仮想通貨ビットコイン(BTC)の相場のクセ ①:ビットコインは何時に動きやすい?

1時間足から見る平均変動率
仮想通貨(暗号資産)のビットコイン(BTC)は、各国の取引所に独自の市場が散在し、週末を含め基本的に24時間365日市場が開いていますが、外国為替市場のような地理的な要因を背景とする相場の変動率(ボラティリティー)にクセはあるのでしょうか?
通貨ペアによっても異なりますが、代表的なユーロドルやドル円では、仲直の発表(10時頃)と多くの米経済指標が発表されるタイミング(夏:21時半、冬:22時半)、ロンドンフィキシング(夏:0時、冬:1時)、また欧米勢の取引が始まる16時と22時頃に取引が活発となり相場に流れが出やすくなると言われ、各国・地域の市場時間で相場の変動率に一定のクセがあると言われています。
下の第1図は2015年から2020年(8月25日迄)の時間帯毎の各年の平均変動率になります。過去の変動の標準偏差から算出されるヒストリカルボラティリティーと異なり、今回は1時間足の高値と安値の値幅をその平均値で除算し、時間帯毎の変動率を算出しています。

17年を除いては東京時間に変動率が低下基調となり、欧州と米国市場が重なる時間帯に変動率が高くなり、意外にも外国為替市場と類似したパターンが見られます。
ユーロ建てでのBTCの取引は世界の対法定通貨出来高の3%弱程度ですが(8月25日時点、Coinhills調べ)、ロンドンやドイツなどの主要な金融市場がある国・地域な上、仮想通貨においては取引所のKYCポリシー次第で海外の市場にアクセスすることは容易なため、流動性の高いUSDやUSDT建ての市場で取引を行う欧州の市場参加者は多いと考えられます。また、欧州時間は日本では夕方から始まりますが、bitbankではこの時間帯からサイトへのトラフィックが微増する傾向もあり、本邦リテール勢(一般投資家)の取引が活発になることも指摘されます。
BTCの対法定通貨出来高ではドルの占める割合が70%を超えていますが(8月25日時点、Coinhills調べ)、不思議とNY時間の中盤に相場が落ち着く傾向も見えてきました。欧州市場が引けるからか、本邦勢の取引が落ち着くからか、原因は不明ですが、いずれの年でもこうした傾向は一時的で、NY時間の引けにかけては変動率が戻ってきて東京時間が始まるまでこうした傾向が続きやすくなっています。
バブル経てパターン確立か
また、ICO(イニシャル・コイン・オファリング)ブームや仮想通貨バブルが起きた17年を境に、こうした変動率のパターンが確立され始めているようで、18年から20年のチャートはいずれも類似した形となっています。
この背景としては、17年のバブルを経て、市場に他アセットのトレード経験があるユーザーや、機関投資家の参入が増加したことで、伝統的金融市場で用いられるファンダメンタルズやテクニカルのセオリーの影響が相場に現れやすくなったことが挙げられます。
例えば、18年から20年では、仮想通貨市場で前日の終値がついた直後の9時台の変動率が高くなっており、終値はテクニカル分析の観点から重要な役割を果たします(仮想通貨は協定世界時⦅UTC +00:00⦆を基準に区切られます)。
テクニカル分析で代表的なダウ理論では、日中の価格が直近の高値を上抜け(安値を下抜け)しても、それを強気(弱気)のシグナルとは判断されません。一般的に、あくまでその日の終値が高値を上抜けて(安値を下抜けて)初めて強気(弱気)のシグナルが出たと判断されます。これは、高値・安値以外にも移動平均線やその他のトレンド系テクニカル指標にも言えることで、終値がついた直後の9時台に、市場参加者が各々が参照するテクニカル指標を基にポジションの調整を行うことで、9時台に相場が動きやすいのではないかと考えられます。そして、多くの市場参加者がポジションの調整をこの時間帯に終えることや、リテールの出来高が比較的に多い米国が夜中になることで、東京時間はその後ボラティリティーが低下する傾向にあると考えられます。
この他、テクニカルの側面で言うと、19年からは特に4時間足の節目となる1時、5時、9時、13時、17時、21時台の変動率が跳ねる傾向があり、少々マニアックですが、サイクル理論において4時間足を基に短期トレードを行うアルファサイクルが意識されているかもしれません。
また、米雇用統計といった重要な経済指標が発表される21時台(冬:22時台)も変動率が高くなりやすくなっており、18年からは経済のファンダメンタルズもある程度意識され始めている様に見えます。
結局何時に動きやすい?
今回参照した2015年〜2020年8月25日分のデータとメソドロジーで時間帯毎の平均変動率を算出し、その標準偏差(σ)を基にビットコイン相場が動きやすい時間帯を調べると、9時台、21時台〜23時台、1時台が1σを超える変動率となっていることがわかりました(第2図)。反対に、相場が落ち着きやすい時間帯は、2時台〜4時台、12時台、15時台となっています。

足元のトレード戦略に役立つよう、より直近のデータ(2020年6月〜8月25日)のみで算出すると、6時台、22時台〜23時台と1時台の変動率が高く、10時台〜11時台と16時台の変動率が落ち着きやすいようです(第3図)。

※変動率(ボラティリティー)は相場の動きの激しさを示す指標であり、相場の動く方向を示す指標ではありません。
※外国為替市場における各国・地域の市場時間は、主要な市場のある国・地域の市場参加者が活発に取引をする時間帯を元に、便宜上定義されているもので、参照元によって若干の誤差があります。