破竹の勢いで上げたBTC 環境改善も今月中の調整は必至か:11月のBTC相場
ビットコインETF承認期待で上昇に拍車
10月のビットコイン(BTC)ドルは26,967ドルで寄り付くと、米議会がつなぎ予算を期日直前に通過させたことによるリスクオフの巻き戻しで28,000ドル上抜けを試す展開で始まった。一方、200日線が走る同水準で相場は上値を重くすると、コインベースが対ドルでない80の取引ペアの廃止を発表した他、イーサリアム財団によるイーサ(ETH)売却やリップルのCFO辞任を受けたアルトコインの売りが相場の重石となり、BTCは徐々に1日の上げ幅を縮小していった。この間、BTC相場は一目均衡表の三役好転を解消し、テクニカル的な地合いも悪化すると、11日には27,000ドルを割り、月初の上げ幅を完全に掻き消した。
ところが、BTCドルは10月1日にブレイクアウトに成功した7月高値と8月高値を基点とする下降トレンドライン周辺まで押すと下げ渋り(第2図内橙線)、13日には、グレイスケールのビットコイン投資信託(GBTC)の上場投資信託(ETF)転換を否認したことを巡る裁判で敗訴した米証券取引委員会(SEC)が、控訴を諦めたことで相場は徐々に復調し始め、15日には27,000ドルを回復した。
翌16日からの市況は現物型ビットコインETFを巡る報道で一変。16日、ブラックロックのiShares Bitcoin TrustがSECによって承認されたとの報道を受け、BTCは一気に30,000ドル近辺まで上昇すると、直後にこれが誤報だったことが判明し上げ幅を縮小した。しかし、この日は米連邦準備理事会(FRB)高官によるハト派的な発言や、企業決算を楽観視した米株の上昇が相場の支援となり、BTCは結局28,000ドルを回復し、10月上旬に相場のレジスタンスとなっていた200日線の上抜けに成功した(第2図)。
その後も、グレイスケールによるGBTCのETF転換再申請を受けてBTCは30,000ドル回復を窺うと、23日には米証券保管機関のDepository Trust & Clearing Corporation(DTCC)にiShares Bitcoin Trustのティッカー(IBTC)が掲載されていたことが発覚(掲載されたのは今年8月)し、BTCは一気に34,000ドルまで急伸した。
ただ、ここまでまさに「押し目待ちに押し目なし」といった勢いで上昇したBTCだったが、25日には34,000ドルを回復するも、節目35,000ドルがレジスタンスとなり、月末にかけては日柄調整の様相を呈した。ただ、11月1日には、米連邦公開市場委員会(FOMC)が金利据え置きを決定し、追加利上げに慎重な姿勢を示したことで、相場は35,000ドルを回復した。
金相場上昇のタイミングと重なる
中東情勢が悪化した直後、アルトの下げに連れてBTCは押し目をつけたが、結局はETFの承認期待を背景に上伸し年初来高値の更新に成功した。現物型ビットコインETFを巡っては、アークやフィデリティなど各社がカストディや価格参照に関して続々と修正をSECに提出する動きがあり、承認に向けたSECとのコミュニケーションが活発になっている様子が伺えた。ブラックロックにいたっては、シード・インベスター(初期投資家)に対するETFのシード(初期のシェア(Seed Creation Baskets))の販売を10月に完了させたことが明らかとなり、ヴァンエックもこれに追随。各社がビットコインETFローンチに向けて水面下で動いていることが浮き彫りとなり、SECによる承認への期待感が増している。
他方、金(ゴールド)の対ドル相場はハマスによるイスラエルの攻撃が始まった後の最初の営業日から15営業日で10%弱の上昇を記録し、有事における質への逃避が相場を押し上げた。BTCは一足遅れる形となったが、結果として金相場の上昇に追随し、広範な金融市場における「質への逃避」というナラティブに便乗した側面もあったと指摘される。足元では安全資産の代表の一つでもある米国債の相場が不調となっており(金利は上昇)、BTCはその代替を求める一部の投資家の受け皿ともなっているか。
中東情勢を巡っては、地上戦を開始したイスラエルに対して国際社会からの非難も出てきている一方で、戦況が収束する兆しは未だ掴めず、BTCは今月も金相場の肩を借りる場面がありそうだ。
慎重姿勢を強めたFOMC
10月31日から11月1日にかけて開催されたFOMCでは、2会合連続での利上げ見送りが決定された。この結果は従前より市場では織り込み済みではあったが、パウエルFRB議長は会合後の記者会見で、次回12月会合に関しては白紙である旨を明かし、経済見通しで示されている年内あと1回の利上げの可能性については、否定も肯定もしなかった。10月の小売売上高や第三・四半期のGDP成長率が市場予想よりも大幅に上振れたことで、11月のFOMCでは利上げを見送りつつも市場の利上げ終了観測を牽制しにくるかと懸念していたが、現状の政策については、「引き締め過ぎ」と「緩め過ぎ」の状態が「拮抗し始めている」と発言し、FRBが追加利上げに相当に慎重になってきている様子が窺えた。
こうした背景には米長期金利の急速な上昇による経済への影響をFRBが懸念していると指摘され、実際に11月のFOMC声明では、「家計とビジネスに対する逼迫した信用状況が経済活動の重石となりそうだ」という9月の文言に「金融」が付け加えられ、「逼迫した金融と信用状況」と、金融市場の経済への影響が盛り込まれた。
こうしてFRBが長期金利の上昇を警戒しつつ監視しているということは、「長期金利の高止まり=利上げの可能性低下」と市場に受け止められる可能性が指摘され、これまでと打って変わって過剰な米国債売りにも歯止めが掛かるか。米国債売りにブレーキがかかれば自ずと金利の上昇にも歯止めが掛かかることとなるが、この先の経済指標で景気減速の兆候がで始めれば、実質的に追加利上げの必要性が薄れる訳であり、反対に景気の底堅さが示され長期金利が上昇すれば、FRBの慎重姿勢が一層強まる訳で、いずれにせよBTCにとっては都合の良い環境だと言える。
テクニカルは強いが上げ過ぎ?
ビットコインETFの承認期待、質への逃避への便乗、さらにはFRBの慎重姿勢強化と好材料が出揃っていると言え、テクニカルの側面でもBTCドルの日足はボリンジャーバンドの上昇バンドウォークが発生している他、一目均衡表の三役好転を示現しており、相応に強い地合いが示されている。10月はBTCのオプション市場で40,000ドルやそれ以上にアウト・オブ・マネーのコールオプションが物色されており、足元の調子で相場が上昇し続ければガンマスクイーズによって相場が上に走る可能性も指摘される。
一方、短期且つ急速な相場の上昇に伴い、BTCドルの相対力指数(RSI)は「買われ過ぎ」とされる70%を超えており、過熱感は否定できない状態だ。加えて、これまで高い確度で相場トレンドの転換シグナルとなってきたRSIの弱気のダイバージェンスも確認され、足取りが怪しくなってきたと言える。
勿論、ダイバージェンスが発生する中でも、相場トレンドがある程度継続してることは第4図からも見てとれるが、ダイバージェンスが発生すれば、トレンドの時間的な寿命は限られることもわかる。
よって、目先のBTCドルは40,000ドル近辺までの上昇余地があると指摘される一方、テクニカル的な過熱感から11月中に値幅調整が入る公算が高いと言える。40,000ドル近辺まで上昇に成功した場合、35,000ドル周辺までの調整、相場が続伸に失敗した場合は、7月高値周辺の32,000ドルまでの調整は想定しておきたい。従って、これまで11月上旬のメインシナリオの上限は36,000ドルとしてきたが、今月から上限を40,000ドルに引き上げる(第5図内白帯)。ただ、繰り返し指摘の通り、相場に既に過熱感を帯びていることから、心理的節目となる40,000ドルの上抜けは厳しいだろう。