FTXを巡り湧き出る悪材料 今回のショックを前回と比較

7日〜13日のビットコイン(BTC)対円相場の週足終値は、前週比802,095円(26.08%)安の2,273,979円。海外暗号資産(仮想通貨)交換業者FTXの取付け騒ぎを巡り市場は全面安の様相を呈し、BTC対円は2020年12月以来の水準まで下落している。
10日に発表された10月米消費者物価指数(CPI)の予想以上の減速で240万円から20万円ほど反発したBTC相場だったが、18,000ドル水準で上値を抑えられると、FTXが今年買収した仮想通貨レンディングのBlockFiが一部サービス停止を発表し反落。11日には、FTXが正式に米国で破産申請を提出し、一時的に材料出尽くし感で下げ止まるも、FTT相場急落に連れ安となりCPI発表後の上げ幅を掻き消した。
普段では変動率の落ち着きやすい週末の仮想通貨市場だが、先週はFTX CEOのSBF氏の南米への逃亡疑惑や、同社が顧客資産を無断でアラメダリサーチに運用させていたとの報道、さらにはハッキングによる6億ドル(≒834億円)相当の資金流出やアプリ上のマルウェア検出など、悪材料が次々と湧き出し、BTC相場は上値の重い展開となり230万円を割って週足終値を付けた。


今週のBTCは引き続き上値の重い展開が続くか。8日〜9日にかけての相場急落で売られ過ぎ感も指摘されたが、FTXを巡っては時間が経過する度に悪材料が次々と出てくる状況が続いており、破産申請をした後もアクが抜け切れず、情報が錯綜し混乱が尾を引く格好となっている。
世界トップクラスの仮想通貨取引所が悪質とまで言える経営で取付け騒ぎを起こしたことで、業界への信用にも大きなダメージを与えたと言える一方、11日の米株市場ではコインベース(COIN)が12.84%高と株価が大幅上昇し二営業日続伸となった。FTXショックで仮想通貨市場と業界には甚大な影響があった訳だが、COINの上昇を見ると業界もまだ投資家から完全に見捨てられてはなさそうだ。また、水面下ではユーザーによるより安全な取引所への資金移動が加速しており、上場企業で経営に関して透明性が高いコインベースは今回の件でユーザー基盤を伸ばすと見込まれている訳か。
外国為替市場での円高進行により、BTC対円は9日安値の230万円を割り込んでいるが、対ドル相場は9日安値の15,512ドル(≒215.8万円)を維持しており、目先では同水準を死守できるかが焦点となろう。先週はバイナンスのFTX買収方針撤回後も米CPIで相場が反発していたことから、引き続き米国の経済指標や米連邦準備制度理事会(FRB)高官の発言には注目しておきたい。足元では、米国のインフレが6月にピークアウトした可能性が高まり、複数の連銀総裁らが利上げペースについて慎重論を唱え始め、これまでBTC相場の上値を抑制してきた米国債利回りにも頭打ち感が出てきている。
FTXショックの余波への懸念は依然として燻るが、BTC相場はテラショックとセルシウスショックの際と比較すると下げは控えめだ。当時は直前の安値から相場が20%〜30%程押したが、今回は約11%に止まっている。現状を「比較的に相場が下げ足りない」と見ることも勿論できるが、前回二回のショックはFRBの利上げペース加速の最中であったことや、含み益を抱えるコインの割合が高く潜在的売り圧力が十分に残っていたことが指摘され、今回は案外相場の下げ余地が限られる可能性もあるか。楽観は時期尚早だが、まずはBTC対ドルが9日安値を維持できるかしっかりと見定めたい。


