米雇用統計に勢いを挫かれたBTC 今週のFOMCの焦点は?
3日〜9日のビットコイン(BTC)対円相場の週足終値は、前週比279,018円(2.62%)高の10,943,018円と反発するも、高値保ち合いからの上放れには失敗した。
先週のBTC円は週前半の1100万円回復以降、揉み合いが続いていたが、7日の米雇用統計を前に小締まる展開となり1123万円の史上最高値を記録した。
しかし、その後発表された5月の米雇用統計では、失業率が3.9%から4.0%に上昇したものの、月間の雇用者増加数と平均賃金が上振れ、FF金利先物市場では米連邦準備理事会(FRB)が9月の利下げ着手を急がないとの観測が強まった。これを受けてBTCはロングの投げを伴って急反落を演じ、ドル建てでは4日に上抜けに成功した下降チャネルの上限を再び割り込むと、失望売りが加速し一時は69,000ドル(≒1083万円)をも割り込んだ。
一方、米雇用統計が景気の底堅さを示したことで、この日の米株式市場は底堅い推移となり、BTCもその後は69,000ドル水準を回復し、1092万円周辺で揉み合いに転じると、週末は方向感に欠ける展開に終始した。
先週は週初から週央にかけて発表された米雇用関連指標が軒並み下振れたことで、雇用統計下振れへの期待感もあったが、非農業部門雇用者数は市場予想の+18.5万人を大幅に上回る+27.2万人となり、インフレの種ともなる平均賃金の上昇率は、前月比と前年同月比の双方で4月から加速し、BTC相場にはネガティブサプライズとなった。
FF金利見通しを含む経済見通しが発表される今週11日〜12日の米連邦公開市場委員会(FOMC)を前に、雇用統計の上振れはタイミングが悪かったと言えるが、FF金利先物市場ではこれまでFRBによる年内の利下げは9月の一回のみがコンセンサスとなっていたが、7日時点では利下げ開始時期の予想が11月にずれ込んだ(第2図)。
今月の月次レポートでも指摘の通り、6月のFOMCの焦点は年内のFF金利の見通しで、3月の経済見通しで示された年内3回の利下げと比較して年末の金利着地水準がどれだけ上方修正されるかが重要となろう。FOMCメンバー内でインフレ沈静化ペースの見解は割れており、利下げ回数の見通しに関しては不透明感が強いが、先月発表された4月の消費者物価指数(CPI)、小売売上高や個人消費支出(PCE)価格指数はインフレの沈静化を示している。即ち、5月のFOMCから状況は著しく悪化している訳ではなく、インフレ沈静化に自信を示すFOMCメンバーもいる中で年末時点の金利着地予想の二段階(50ベーシスポイント)引き上げは、市場に過剰な警戒感を印象付けるメッセージとなり兼ねない。
よって、今週は先週の米国債安(金利は上昇)が巻き戻り、BTC相場は上値を試す展開をメインシナリオと想定する。目先の上値目途としては、5月から相場のレジスタンスとなっている72,000ドル(≒1130万円)と指摘されるが、FOMC前後で発表される5月の米CPIと卸売物価指数(PPI)が4月の伸びから鈍化すれば、BTCは75,000ドル(≒1177万円)を試す余地もあると見ている。
一方、FOMCの結果が想定に反してタカ派サプライズとなれば、短期のテクニカル的なセンチメント悪化も相まって、これまで安値を切り上げてきたBTC相場も一気に弱気に傾く可能性が指摘される。この場合、65,000ドル〜66,000ドル(≒1021万円〜1037万円)周辺まで相場の下落余地がありそうだ。
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bitbank Report 2024/06/10:米雇用統計に勢いを挫かれたBTC 今週のFOMCの焦点は?