仮想通貨ビットコイン(BTC)の相場のクセ②:ビットコインの「波高き」の基準は?

前稿:仮想通貨ビットコイン(BTC)の相場のクセ①:ビットコインは何時に動きやすい?
「波高きは天底の兆し」とは
相場というものは常に動いているもので、ビットコインの相場価格も勿論のこと例外ではありません。ビットコインの価格は、業界独自のニュースから地政学的イベントや経済指標、またイーロン・マスク氏のツイートに金利やハッシュレートなど、影響を与えうる材料は多岐にわたります。
日々相場を見ていると、こうした材料が好感・嫌気されて価格が上がったり下がったりするのですが、相場の動く方向にはトレンドがあるものです。トレードにおいてこうしたトレンド、すなわち「流れ」に乗ることは比較的わかりやすいものの、流れの転換点を見極めることはそう容易ではないかと思います。
相場の格言の一つに「波高きは天底の兆し」というものがあり、これは相場が天井や底に近付くにつれて値動きが激しくなりやすいという意味になります。トレンドというものは徐々にペースが加速していき、終盤には「乗り遅れまいとする市場参加者」と「利益を確定したい市場参加者」の間で思惑が交差して値動きが激しくなると考えられます。

ビットコインの長期チャートを見るとトレンドとその変わり目がわかりますが(第1図)、そもそも変動が激しいと言われる暗号資産(仮想通貨)のビットコインでも「波高きは天底の兆し」が通用するのか、またビットコインにおける「波高き」はどのくらいかを本稿では紐解いていこうと思います。
モメンタム指標で測る相場の波の高さ
今回は相場の動きの激しさを測るのにモメンタム指標のヒストリカルボラティリティ(HV)と平均方向性指数(ADX)を用います。
HVは特定の期間の変化率の標準偏差(簡単にいうとばらつきです)を年率換算したものとなっており、今回は10日物と30日物のHVを使用します。
ADXは特定の期間の値幅を基準に算出される方向性指数(DMI)の+DMと-DMをさらに指数化した数値の指数平滑移動平均(EMA)となっており、ゼロ〜100の間で推移し、一般的には20を上回ると強いトレンドが発生しているサインとされます。
やや複雑になってしまいましたが、要は価格の変化率と値幅をベースにしたモメンタム指標の両方を見ることで、多角的に相場の動きの激しさを確認するという魂胆です。単純に、両指標が高い数値となれば値動きが激しくなっているサインとなり、それが相場の転換点と一致するかを見ていきます。
第2図は、2012年〜のビットコイン対円相場(上段)にHV(中段)とADX(下段)を表示させたチャートになります。

これだけ長期間でチャートを見ると上下の激しいADXはパターンが分かりにくい一方、HVは比較的パターンが分かりやすく出ています。例外もありますが、10日物HVが200%を明確に超えると相場の天底となるケースが確認されます(第2図内黒星)。
また、第2図内の赤星は、10日物HVが150%〜200%のレンジに上昇したタイミングとなっていますが、その後は短中期的に相場が方向感を失う傾向があり、「反転」のサインとは限らない一方でトレンドが休止するサインとなる場合が多いです。
次に、ADXの動きもよく見えるようにチャートを分割してズームアップしてみます。
第3〜7図はビットコイン対円相場の長期トレンドの節目をピックアップしたチャートになります。各図内のピンクの縦線は、目算ですが、相場の折り返し地点を示しています。
大局的な節目を見るとやはりHVもADXも上昇しており、こうした曲面では相場の波が高くなっていることがわかります。ADXは天底での数値にあまり一貫性がないですが、40以上で警戒サインと言えそうです。また、2017年や2019年の上昇トレンドの際は、調整でトレンドが休止する際にもHVの上昇が確認され、短中期的にもHVの上昇には注意を払うと良さそうです(第4、5図)。




波低くても天井なことも?
ここまででビットコインでも「波高きは天底の兆し」が当てはまるということが確認できましたが、つい最近ではその逆の現象も起きていたので紹介したいと思います。第7図はビットコイン対円の2021年初来のチャートになります。
ここでは、価格は4月まで高値と安値を切り上げて上昇トレンドを形成していましたが、HVとADXは下降トレンドとなっており、値動きの激しさが後退していっていることがわかります。こうした価格とモメンタム指標が逆の動きをすることを「ダイバージェンス」と言いますが、実はこれ自体がトレンドの反転シグナルとされており、2021年のビットコインは波は高くないものの天井を形成した格好です。

ただし、5月には相場の下落に10日物HVの150%超えに加え、6月にはADXが50にタッチしており、4月後半からの相場の下降トレンドも一旦は休止に入り、これまでのパターン通りビットコインは方向感に欠ける展開になっています。
まとめ
結論、ビットコイン価格の値動きが激しくなりHVやADXが上昇すると、相場の長期トレンドが折り返す傾向があり、普段から変動率の激しい仮想通貨のビットコインでも「波高きは天底の兆し」が通用すると言えます。HVは、短期10日物が200%を明確に超えると相場の天底となってきており、ADXは40を超えるとトレンドの終盤が警戒されるレベルと言えます。
また、10日物のHVは長期トレンドの節目に限らず短中期的な調整曲面の終盤でも上昇が確認されました。
しかし、こうした指標にも例外があり、価格トレンドと逆行する「ダイバージェンス」が出現した際は、「波の高さ」に関係なくトレンドが反転する可能性があるので注意です。
※モメンタム指標はトレンドの方向を測るテクニカル指標でなく、一般的にトレンドの勢いを測るテクニカル指標になります。