イーサリアム・オンチェーン分析:強欲指数は低下も含み益アドレスはまだ高水準、総悲観とは言えない状況

イーサリアムの週足

- 先週(5月2週)のイーサリアムの週足は、15.8%下落し6週連続の陰線を記録した。終値は27.7万円だった。一時22.7万円まで下落し今年の最安値を更新した。ドル建では昨年夏の安値近辺をすでにタッチした。
- 2ヶ月平均の8EMAを4月4週から下回り、弱気なチャートが続いている。昨年夏に短期的な弱気なトレンドの転換ポイントになった20万円付近が大きなサポートとして意識されている。
含み益アドレス割合

- 含み益アドレス割合は、文字通りイーサリアムのアドレス全体に対する含み益があるアドレスの割合だ。送金された際の時価の平均がアドレスの購入価格となり、現在のイーサリアムの価格より上回っていれば含み益アドレスになる。
- 現在の含み益アドレス割合は60%前後で推移している。5月始めは72%で推移していたが、先週の価格の大きな下落により、10%以上も含み益アドレス割合は減少した。4月時点では80%を超えていたため、徐々に割合が低下している。現在は2年ぶりの低水準だが、2018年の大底を付けた際は10%を下回る水準にまで下落している。
- 含み益アドレスは昨年後半から下落を続け徐々に利確売りをこなしているが、長期的にはまだ含み益が出ているアドレスが多く、潜在的な売り圧力を残していることを示している。
強欲サイクル

- 強欲サイクルは、glassnodeのLong Term Holder NUPL という指標で、強欲指数として扱うことができる。1が強欲指数の最高値となっており、1から低下するにつれ強欲指数も下落する。glassnodeでは強欲サイクルは5段階に分かれている。
- 現在はサイクルの上から3番目に位置しており、強欲指数は0.37で推移している。先週まで上から2番目に位置していたが、先週の価格下落でサイクルの中立を示すところまで強欲指数が低下した。
- 昨年は0.8を超える水準で推移しており、サイクルの最も強欲な期間であったことが示されている。今月に入り強欲指数は低下しているが、長期のサイクルからはまだ下落サイクルの中盤であることを示唆している。
- 0.2を下回ると強欲指数がもう一段下がるが、現在はまだ強欲が低い水準とは言えない。0を下回ると総悲観が始まるポイントとされている。下落相場がターニングポイントを迎える際には、一度、総悲観まで強欲指数が下落することが多く、現在は総悲観には遠い状態と言える。
取引所保有イーサリアム

- 取引所保有イーサリアムは、取引所自体の保有とユーザーが取引所に預けているETHを含んでいる。ここ2年ほど取引所保有イーサリアムは、減少傾向にあり、ピーク時には3157万ETHだった。現在は2040万ETHにまで下落している。先月も減少傾向が変わらず、100万ETHほど取引所から抜けている様子が伺える。

- 大局的には下落傾向が変わらずだが、ここ1週間で見ると取引所への送金が増加していた。ここ最近の価格下落の影響から昨年までの利益を確定する動きが加速しているようだ。短期的には金融市場全体のリスクオフの流れを組むオンチェーンの動きが見られる。今週に入り取引所への送金は落ち着いているが、再度取引所への送金が増加してもおかしくはない状況だ。
新規作成アドレス推移

- 新規作成アドレスは、新たなユーザーの増減を示唆する指標だ。相場が低調なこともあり新規ユーザーの増加は停滞している。足元のデイリーの増加は約7万から約9万アドレスを記録している。7万アドレスはここ1年半で最も低い水準だ。
- 新規アドレスが増えていれば資金流入が期待できるが、現状は増えていない。先週は価格が大きく動いた影響から微増しているが、現在の相場環境からは多くの新規ユーザーの流入は難しいことが見受けられる。
ファンディングレート

- ファンディングレート(FR)は、無期限先物取引でロングポジションとショートポジションの比率で決まる。先週価格が急落し23.0万円を付けた際にFRは-0.29を記録した。年初来安値を更新しロングポジションが解消され、ショートポジションの比率が上がったことを示している。先週のFRは約6ヶ月ぶりの低い値となった。
- 今週は、価格が底値から反発したこともありFRがプラスを回復している。現在は0.003程度で推移しておりロングポジションの比率が再上昇した。足元の価格の上昇要因がショートカバーだったことを示している。
ロング清算

- ロングポジションの清算はトレンド転換を示唆し、多くの買いポジションが解消されると底打ちシグナルとなる。先週は下落時に1時間足で4270万ドルの清算が発生している。デイリーで見ると5月11日に1億7500万ドルの清算があった。5月11日の清算額は1月21日以来となる高さで、今年の2番目の高さとなった。
まとめ
- 週足チャートは今年の安値を更新したこともあり、かなり弱気なチャートとなっている。今週も売りが先行しており、下落して取引されている。長期的には20万円付近のサポートを試す展開が予想される。
- 最近のオンチェーンデータを見ると、利益アドレス割合はかなり低下し、強欲指数も足元で下落し悲観的な相場になった。一方、FRやロング清算ではトレンドが転換を示唆するほどの大きな買い手の清算があったとは言い難い。短期的には反発する可能性があるが、長期的な下落トレンドの転換を予想するには時期尚早だ。買いポジションには今後の下落リスクがあることに注意が必要だ。