ビットコインの上昇にはコモディティ市場との連動が必要、通貨安のファンダメンタルズが鍵か
ビットコインとゴールドの関係性
ビットコインと金(ゴールド)は金融市場ではコモディティに分類され、似たような性質を持つと考えられています。ビットコインはデジタル・ゴールドなどと表現されることもあります。どちらのコモディティも一般的な投資需要はリスク・ヘッジから来るものと多くの市場参加者は見ています。
ビットコインは、3月にアメリカで起きたシリコンバレー・バンクの破綻のような銀行から預金が引き出せなくなるようなリスクを回避するために購入するという需要があります。また、金融取引におけるプライバシー性を重視する投資家によって購入されるケースもあります。
金は一般的に株式市場や国債金利が下落するリスクに対する資産の逃避先として投資需要があります。ビットコインと金でどちらが良い投資先であるかという問いは、ボラティリティに大きな違いがあることから個人のリスク許容度、資金量、投資戦略によって答えが変わってくるでしょう。ビットコインの誕生以降の単純な値幅だけを見ればビットコインが圧倒的なパフォーマンスを示していますが、ビットコインも時価総額が巨大になり投資商品として一般的に浸透してきたこともあり、今後はこれまでのような大きな値上がりは期待しづらいでしょう。
今回はビットコインと金を主軸にしたコモディティーのデータを元に「ビットコインのトレード」に活かせる情報を探っていきたいと思います。
それぞれの金融データ比較
まずは近年のそれぞれの年率リターンを見ていきましょう。
単純なリターンの比較ではビットコインの方に軍配が上がっていることがわかります。一方、ボラティリティも高いことから弱気トレンドでは大きな下落幅も記録しています。
ビットコインとゴールドのチャート比較
上図は2018年以降のビットコインと金の週足チャートになります。現在の価格で見ると、金は最高値近辺で取引され、ビットコインは高値からかなり下に乖離していることがわかります。これを見るとゴールドの方が安定して上昇していることを示しています。
では次に最近の大きな上昇トレンドが発生したタイミングを見ていきましょう。ゴールドは2019年頃から上昇トレンドが始まり、2020年に2000ドルを超えた辺りから上値が重くなりレンジ推移に以降しています。その後2022年に1650ドルまで下落しました。
一方、ビットコインの上昇トレンドは2020年から始まり、2021年に6万ドルを超えた価格帯から上値が重くなり、レンジ推移に以降しました。2022年には16000ドルまで価格が押す展開となりました。
上図のチャートを比較すると、金がビットコインを先行して価格が推移していることがわかります。また、今年に入りビットコインは1万6000ドルから現在は2万5000ドルまで上昇していますが、金は昨年10月に底打ちし上昇トレンドに入っていました。金は米国金利と逆相関の関係にあり、米国金利が下がると金利がつかないゴールドが上昇する傾向があります。金利が下落する過程で市場に余ったお金がビットコインに流れる傾向があるようです。ビットコインも金利がつかないというゴールドと同じ性質を持つコモディティとして順次買われるといったファンダメンタルズがあると考えられます。これはビットコインが上昇するとその他のアルトコインが上昇する関係性に似ています。
その他コモディティとの相関係数
次はゴールドを含めた主要コモディティとビットコインの相関係数から伝統的な商品指標との関係性を見ていきましょう。コモディティは金、シルバー、銅を使っています。
上記は月足のチャートとなり、上からビットコインの値動き、続いて相関係数が金(青)、シルバー(水色)、銅(黄)です。上記チャートからどのコモディティも多くの期間で正の相関関係が確認されています。正の相関関係は同じ方向に相場が動くことを示しており、ビットコインとコモディティの値動きには強い連動性があることがわかります。
コモディティは通貨安、特にドル安局面で買われる傾向がありビットコインも同じような傾向があると言えます。ビットコインの値動きを予想する上で、これらのコモディティとの連動性を知っておくことは重要であると考えられます。
では次により細かいチャートで相関係数を見ていきます。
今回は相場の天井となったポイントに重点を置いて分析を行っていきます。まずは2018年の天井となったポイントを見ていきましょう。
この時は、2017年の始め頃からいずれのコモディティとの連動性が強くなっていることがわかります。一方、2017年の年末にビットコインが当時の高値2万ドルに到達した時には金やシルバーとの連動性が弱くなっていました。これはビットコインの相場が年末時点では買われすぎていたことを示しています。ビットコインは2018年に入ると長い弱気トレンドに入っていきます。
次は2019年の相場の天井となった時期を見ていきましょう。この時ビットコインは2018年の弱気トレンドから反発し、価格は1万3000ドルを回復しました。コモディティとの相関係数はゴールドとシルバーはプラスで推移していましたが、銅との相関係数はマイナスで推移していました。2019年のビットコインは2017年の高値を試すことなく、天井を付けた後7000ドル近辺まで価格を下げました。
最後に2021年にビットコインが6万ドルまで上昇した相場を見ていきます。この時も2017年の相場同様に天井を付ける前年の2020年からどのコモディティも相関係数がプラスで推移し始めていました。一方、2021年5月のビットコインの天井ではゴールドとの連動が外れ、相関係数はマイナスとなっていました。この時もビットコインの相場は買われすぎていたため、2021年10月に再度高値を試した際は上値が重くなり、2022年からは本格的な弱気トレンドに突入していきます。
これまで見てきた3つのビットコイン相場を総合すると、強い上昇トレンドは全てのコモディティとの正の相関が必要となります。ビットコインの価格が上昇している一方、正の相関係数が崩れると相場の天井に向かっている可能性が指摘されます。通貨安のファンダメンタルズを背景にしてコモディティ市場全体が買われる相場がビットコインにとっても上昇トレンドを発生が発生しやすい相場地合いであると考えられます。
まとめ
今回の分析では、ビットコインはゴールドだけにとどまらずシルバーや銅との相関性も強いことがわかりました。また、ビットコインの上昇にはコモディティ市場全体が上昇していることが好ましい相場であることも示唆されました。ビットコインの上昇局面で伝統的なコモディティ市場との連動が外れると買いポジションに注意が必要です。今年に入りビットコインは1万6000ドル台から足元で3万ドルに復帰しました。現在はどのコモディティとの相関性が強く良好な相場地合いにあると言えるでしょう。