BTCドル8週続伸も利食いで急落 今週の下値目途は?

4日〜10日のビットコイン(BTC)対円相場の週足終値は、前週比496,129円(8.47%)高の6,364,130円と続伸。ドル建てでは2016年ぶりに8週連騰を記録した。
日銀の緩和政策修正観測の台頭によるドル円相場の急落を受け、7日のBTC円は640万円周辺から620万円まで下落したが、翌8日米時間には下げ幅の殆どを解消した。この日発表された11月の米雇用統計では、非農業雇用者数が市場予想(+18万人)を上回る+19.9万人となり、失業率も10月の3.9%から3.7%に改善し、米連邦準備理事会(FRB)による早期利下げ観測が後退し米債利回りが反発。しかし、これにより景気後退懸念も後退した他、直後に米ミシガン大学が発表した12月の5年先の期待インフレが9月以来の低水準となったことも材料視され、この日の米市場はドル高、債券安(金利は上昇)、株高、金安となり、BTCは株価の上昇に連れ高となった格好だ。
また、8日の暗号資産(仮想通貨)市場ではアルトコインの物色も継続し、BTC相場の支えとなった。しかし、一部のアルトコインは週末にも物色されたが、週末のBTC相場は630万円台での揉み合いに終始した。

8日の米債利回りの急反発を受けてもBTC相場が反発できたのは意外だったが、相場はドル建てで45,000ドル(≒654.6万円)乗せに失敗し、テクニカル的な過熱感が維持された状態で高値揉み合いとなった。一方、本日のBTCは既に利益確定売りにより、コインベースでは40,300ドル付近まで急落している。先週後半からは時価総額100位以下のマイナーなアルトコインでも相場急騰が確認されたが、こうした現象が循環物色の一巡を予兆していたか。
BTCのオプション市場でも先週は75,000ドルコールの売買が確認されていたが、全体を見通すと1カ月物の25デルタスキュー(デルタの絶対値が25のプットとコールのインプライドボラティリティの差)が上昇しており、過度にアップサイドを織り込む動きは一段楽していた(第2図)。


一方、デリビットのBTCオプション市場では、40,000ドルストライクが最大ピン(一番建玉が集中するストライク、第3図)となっている他、シカゴマーカンタイル取引所(CME)のBTC先物では先週、およそ39,500ドル〜40,500ドルに窓が開いており、心理的節目となる40,000ドル周辺は強力な相場のサポートとなりそうだ。
翻って米市場では、8日の米雇用統計の上振れを受けて、FF金利先物市場では3月の利下げ開始観測が後退した。しかし、来年の着地見通しは4.25%と変わりはなく、引き続き9月の米連邦公開市場委員会(FOMC)のFF金利見通しとは大きな差がある(第4図)。こうした中、今週は12日に11月の米消費者物価指数(CPI)の発表と、14日未明には今年最後のFOMCの結果が控えている。

今回のFOMCでは金利据え置きが濃厚と言える他、経済見通しでの来年のFF金利予想も引き下げられると見ているが、FOMCとFF金利先物市場の1%ポイントもの見通しの差が埋まるとは考え難い。
ただ、パウエルFRB議長が1日に発言したように、現状の政策はバランスが取れており、FRBがこれ以上積極的な引き締めを行うのは難しいと言える。また、先月ウォラーFRB理事が利下げ開始のタイミングに言及した後に他のFRB高官らが口を揃えて「利下げ議論は時期尚早」との発言をしていたことに鑑みるに、FRBは依然として市場に利下げを意識させたくないということは推測できるが、FF金利先物市場の予想を見れば「必要があれば利上げを行う」というこれまでの牽制も効果も薄れてきていると言えよう。
とは言え、BTC相場の過熱感やアルト物色の一巡、更にはFOMCという不確定材料を控え、足元では利益確定売りが出た格好だ。米CPIはFOMCの前に発表されることから、市場予想から余程かけ離れた結果でない限り市場への影響は小さいと仮定すれば、FOMCを通過するまでBTC相場の調整基調が続く可能性には注意したい。



第2表:アルトコイン概況 出所:bitbank.ccより作成