危うい展開のBTC マイナーは利食いから貯蓄へ移行か?

22日〜28日のビットコイン(BTC)対円相場の週足終値は、前週比246,657円(8.35%)安の2,705,811円と2週続落し、対ドルでは心理的節目の20,000ドル(≒276.6万円)を8週間ぶりに割り込んだ。
ジャクソンホール会議でのパウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長の講演を控え、先週のBTC相場は講演当日の26日まで概ね290万円台での横ばいが続いた。複数の米地区連銀総裁からタカ派的な発言も相次いだことでパウエル議長からもタカ派的な発言が予想された一方、景気減速を巡る懸念から市場に配慮した発言もあるかと見込まれたが、講演では成長鈍化をある程度許容する形で高金利をしばらく維持しインフレを抑制するとの旨の発言があり、全体としてタカ派的な内容となった。
これを受けてBTC相場は乱高下の末安値を模索する展開に転じ290万円を割り込むと、週末まで売りが続き280万円も割り込んだ。その後は、対ドルで20,000ドル水準となる270万円台中盤で揉み合いが続いたが、シカゴマーケンタイル取引所(CME)でBTC先物の取引が再開されるともう一段安を演じ、270万円割れをうかがう展開となっている。


パウエル議長の講演からは、現状が利上げサイクルの折り返し地点であるか否かについてのヒントを期待していたが、9月の米連邦公開市場委員会(FOMC)での政策金利引き上げ幅や、ターミナルレート(最終的な政策金利の上限)についての言及はなく、依然として市場は利上げサイクルの前半戦にあるとの印象で、来年上半期中の利下げ観測も急速に後退した。想定していた年末までの政策金利の軌道としては、9月:50ベーシスポイント(bp)、11月:25bp、12月:25bpと、7月が折り返し地点となる筈だったが、これは大きな誤算となる可能性が大幅に拡大したと言える。
ただ、パウエル議長は9月の政策金利引き上げ幅に関しては、「完全にこれから発表される経済指標次第」とも言及しており、来月のFOMCまでには、8月の米雇用統計(9月2日)、同消費者物価指数(CPI、13日)と卸売物価指数(PPI、14日)が控えている。第二・四半期の米企業決算ではレイオフや雇用縮小を発表する企業が散見され、6月〜8月中は失業保険継続申請件数の増加が確認されており、労働市場の成長は減速することが見込まれる。物価統計に関しても、8月も原油価格とガソリン代の低下が続き、7月からのCPIとPPIの低下が想定される。
勿論、ある程度の景気減速を許容するとFRB議長から発言があったため、雇用統計が想定通りに下振れしたとしても大幅な市場のムード改善には繋がらないと指摘され、どちらかと言えば物価統計の方が重要度が高いと指摘される。
以上に鑑みれば13日の米CPI発表まで、BTC相場は上値の重い展開となることが見込まれるが、オンチェーンとデリバティブ市場からは底入れを予感させるデータも散見される。まずはビットコインのハッシュレートだが、5月からの低下基調を脱して堅調な推移を維持し、先週指摘したハッシュリボンのゴールデンクロスも維持したままだ(第2図)。加えて、マイナーから換金目的と思われる取引所へのBTC送金にも増加が確認されず、実需筋は利食いフェーズから貯蓄フェーズに入ったと指摘される。

デリバティブ市場では、BTC先物の資金調達率がマイナス圏で推移しており(第4図)、3カ月物のBTC先物と現物BTCの価格乖離率も遂にマイナス圏に突入した(第3図)。こうしたことから、市場ではショートポジションが相応に積み上がっていることが指摘され、短期筋の売り余力もそれほど残されていないと指摘される。
米国の政策金利動向を鑑みれば、9月FOMCの利上げ幅を巡る不透明感からリスクオフムードは解消されにくいと言えるが、総合的に見ればBTC相場の下値も限定的かと指摘される。テクニカル的にも売られ過ぎ感は否めず、今週は一旦下げ止まる展開をメインシナリオと想定する。



