ビットコイン価格 4月の見通し:インフレ指標、FOMC議事要旨、強気アノマリー

先月のビットコイン価格
3月のビットコイン対円相場は1,674,382円(34.73%)高の6,495,623円と、月足の上昇幅としては過去最大となり、6ヶ月続伸しました(第1図)。3月はビットコインにとって価格の下がりやすい月となっており、2012年から2020年まで3勝6敗という成績でしたが、今年の3月はこうした「弱気アノマリー」を覆す結果となり、年初からは118.71%の上昇率を記録しています(第1表)。
2月は最終週にかけて相場が強く押し、同月高値(615万円)から実に25%の急落劇を繰り広げ、3月は480万円周辺からのスタートとなりましたが、米国での1.9兆ドル規模の追加経済対策の可決、それによる個人現金給付の資金流入期待、米雇用統計の改善や、カナダでのギャラクシーデジタルのビットコイン上場投資信託(ETF)取引開始など、月初から好材料に支えられ、月前半に相場は2月高値を更新し、14日に672.4万円の史上最高値を付けました。
一方、この頃には海外のビットコイン先物市場では、建玉残高が過去最高水準に達し、利益を確定する売りがロングの投げを誘発し、ビットコインの価格は584.2万円まで急落。その後、米連邦公開市場委員会(FOMC)の経済見通しの引き上げや2023年までのゼロ金利政策据え置き予想を受けて切り返すも、対ドルで2月の高値となる656万円水準で執拗な戻り売りにさいなまれ反落し、25日には551万円まで値を安くしました。
しかし、月末にかけてのビットコインは、米国でのコロナワクチン接種目標の引き上げによるリスクオンムードの台頭や、クレジットカード大手VISAがERC-20ベースのUSDC決済導入を発表したことによるイーサリアムの価格上昇に連動し反発。その後もオンライン決済大手のペイパルが仮想通貨決済サービスを開始し、月足終値は対ドル2月高値上抜けに成功しています。


ベース効果が予想される4月のインフレ指標
当方では繰り返し、米国の期待インフレ上昇がビットコイン価格を押し上げる一つの要因と指摘してきました。事実、米国債の名目金利と同年限の物価連動債利回りの差であり、市場が予想するインフレ率とされるブレークイーブン・インフレ率(BEI)とビットコインの価格には高い相関関係があり、5年物BEIと10年物BEIとの決定係数(R2)は、それぞれ0.825と0.742となっています(第2図:目盛りを百分率(%)に合わせるために、ビットコインの価格を米10年債利回りが1%を超え、10年物BEIが2%に乗せた1月4日の終値を100として指数化しています)。

もちろん、相関関係は因果関係を約束する物ではありませんが、「インフレ高進懸念が市場で醸成されることで、発行上限が固定され、発行ペースが低減していくデフレ型のビットコインが買われる」というのは筋が通る論理だと言えます。
一方で、実際のインフレを示す指標は、実のところ直近数ヶ月では緩慢なペースとなっており、期待感だけが先行している格好となっています(第3図)。
ただ、今月は2021年3月分の指標が発表される訳ですが、1年前の3月から6月あたりにかけてはちょうどコロナショックの影響でインフレに急ブレーキが掛かった時期であるため(第3図内オレンジ帯)、今月含め向こう数ヶ月間はインフレ指標が高めのに出る可能性があります。こうした比べる時点の数値によって出る影響を「ベース効果」と言います。

将来的なインフレ高進が予想されているだけでビットコインの価格も上向いているため、実際のインフレ指標である消費者物価指数(CPI)や個人消費支出(PCE)が上昇ペースを速めれば、相場の追い風になると考えられます。一つ懸念としては、市場が予想する以上にインフレが進み、当局(米国の場合連邦準備理事会:FRB)の手に負えない状況になることですが、現段階で可能性としては相応に低いと指摘されます。
3月分のCPIは4月13日、PCEは4月30日の発表となっています。
FOMC:4月会合よりも3月議事要旨が注目?
今月も米国の金融政策決定会合に当たる連邦公開市場委員会(FOMC)の会合が開催されます(27日〜28日)。3月の会合では、会合参加者の2023年までの実質ゼロ金利政策継続予想が維持され、2021年の経済見通しの引き上げも確認されました(第4図)。3月会合の直前までは、「利上げ時期が前倒しになるのでは」という懸念が一部であったのでしたが、この結果を受け安心感が広がる形となりました。
雇用市場やインフレの状況は先月から顕著な変化もなく、今月の会合では特段に目新し材料は出ないことが予想されますが、4月はこのほかにもFOMC関連で米国の金融政策や経済動向を見極めるヒントがいくつかあります。
一つ目は、3月FOMC会合の議事要旨公開です(4月7日)。何かと難しい舵取りを強いられているFOMCですが、なぜ経済見通しは引き上げた一方で緩和的な制作は長期的に維持されるのか、また、利上げ予想者が増えたのはなぜかなど、もう少し3月会合の結果背景に迫れるか注目です。
二つ目は、「ベージュブック」と呼ばれる、米国の12地区の連邦準備銀行が報告する経済状況を総括した「地区連銀経済報告」の公開があります(4月14日)。ベージュブックでは、それぞれの地区における直近の雇用・賃金や、物価状況についての報告がされるため、市場が注目します。
前回のベージュブックでは、全体的に雇用と賃金が目先で改善が見込まれるとされていた一方、物価引き上げは極一部でしか確認されなかったと記されており、実際の経済状況と合致していました。よって、ベージュブックはその内容によって政策のヒントも得られるだけでなく、その月の経済指標のヒントにもなり得ます。

第4図:FOMC参加者の2021年米GDP成長率、PCE、コアPCE予想中央値 出所:federalreserve.govより作成
4月のビットコイン価格:レンジと注目ポイント
3月の弱気アノマリーを覆したビットコインですが、4月〜6月の第二・四半期は反対に強気になりやすいというアノマリーがあり、以下のように2012年からのパフォーマンスは7勝2敗となっております。
【第二・四半期のBTC対円騰落率(3月終値〜6月終値)】
- 2012年第二・四半期:+29.80%
- 2013年第二・四半期:-1.77%
- 2014年第二・四半期:+38.31%
- 2015年第二・四半期:+9.66%
- 2016年第二・四半期:+47.59%
- 2017年第二・四半期:+131.90%
- 2018年第二・四半期:-4.97%
- 2019年第二・四半期:+158.83%
- 2020年第二・四半期:+42.98%
上昇率としてはまちまちなので、暴騰が期待できるという訳ではないですが、少なくとも終値ベースの下落率は第二・四半期を通じて限定的という特徴もあるので、上値が抑えられることがあってもアノマリー的には中期的に底も堅い展開が期待できそうです。
レンジとしては、530万円から775万円を予想します(第5図内紫帯)。下限は対ドルで48,000ドルの水準となります。その手前に心理的節目の50,000ドル(≒553万円)もありますが、この水準ではあまり相場が揉み合った形跡がなく、最悪のシナリオの場合、3月頭あたりで地固めをした530万円周辺の方がサポートとして機能すると期待されるためです。上限は対ドル70,000ドル水準の775万円を見ています。
この先の注目ポイントとしては、対ドルで2月高値と3月高値の水準となる646万円から684万円のレンジをどちらにブレイクするかとなっており、これが短中期的な相場の方向感を決める重要なポイントとなるでしょう。
メインシナリオとしては、目先では過熱感を解消しつつレンジでの値固めから、米国でのインフラ投資増やコロナワクチン接種進行でリスクオンムードやインフレ期待に支えられる展開を予想しています。また、モルガン・スタンレーとゴールドマンサックスの富裕層向け仮想通貨投資商品は、早ければ第二・四半期中にもローンチされるとされており、これらのニュースも4月中に出るか注目しておきたいです。
この他、4月は14日前後にイーサリアムのベルリン・アップグレードを控えており、ビットコイン価格と連動しやすいイーサリアムの価格にも目配りが必要となるでしょう。

第5図:BTC対円チャート 日足 出所:bitbank.ccより作成