートは似ていることがわかります。上昇の時期や天井を打つ時期はほぼ同じとなっており、相関性が高いことがわかります。株式投資を通じて暗号資産業界に投資したい方は、ビットコイン関連銘柄を購入することも可能です。Marathon DigitalHoldingsは2020年から始まった上昇トレンド時にビットコインよりも高い上昇率を記録しており、より大きな値幅を記録する銘柄もあります。今後の上昇トレンド時にも大きな値動きとなる関連銘柄も出てくるでしょう。
まとめ
今回はビットコインを保有する企業に関して見てきましたが、多くの企業は自社のサービスに紐ずける目的で保有しており、純粋な資産として保有する企業はまだ多くないことがわかりました。最も多く保有するMicroStrategyでも総供給量の0.6%となっており、企業がビットコインを保有する割合はまだ多くありません。多くのビットコインは個人投資家に保有されていることがわかります。
保有企業の株価チャートとビットコインの価格チャートを見比べるとかなり相関性が高いことがわかり、ビットコインの価格は企業の業績やマクロの経済状況に連動していることが見えてきました。今後、ビットコインや暗号資産に関連したサービスを提供するさらに企業が増え、業績が伸びることで現物の価格上昇の後押しにもなるでしょう。ビットコインは誕生から10年が経ち、保有する投資家が幅広く存在し、独自な値動きをする市場ではなくなってきたと言えます。