BTCは強気相場の土俵際で推移 米インフレ指標に注目集まる
6日〜12日のビットコイン(BTC)対円相場の週足終値は、前週比238,297円(2.42%)安の9,605,093円と6週続落した。
先週は買い材料に乏しい中、米証券取引委員会(SEC)によるロビンフッドに対する強制措置の通告などを受けて、BTCは1000万円周辺から小緩む展開で始まり、週央には950万円下抜けを試した。しかし、BTCはドル建てで100日移動平均線が走る61,000ドル周辺(≒950.2万円)で下げ止まると、9日に発表された米新規失業保険申請件数の上振れを受けて反発し、一時は980万円台に戻した。
一方、10日に米ミシガン大学が発表した一連の経済指標では、消費者信頼感指数が市場予想の76に対して67.4と大幅に下振れたものの、5年先の期待インフレが前月の3%から3.1%、一年先の期待インフレは3.2%から3.5%と上昇し、景気減速に物価上昇が伴うスタグフレーション懸念が台頭し、BTCは前日の上げ幅を解消した。
週末のBTC円は再び950万円近辺で下げ止まり底堅い推移に転じたが、戻りは鈍く、ドル建てでは、結局、100日線の防衛に失敗した。
第1図:BTC対円チャート 1時間足 出所:bitbank.ccより作成
今月3日に発表された4月の米雇用統計で月間雇用者数の低下、失業率の上昇、賃金上昇率の鈍化が確認され、BTCドルの下降チャネル下抜けはダマシとなったが、先週の相場は上値を伸ばすことに失敗し、ジリジリとチャネル下限近辺まで押し返された格好だ(第2図)。
直近ではこうした米労働市場の逼迫緩和や、製造業・非製造業PMIの下振れや消費者信頼感指数の低下による景気減速が示され、米連邦準備理事会(FRB)の政策が景気抑制的であることが指摘される一方、物価の側面では3月の消費者物価指数(CPI)の上振れなど利下げ開始の手掛かりとなる材料が確認されず、スタグフレーションに対する懸念が燻る状態となっている。
こうした中で今週は14日にCPIの先行指標とされる4月の卸売物価指数(PPI)、15日には4月のCPIと小売売上高と、重要指標の発表が控えており、これらの経済指標が、BTC相場が下降チャネル内での推移を維持できるかを左右すると見ている。
3月のCPIは単純に強めにでただけでなく、幅広い項目で物価の上昇が確認され、全体的な消費の強さを示唆する内容となったが、直近の景気減速のサインがインフレ抑制を促している可能性も指摘され、中長期的なインフレの鈍化傾向が再度確認できる内容となることを予想している。数値的には極端なインフレの鈍化は期待できずとも、鈍化傾向が示されればスタグフレーション懸念も後退すると指摘され、BTC相場は上値を試す展開が視野に入り、節目の70,000ドル(≒1090万円)やチャネル上限を試す展開となるか。
第2図:BTC対ドルチャート 日足 出所:Glassnodeより作成
一方、3月に続き4月の米CPIも上振れサプライズとなれば、BTC相場のチャネル下抜けは、足元の相場水準から鑑みて濃厚だろう。
また、ビットコインのオンチェーンデータでは、短期保有(STH)されるBTCの損益の割合で、トレンドの強弱を示すSTH損益レシオが中立水準となる1を挟み込む状態となっている(第3図)。
強気相場では、BTCのSTH損益レシオは1以上で推移し、レシオが1周辺まで低下すると押し目買いが入りやすい傾向がある。反対にレシオが1を割り込めば、弱気相場入りを示し、レシオが1周辺まで上昇すると戻り売りが入りやすい傾向があり、同指標は押し目買いや戻り売りのタイミングを見定めるのに有用だ。ただ、STH損益レシオはトレンドが転換するか否かを示す指標ではない為、足元のBTC相場は強気相場の土俵際にあると言える。
よって、テクニカル的にもオンチェーン的にも今週発表される米国のインフレ指標はBTC相場にとって重要なターニングポイントとなるだろう。
第3図:短期保有BTCの損益レシオ 日次 出所:Glassnodeより作成
第1表:BTC概況 出所:bitbank.cc、Glassnode、coingeckoより作成
第4図:BTC対円、先物資金調達率、ハッシュレートとディフィカルティチャート 日次 出所:bitbank.cc、Glassnodeより作成
第5図:BTC対円チャート 日足 出所:bitbank.cc、Glassnodeより作成
第2表:アルトコイン概況 出所:bitbank.ccより作成
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bitbank Report 2024/05/13:BTCは強気相場の土俵際で推移 米インフレ指標に注目集まる