ビットコインとナスダックを統計的に比較、データからそれぞれの違いを見出そう
ナスダックとビットコインの統計的な比較
ビットコインは既存の投資と比べて価格の変動率が激しく、暗号資産市場自体も比較的新しいため初めての資金を投入する事に躊躇する人も少ないと思います。ビットコインに投資するなら米株に投資する方が良いのではとの意見も多く聞かれます。そこで今回は、ビットコイン(BTC/USD)とアメリカ株の主要インデックスであるナスダック(Nasdaq)の統計データを使い分析を行っていきます。この記事を読めば、感覚的にではなく統計的な数字を元にビットコインと株式投資の違いを見出すことができ、自身に合った投資先や投資方法を見つけるヒントになるでしょう。
ビットコインはナスダックとの相関性が強く、比較対象となることが多い
ビットコインの値動きはナスダックと値動きが似ていることから、ビットコインのトレーダー中にもナスダックの値動きを見ながらトレードを行う人が多くいます。2つの銘柄は日足ベースでも連動性が強い時期が多く、特に近年はその相関関係が強くなっていると言われています。
上記チャートの上側がナスダックのチャートです。下側がビットコインのチャートです。ビットコインにはナスダックとの相関係数を表すインジケーター(Correlation)が付いています。
相関係数は1〜-1の間で推移し、1に近いほどプラスの相関性があり、-1に近いほどマイナスの相関性を表します。ビットコインとナスダックの相関係数は、2020年のコロナ相場以降は、ほぼプラスで推移しており、正の相関関係にあることがわかります。正の相関性がある銘柄は、同じ時期に上昇と下落が見られる傾向があるのが特徴です。
2021年4月から7月までの間では相関係数が大きくマイナスになる時期がありましたが、これは中国でマイニングが全面的に禁止されたことが影響し価格が暴落しました。ビットコイン特有のファンダメンタルズの変化から価格の下落に繋がったため、この時期はナスダックとの相関係数がマイナスになりました。この時期はナスダックが上昇しているにも関わらず、ビットコインが下落したため相関係数がマイナスになりました。
2021年4月から6月には、ビットコインのハッシュレートが大幅に下落し、市場に混乱が生じました。ビットコイン価格は株式相場との連動が外れ強く売られました。この当時のような例外的な事象が起きない限りは、ビットコインとナスダックの値動きには連動性が確認されています。
ビットコインとナスダックの変動率はどの程度違いがあるのか?
これまではビットコインとナスダックの値動きにプラスの相関関係があることを説明してきましたが、今度はそれぞれの変動率はどの程度違うのかを検証します。
ビットコイン日足、2020年1月1日から22年8月31日までの変動率
こちらのデータはCoinbaseのBTC/USDを利用し、Tradingview.comからダウンロードしています。ビットコインの変動率のヒストグラムが下で表したものになります。それぞれのヒストグラムは0.5%に区切られています。
日足の変動率レンジは-38.81%から19.49%と非常に高いことを示しています。コロナショック時にパニック相場となった2020年3月12日の日足が-38.81%を記録し、マイナスの下限を大きく引き下げました。価格の下落により投資家心理が悪化し、売りが売りを呼ぶ相場となりました。
大きなマイナスも記録しているビットコインですが、日足の平均変動率は0.179%となり、プラスとなっていることがわかります。標準偏差は3.98であるため、最大下落値の-38.81%が如何にレアケースであったかがわかります。ビットコイン日足の変動率データは平均値の0.179%に集中し左右対象に近い正規分布であり、平均値から±2標準偏差のレンジは-7.781%〜8.139%になります。ビットコインの日足変動率が正規分布であると仮定するなら、約95%の確率で日足の変動がこのレンジに収まることを示しています。
上記はBTC/USDの変動率を時系列にプロットしたものになります。こちらを見ると-7.781%〜8.139%のレンジに約95%のデータが集約されていることが、なんとなくわかるのではないでしょうか。また、-38.81%がデータの集団から大きく離れていることも示されており、相場が必要以上に悲観的になり不自然に売られたことも伝わってきます。
ナスダック日足、2020年1月1日から22年8月31日までの変動率
以下のヒストグラムは、ナスダック日足の変動率を0.5%で区切ったものになります。BTC/USD同様にtradhingview.comよりデータをダウンロードし利用しています。
今度はナスダック日足データとビットコイン日足データを比較していきます。
まず、ナスダックのレンジは-11.18%〜13.90%となり、ビットコインと比べレンジが狭いことを示しています。これは日足のボラティリティがナスダックの方が低いことを示しています。安定的な収益を狙うなら変動率が少ないナスダックがおすすめと言えそうです。
ナスダックの変動率の平均は0.095%となり、ビットコイン同様にプラスの数値を記録しています。一方、平均だけを比べるとビットコインの方が倍近いパフォーマンスがあることがわかります。平均だけに注目するなら収益期待値はビットコインの方が良いことがわかります。
ナスダックのヒストグラムも、平均値の0.095%に集中し、ほぼ左右対象になっており正規分布であると仮定します。ナスダックの平均値から±2標準偏差は-3.86%〜4.055%のレンジとなり、約95%のデータが集約されることになります。ビットコインの-3.803%〜4.162%と比べると、ほぼ半分のレンジが示されています。こちらでも改めて、ビットコインのボラティリティが比較的高いことが数値で著されています。価格の大きな変動を好まない人や、頻繁に値動きをチェックする習慣がない人はナスダックの方が安心できる投資を行えるかもしれません。
このデータをどのように投資またはトレードに利用する?
単純なパフォーマンスはビットコインが上
2020年1月からのビットコインとナスダックの日足の平均変動率はそれぞれ0.179%と0.095%となり、ビットコインの方が上昇率が高いことが高いことがわかります。ビットコインの方が2倍近いパフォーマンスを記録しており、現物投資においては利幅が大きい結果となりました。現物取引においては、ビットコインを投資先として優位性を示しました。
ボラティリティーも高いビットコイン
デイリーの平均変動率では高いパフォーマンスを記録したビットコインですが、上下の変動率も高く相場が不安定になれば、価格の下落が気になることもあるでしょう。値動きの安定性ではナスダックの方が優れていると言えます。また、レバレッジ取引においてはビットコインはかなりリスクが高いこともわかります。ここ2年間でデイリーでは最大40%近く下落することもあり、低いレバレッジでもロングポジションが強制的に清算される可能性があります。ビットコインのレバレッジ取引には十分注意が必要です。
一方、デイトレードなどの短期売買においては、ボラティリティが高いビットコインが取引機会が増えると考えられます。短期売買ではボラティリティが少ないと収益を上げることが非常に難しいです。高いビットコインのボラティリティを利用した取引は短期のトレーダーには魅力的でしょう。
大きな下落は弱気トレンドの底を示唆
ボラティリティーが高いビットコインですが、20%を超える下落はここ数年のデータ上でもアウトライヤーとなり約99%の確率で起こり得ない数字です。一方、38.81%の下落が発生した2020年3月12日は弱気トレンドの底となり、その後上昇トレンドに転じています。20%を超える下落は近年の相場においてもレアな事象で、弱気トレンドの最中に起きた場合は総悲観を意味し最後の売り手がビットコインを手放したことを示唆します。20%を超えるような下落が起きた場合は、反動上昇の期待値が上がることを覚えておきましょう。