BTCはダマシから反発でチャネルを再度ブレイク 米国債利回りの動きに注目

6月30日〜7月6日のビットコイン(BTC)対円相場の週足終値は、前週比13万8167円(0.88%)高の1580万124円と小幅に続伸した。
3日に発表された6月の米雇用統計で、月間雇用者数が市場予想(11.1万人)を上回る14.7万人となった他、失業率が市場予想(4.3%)に反して4.1%に改善し、市場は米連邦準備理事会(FRB)による利下げが遠のいたと判断したが、景気後退を危惧していた米株式市場が結果を好感したこともあり、BTC円は1600万円手前の水準を維持し、ドル建てでは節目11万ドルを窺う展開となった。
ところが、米独立記念日となる4日のアジア時間には、米株先物の軟化に影響され相場は失速。更に、海外時間に入ると、サトシ・ナカモトが活動していた(およそ2009年〜2011年)ビットコイン・ネットワーク初期の「サトシ時代」にマイニング(採掘)された1兆円相当のBTCが動いたことで、1555万円近辺まで水準を下げた。
サトシ時代のBTCの移動は、ハッキングによるものという憶測も飛び交い、売り圧力が懸念されたが、旧式のビットコイン・アドレスからより新しい形式のアドレスに移管されたとの見方もあり、週末の相場は1560万円台に戻した。また、6日にはトランプ大統領が12〜15の貿易相手国に対して新税率適用を8月1日まで延期することを7日に通知すると発表し、BTCは不安定ながらも週足終値で1580万円を回復した。

4日の相場反落により、BTCドルの下降チャネルブレイクアウトは一旦ダマシとなったが、週末の相場上昇で再びチャネル上限を上回った(第2図)。依然として11万ドル(≒1588万円)乗せには苦戦しているものの、テクニカル面のトレンド指標は先週から引き続き強気を維持している。

米雇用統計を受けて米国債利回りが上昇し、市場の早期利下げ観測が後退したが、これは極めて一時的な反応になるとみている。確かに、月間の雇用者数は市場予想を大きく上回った訳だが、その約半数は政府部門の雇用となっており、一時的な特殊要因だった公算が高い。翻って民間部門の雇用は7.4万人にとどまっており、一部業種では雇用者数の減少さえ確認された。
また、失業率の低下に関しても、総労働人口を示す労働参加率の低下や、トランプ大統領の移民政策による外国籍労働者の低下が寄与していると言える。実際、平均時給の上昇率と労働時間は低下しており、細かい内訳を精査すれば労働市場は減速していると指摘される。
他方、先週はついにトランプ減税法案が成立した。短期国債増発による短期金利への上昇圧力が懸念されているが、米労働市場に対する当方の見立てが合っていれば、Q3中にFRBによる利下げが再度意識されると指摘され、中長期的には短期金利の上昇は抑えられるとみている。寧ろ、財政悪化懸念が強まれば、通常、金利の上昇圧力はバックエンドの利回りに波及しやすく、長短金利差は徐々に開くだろう。
そういった意味で、今週は週後半の10年債・30年債の入札で減税法案成立の影響が需給にどう反映するかが一つ注目される。先月の入札では30年債の需要が思いの外堅調だったが、財政悪化懸念による需要の減退が確認されれば、BTCには追い風となろう。
とは言え、今週は目星い経済指標に乏しい1週間となっており、長期国債の入札までBTC相場ははっきりと方向感を示しにくいか。シカゴマーカンタイル取引所(CME)のBTC先物は、週明けに下窓を開けており、目先では窓埋めを目指し相場が押す展開も視野に入る。ただ、トランプ関税懸念の後退やテクニカルの改善、更にはETFの継続的な資金流入によって、BTCの下値は限定的だろう。
チャート上の注目ポイントとしては、やはり11万ドルを終値で回復できるか否かと言え、成功すればショートカバーやガンマスクイーズによるアップサイドリスクに注意が必要だろう。




PDFリンク
bitbank Report 2025/07/07:BTCはダマシから反発でチャネルを再度ブレイク 米国債利回りの動きに注目