ドージコイン(DOGE)とは結局なんなのか?無駄に深掘りします

年初来で相場が一時9900%と暴騰したことで、業界の外からも注目を浴びているドージコイン(DOGE)ですが、「ジョークで作られた」と端的に片付けられてしまうことが多いので、もう少し詳しく解説していこうと思います。
ドージ(DOGE)とは
ドージ(DOGE)とは、シバ犬をモチーフにしたインターネット・ミームの一種です。そもそも「犬」を表す英単語の「DOG」を(わざと)書き間違えたもので、始まりはネット上でコメディー動画を制作するHomestarRunner.com(ホームスター・ランナー)が2005年に作った動画の中で(0:28辺り)、キャラクターが「DOG」のスペルを「DーOーGーE」と言ったのが切っ掛けとされています。
モチーフとなっているシバ犬は、日本で飼育されているシバ犬の「かぼすちゃん」です。前足を組んで横目でカメラを見つめるかぼすちゃんの写真は、2010年2月に飼い主様の個人ブログに投稿されたもので、同年10月に/r/Adsのサブレディットに、「LMBO LOOK @ THIS FUKKIN DOGE」のタイトルでかぼすちゃんの写真が投稿されたことを契機に、かぼすちゃんがネット世界に広まり、インターネット・ミームとして人気を博すようになりました。
2017年には、中国のメディアCCTVがかぼすちゃんの死をツイッターで報道し、コミュニティーを震撼させました。しかし、これはエイプリルフールズのジョークだったことが後に判明します。かぼすちゃんは今もご健在で、その様子は飼い主様のブログとインスタグラムで拝見することができます(なかなか味のある表情のシバ犬にご成長されています。おすすめです)。
ドージコインができた背景
ドージコインを作ったのは、2013年当時アドビでマーケティングをしていたジャクソン・パルマー氏と、IBMでソフトウェア開発を行っていたビリー・マーカス氏のお二方です。
当時はある意味で「第一次アルトコインブーム」が起きており、今ではもう聞かなくなったようなアルトコインがジワジワと誕生し始めていました。こうした中でパルマー氏は、ある日、仕事から帰ってくると「時間を持て余していた」という理由で、dogecoin.comのドメインを取得、人気のシバ犬ミーム(かぼすちゃん)の顔をコインにフォトショップしたそうで、最初から真面目に仮想通貨を作ろうと思っていなかったのは確かなようです。
一方のマーカス氏は元々、任天堂の人気ゲームである「動物の森」の中で使われるゲーム内通貨の「ベル」をモチーフにしたBells(ベルズ)というコインを2012年に個人的に開発していました。ベルズはとても奇妙なシステムを採用しており、マイニング報酬で受け取れるベルズの数量はなんとランダムということでした。こうした奇妙な特徴もあり、ベルズは仮想通貨界隈でも浸透せず、マーカス氏は、一時は仮想通貨の開発から退こうかとも思ったそうです。ただ、そんな時にマーカス氏の目に止まったのがパルマー氏のドージコイン構想でした(その時点では構想とまで言えるレベルではありませんでしたが)。これを見たマーカス氏は、「最高のアイデアだ」と思ったそうで、ベルズで作ったコードをいじってドージコインを実際に作ったそうです。
こうしてパルマー氏のアイデアとマーカス氏の技術が合体して今のドージコインが生まれたことになります。
なぜ今まで生き残れているのか
シバ犬が可愛いから
2013年と言えば、米連邦捜査局(FBI)がシルクロードを閉鎖した年ですが、当時はやはりビットコインがシルクロードで利用されていたことで、仮想通貨全般には今よりも悪い印象がありましたが、人気のシバ犬ミームをロゴにあしらっているドージコインは瞬く間にネット上で人気を博します。
マーカス氏によると、リリース当初よりドージコインをマイニングするノードも順調に増えたいうことで、開発した同氏ですら先行特権でDOGEを単独で独占採掘することができなかったと話しています。
つまり、当時怪しいイメージがあった仮想通貨でしたが、ミームの力で支持者を集めたと言っても過言ではないでしょう。
シバ犬は活発である
開発者でさえしっかりとした計画性を持たずに生まれたドージコインですが、実を言うと開発はしっかりと続いており、プロトコルのアップデートや利用可能地点の拡大は現在でも続いています。
例えばですが、ドージコインのGithubリポジトリには現在、6900以上のスターがついており、情報サイトのコインゲッコーによると、過去1年間でも、まばらではありますがコミットが施されています。ちなみにですが、主要アルトコインの一つでもあるライトコイン(LTC)やカルダノ(ADA)よりもスターの件数はドージコインの方が上です。これはリポジトリの「お気に入り登録」のような機能なため、必ずしも更新頻度と直結しないかもしれませんが、ドージコインの注目度は主要アルトコインを凌ぐほど、と言えるかもしれません。
つい最近でも、3月末に「Operation Such Freshly」と言うドージコインコア・ウォレットの改善に関する提案が出されるなど、ドージコイン発展に向けたコミュニティーの努力が垣間見られます。
また、ドージコインは誕生当時から、スポーツチームへの寄付や物の売買に利用されたことで存在感を高めました。
2014年には、ジャマイカのボブスレーチームをソチ・オリンピックに送り出すための献金として、25,000ドル相当のドージコインがチームに寄付され、同年には、カー・レーサーのジョシュ・ワイズ氏への献金として33,000ドルのドージコインが送られました。さらに、米国の企業家が100万DOGEでウィスコンシン州の別荘を売りに出したり、ロンドンのハンバーガー屋がドージコイン決済を受け付けたりと、ドージコインは存在感を発揮します。
この他にも、2014年に仮想通貨決済サービスのGoCoinがドージコインの対応を開始したことで、同年には格安旅券予約サイトCheapAir.comでのドージコイン決済が可能になったことも話題となります。情報サイトのcryptrwerkによると、現在、2000以上のオン・オフライン地点でドージコインが利用できるそうです。有名どころでいうと、Time Magazineがサブスクリプション・フィーをドージコインでも受け付けています。
イーロン・マスクのくだり
こちらはより最近の話題ですが、米航空宇宙メーカーSpaceX CEOのイーロン・マスク氏がドージコインを(なぜか)推したことで、注目されるようになります。
ドージコインとマスク氏がいつ、どう繋がったかは定かではないですが、ドージコイン・コミュニティーでは「To The Moon」がモットーとなっており、「Moon=月=宇宙=イーロン・マスク」と言った具合で連想されたのが切っ掛けかと思います。個人的な妄想です。
ネット上では、少なくとも2017年末あたりからドージコインとマスク氏を結びつける投稿がちらほらと散見されます。また、2018年には、マスク氏自らパルマー氏宛に、ツイッター上のスパムアカウント除去の協力を促すツイートをしたことが話題となります。当時は、マスク氏を装った不正アカウントによる仮想通貨の無料配布スキャムが横行しており、マスク氏はこれに応答した形でした。このツイートは、英国の国営ニュースでも取り上げられるほどでした。
さらに、2019年には、ドージコインのツイッターが、ドージコインのCEOを(勝手に)決める投票を行いました。候補者は、イーサリアムのビタリック・ブテリン氏、ライトコインのチャーリー・リー氏、Metal Payのマーシャル・ヘイナー氏、そしてイーロン・マスク氏の四人で、結果はマスク氏が54.5%の票を獲得し、圧勝を修めました。これに反応する形で、マスク氏は「ドージコインが自分のお気に入り仮想通貨かもしれない。ドージコインはクールだ」とツイートしたことで、「マスク氏はドージコイン推し」と言うイメージが定着し始めます。
こうした背景があり、ドージコインの相場がマスク氏のツイートに反応を示すようになったと言えます。
ジョーク通貨に価値はないのか
さて、今年の相場暴騰によって、仮想通貨界隈の中からも外からも注目されているドージコインですが、「バブルだ」、「価値がない」と言う指摘も多いです。先日には、カルダノのチャールズ・ホスキンソン氏も、マスク氏がツイッターでドージコインを煽る行為を批判しており、25日時点では今年の高値(0.44813ドル)から40%以上安い、0.26569ドルで推移しています。
単純な経験則からいって、草コインが上昇トレンドを維持するのは難しく、価格の上下もニュースや要人発言で一時的に動くことが多いです。2020年までのドージコイン対ドル相場を見ても、ノコギリ型のチャート(一時的に相場が上昇して元の水準に押すチャートの形)が確認され、一過性のトレンドが発生しやすかったということが言えます。

ただ、実際にドージコインを利用したり、開発しているコミュニティーは、バブルだの、価値の有無の議論にそれほど興味があるのでしょうか?ドージコインはそもそも、「楽しくてフレンドリーなインターネット通貨」を目指しており、当事者が楽しんでいればそれで良いと考えているように思えます。RedditのDogecoinを見ても、各々がドージコインミームを貼りあっていて、とても楽しそうです。
ジョークとして生まれながらも、ドージコインには意外にもしっかりとしたコミュニティーがあるので、誰になんと言われようとも、息の長い草コインであり続けると考えられます。
画像出典:vhv.rs