BTCはジャクソンホールで反発も弱地合い続く 危うい水準で揉み合う:9月のBTC相場

ATHからの調整
8月のビットコイン(BTC)対ドルは11万5764ドルから売り優勢で取引が始まった。月初に発表された7月の米雇用統計で月間の非農業部門雇用者数が下振れたことに加え、5月〜6月で合計25.8万件の雇用が下方修正されたことを受け、景気後退への懸念が台頭した。一方、売り一巡後には米連邦準備理事会(FRB)による利下げ観測から徐々に戻りを試すと、トランプ大統領が確定拠出年金制度(401(k))にてBTCを含むオルタナティブ資産への投資を解禁する大統領令に署名したことや、ベッセント米財務大臣が50ベーシスポイント(bp)の利下げを支持したことで、14日には12万4000ドル台の史上最高値を記録した。
一方、この日発表された7月の米卸売物価指数(PPI)が上振れると、関税の影響から大幅な利下げへの期待感が後退し、相場は12万ドル台の維持に失敗。その後もアルトコイン相場が失速するなか、ジャクソンホール会議(JH)への警戒感から相場は11万ドル台前半まで水準を下げた。
注目されたジャクソンホール会議でのパウエルFRB議長の講演では、労働市場の減速から利下げを再開する可能性が示唆され、BTCは一時11万7000ドル周辺まで戻したが、25日朝方にクジラによる2万4000BTC売却の思惑が相場の重石となり、相場は11万ドル割れを試す展開となった。また、29日には人工知能(AI)の競争激化を嫌気したAI関連株の売りがBTC相場にも波及し、相場は11万ドルの維持に失敗。月足の終値は10万8303ドルとなった。

トレンド転換の境目まで下落
経済イベントの側面では、BTC相場にとってジャクソンホール会議がこの夏最後の試練と言え、結果は先月の想定通り、労働市場の下振れリスクが意識され、利下げ再開が9月米連邦公開市場委員会(FOMC)において選択肢に入ってきた。しかし、クジラによるBTC売却という固有リスクによって相場は底打ちに失敗し、8月後半は弱地合いが続いた。7月から2カ月連続で史上最高値の更新に成功したBTCドルだが、8月は結局前月の上げ幅の殆どを掻き消す格好となった。
8月の相場下落により、BTCドルは市場価格とオンチェーン上の実現価格の割合(Market Value Realized Value = MVRV)から算出される短期筋(Short-Term Holder = STH)の推定平均取得価格(Cost Basis = CB)を一時的に割り込んだ。STHの推定CBは上昇トレンド中の押し目買い、下降トレンド中の戻り売りの水準として意識されやすい指標となっている反面、相場トレンドの境目とも言える。クジラによるBTC売却によって相場がSTHの推定CBとなる10万9000ドル周辺まで下値を確認しにいったとも言えるが、同水準での攻防が9月のBTC相場の明暗を分ける可能性には注意しておきたい。

9月の見通し:遂に利下げ再開か?
危うい水準で推移するBTC相場だが、ここから復調できるか否かは9月のFOMCにかかっていると言えよう。ジャクソンホール会議にてパウエルFRB議長は、物価と雇用のリスクがシフトしつつあるとし、労働市場への懸念を示したことから、8月分の雇用統計が重要な手掛かりとなるだろう。
米国におけるindeedの求人件数は7月に底打ちとなっている一方、失業保険の継続申請件数は高止まりな状態が続いており、労働市場において需給のミスマッチが起きている可能性が指摘される。よって、7月からの労働市場の顕著な改善はみられないと想定され、FRBは労働市場の下振れリスクを回避するために9月FOMCにて利下げを行う公算が高いとみている。

9月は歴史的な観点からBTCにとってはパフォーマンスの悪い月となっており、2010年まで遡ると戦績は6勝9敗となっている(第1表)。しかし、昨年9月はFRBによる利下げが開始されたことで7.25%の上昇となっており、これが昨年3月〜10月まで続いた長期下降チャネルからのブレイクアウトの布石となったとも言え、今年も利下げが再開されれば相場の追い風となろう。
8月は13万ドル乗せに失敗したが、9月は再び上値を試す展開をメインシナリオとして想定する。

