上値も重いが底堅いBTC 今週は米指標に振り回されるか?
20日〜26日のビットコイン(BTC)対円相場の週足終値は、前週比106円安の5,612,311円とほぼ変わらず。ただ、先週は一時530万円周辺まで押した後に復調し、週足は長い下ヒゲをつけており、底堅さを印象付ける推移となった。
バイナンスと米司法省(DOJ)との司法取引により、CEOのCZが退任に追い込まれ、21日には売りが加速したBTCだったが、同社の運営が継続するとの安心感から翌22日には下げ幅を解消すると、米時間には560万円を一時回復し週明けからの下げ幅を完全に奪回した。
23日には、米失業保険新規申請件数の予想外の減少や、米ミシガン大学が発表した11月の1年先の期待インフレが伸びを加速させたことで米債利回りが上昇し、一時はBTC相場の重石となったが、米株が底堅く推移したことで下げ幅は限定的され、BTCは560万円周辺の水準を維持した。翌24日には、デリビットのオプションカットを通過すると相場はジリ高に転じ、一時は38,000ドル水準(≒566.6万円)を回復した。しかし、心理的節目を相場が上回るとすかさず売りが入り、終値での38,000ドル回復には失敗した。
週末のBTCは概ね560万円台中盤での推移に終始していたが、CZに懲役10年が課される可能性があるとの報道を嫌気し、26日海外時間からやや軟化した。
先週はバイナンスCZの退任を巡って一時は荒れ模様となった暗号資産(仮想通貨)市場だったが、指摘の通り影響は一時的だった。他方、米連邦準備理事会(FRB)の利上げサイクル終盤が意識される中、11月の米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨では、「必要であれば利上げする準備がある」と記され、全体的にややタカ派よりのニュートラルという印象を受けた。ただ、裏を返せば12月の利上げの有無は引き続き「データ次第」と言え、先週は米株も底堅く、FF金利先物市場でも来年末の金利着地予想が25ベーシスポイント(bp)引き上がった程度で、利上げ打ち止めと来年5月からの利下げ観測に変化はなかった(第2図)。
つまり、先週は米新規失業保険申請件数の低下というサプライズがあった訳だが、市場は依然としてFFR見通しに対して楽観的であることが窺える。こうした中、今週は米国の住宅価格関連指数、コンファレンスボードの消費者信頼感指数、第三・四半期GDP成長率改定値、個人消費支出(PCE)に全米供給管理協会(ISM)の製造業購買担当者景気指数(PMI)と言った重要経済指標が目白押しとなっており、今週のBTC相場は米指標の影響を受けやすい1週間となりそうだ。
市場予想のは、住宅価格上昇の鈍化、消費者信頼感の低下、GDP成長率は予想外に上振れた速報値の4.9%から4.3%への下方修正、PCE価格指数の伸び鈍化、製造業PMIは50を下回るが10月の46.7から47.6への上昇となっており、概ね市場のFF金利見通しを正当化する内容だ。ただ、これらの指標は先週の指標よりも重要視されると指摘され、市場の予想に反する結果が出ればBTCのダウンサイドリスクも大きくなると言え、今週はボラティリティの上昇に注意したい。
BTCが38,000ドルの回復に成功すれば、引き続き40,000ドル(≒595.9万円)まで上昇余地があると見ているが、米指標が味方しなければドル建てで基準線と25日移動平均線が密集する36,000ドル台前半のエリア(≒536.3万円〜543.7万円)まで押す可能性もあるだろう。
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bitbank Report 2023/11/27:上値も重いが底堅いBTC 今週は米指標に振り回されるか?