仮想通貨の利益で法人化できる?税金の違いやメリットが出る金額を解説
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仮想通貨で大きな利益を獲得した場合、事業にして法人化にすべきか悩みを抱えている方も多いと思います。
利益が一定基準を超えると、法人化した方が支払う税金を安く抑えられます。ただ、仮想通貨の利益だけで判断すると、思わぬ損失が発生してしまう可能性もあるため、無計画な法人化はおすすめできません。
本記事では、仮想通貨と法人の関係について以下の内容を解説しています。
【この記事を読むとわかること】
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仮想通貨の利益が好調で法人化を検討している方は、ぜひ参考にしてください。
仮想通貨投資において法人化は有効なのか
結論、仮想通貨投資において法人化は「一定以上の利益を出した場合」に有効です。
本章では、仮想通貨投資において法人化が有効かどうか以下の項目を解説します。
- 法人化が有効な理由
- 途中から法人化も可能
法人化が有効な理由
仮想通貨投資において法人化が有効な理由は、一定金額を超えた場合、個人にかかる税金よりも「法人税の方が税負担は軽くなる」ためです。
たとえば、個人と法人の税金を下表で比較してみましょう。
税金 | 所得税率 |
個人(雑所得) | 最大45%(所得金額40,000,000円 以上) |
法人税 | 【資本金1億円を超える法人】 一律23.20% 【資本金1億円以下の法人】 年間800万円を超える部分:23.2% 年間800万円以下の部分:15% |
個人と法人どちらも、住民税や事業税などの税金が10%程度上乗せされます。
所得税の最大金額を比較した場合、個人よりも法人税の方が税負担を半分程度に抑えられるため、法人化は有効な手段といえます。
途中から法人化も可能
法人化は年度の途中からでも手続きできるため、年度の途中で仮想通貨利益が大きくなった場合も対応可能です。
ただ、年度の途中で個人事業主から法人化した場合は、年度それぞれ確定申告が必要となります。
3月31日まで個人事業主で、4月1日から法人化した場合の確定申告例を見てみましょう。
- 1月1日~3月31日:個人事業主分の確定申告
- 4月1日~:法人分の確定申告
年度の途中からでも法人化は可能な一方、確定申告が漏れてしまうリスクも上昇します。確定申告を忘れてしまうと、延滞税や加算税などが発生する場合もあるため、期限内の提出を徹底しましょう。
期限内に確定申告を忘れた場合でも、自分で気が付いたらできるだけ早く申告するようにしてください。この場合は、期限後申告として取り扱われます。 また、期限後申告をしたり、所得金額の決定を受けたりすると、申告等によって納める税金のほかに無申告加算税が課されます。 引用:国税庁「No.2024 確定申告を忘れたとき」 |
法人化して仮想通貨に投資するメリット
法人化して仮想通貨に投資した場合のメリットを確認しましょう。
本章では、法人化した場合に発生する以下6つのメリットを解説します。
- 所得税と比べて税率の上限を低くできる
- 他所得との損益通算ができる
- 赤字を10年繰越せる
- 給与所得控除を利用できる
- 所得を分散できる
- 経費にできる範囲が広い
所得税と比べて税率の上限を低くできる
法人化を進めると、所得税と比べて税率の上限を低くできます。理由としては、個人にかかる雑所得よりも法人税の方が、税率の上限が低くなるためです。
具体的な税率は「法人税:最大23%」「所得税:最大45%」で、最大税率だけで比較しても20%上限を抑えられるため、法人化するメリットとして十分です。
他所得との損益通算ができる
法人化して仮想通貨取引をする場合、他の所得と損益通算が可能です。損益通算ができると、仮想通貨で発生した損失を他所得の黒字と相殺できるため、課税所得を減らせます。
たとえば、以下のケースを想定してみましょう。
- 仮想通貨で1,000万円の赤字
- 事業所得で1,500万円の黒字
上記の計算方法・課税対象は下表のとおりです。
計算 | 課税対象 | |
損益通算なし | 黒字だけが課税される | 1,500万円が課税対象 |
損益通算あり | 他所得の黒字と相殺できる | 1,500万-1,000万円=500万円が課税対象 |
損益通算が適用される場合、課税対象は500万円(1,500万円 - 1,000万円)まで減らせます。仮想通貨以外でも利益を得ている方は、法人化も検討してみましょう。
赤字を10年繰越せる
法人化して仮想通貨取引を進める場合、赤字は10年繰越控除を受けられます。一方で個人の場合は、原則として損失を繰越せません。
たとえば、仮想通貨で赤字を抱えて繰越控除するケースを見てみましょう。
年数 | 仮想通貨利益 | 法人の場合 | 個人の場合 |
1年目 | -3,000万円 | 課税なし | 課税なし |
2年目 | 500万円 | 500万円-3,000=-2,500万円 課税なし | 500万円に課税 |
3年目 | 1,000万円 | 1,000万円-2,500万円=1,500万円 課税なし | 1,000万円に課税 |
4年目 | 1,600万円 | 1,600万円-1,500万円=100万円 100万円が課税対象 | 1,600万円に課税 |
赤字を繰り越せるかどうかで、毎年の課税金額に差が出ています。赤字を繰り越して税金を抑えたい方は、法人化を検討してみましょう。
給与所得控除を利用できる
法人化すると、仮想通貨で発生した利益を給与所得にすることで控除を受けられます。個人で利益を出して雑所得として課税されるよりも、税負担は軽くなります。
給与所得の具体的な控除額は、以下表のとおりです。
給与等の収入金額 | 給与所得控除額 |
1,625,000円まで | 650,000円 |
1,625,001円から1,800,000円まで | 収入金額×40% |
1,800,001円から3,600,000円まで | 収入金額×30%+180,000円 |
3,600,001円から6,600,000円まで | 収入金額×20%+540,000円 |
6,600,001円から10,000,000円まで | 収入金額×10%+1,200,000円 |
10,000,001円以上 | 2,200,000円(上限) |
たとえば、利益が100万円発生した場合、個人と法人でいくら金額に差が出るか見てみましょう。
- 個人の場合:100万円がすべて課税対象
- 法人の場合:給与所得にすると「100万円-65万で35万円」が課税対象
仮想通貨取引で同様の利益を出したとしても、法人の方が手元に残る金額は大きくなります。
所得を分散できる
法人にして仮想通貨取引を進める場合、所得を分散することで節税につながります。家族や従業員を雇用して、報酬を支払う人数が増えるためです。
所得を分散した場合は、以下の流れで節税ができます。
- 仮想通貨取引で利益が発生
- 家族や従業員に給与所得として分散
- 人数分の給与所得控除が適用
個人で確定申告を進めている場合、所得を分散できません。給与所得として利益を分散したい方には、法人化をおすすめします。
経費にできる範囲が広い
法人化すると、経費範囲が広がることで節税につながります。
仮想通貨取引の場合、個人で必要経費として計上できるのは、取得費や取引手数料など一部の項目だけです。一方で法人は、本業にかかる必要支出をすべて経費として計上ができるため、所得を抑えられます。
法人化した場合、経費にできる例は以下のとおりです。
- 給与、賃金
- 家賃、地代
- 保険料、共済掛金
- 接待交際費
- 旅費、交通費
- 広告宣伝費
- 通信費
- 消耗品費 など
給与や消耗品はもちろん、家賃や保険料など生活に必要な項目も経費として計上できます。計上の可否については、税金のプロである「税理士」に問い合わせてから進めると、税務調査への対策にもつながります。
法人化して仮想通貨に投資するデメリット
法人化すると節税メリットが大きい一方、デメリットも存在します。
本章では、法人化して仮想通貨投資を進めるデメリットについて解説します。
- 決算時に含み益も課税対象となる
- 設立時に費用がかかる
- 会社の維持費用がかかる
- 口座開設の審査が厳しい
決算時に含み益も課税対象となる
法人化すると会計基準が変わるため、決算時に含み益があると課税対象になります。個人の場合、含み益は課税対象にならないため、法人化特有のデメリットといえます。
たとえば、含み益があるときに起こりうる最悪のケースを見てみましょう。
- 決算時に含み益があり課税対象になる
- 仮想通貨が大暴落して利益がなくなる
- 税金が払えなくなる
法人化すると仮想通貨の含み益も課税対象になるため、税金を払えなくなるリスクも考慮して取引する必要があります。
法人化を検討する場合は、含み益も課税対象になることを理解しておきましょう。
設立時に費用がかかる
法人化する場合、設立時には株式会社で約25万円、合同会社で約10万円の費用がかかります。発生する費用の内訳は以下のとおりです。
費用項目 | 株式会社 | 合同会社 |
定款認証手数料 | 約5万2000円 | 不要 |
収入印紙代 | 4万円 | 4万円 |
設立登記にかかる費用 | 15万円 | 6万円 |
参考:法務省「株式会社の設立手続(発起設立)について」「合同会社の設立手続について」
仮想通貨の利益で法人化を検討している場合は、会社設立費用と比較してメリットを出せるか考えたうえで行いましょう。
会社の維持費用がかかる
法人化すると、会社の維持費用が新たに発生するため、毎年継続して利益をだせない場合、法人化する意味がありません。
たとえば、法人化すると赤字のケースでも以下の維持費が必要です。
- 法人税(住民税の均等割りが赤字でも発生する)
- 法人登録可能なオフィスの契約金
- 法人化を失敗した場合の清算金
一度法人化してしまうと、事業が円滑に進まなくても、固定費用が発生します。法人化を検討する場合は、仮想通貨以外の収益を確保しておきましょう。
口座開設の審査が厳しい
法人化する場合は、法人名義での銀行口座開設が必要です。ただ、仮想通貨取引が法人の事業目的である場合、安定した収益を確保できる事業と証明できないため、銀行口座の審査が厳しくなります。
加えて、法人化するために用意する必要書類の種類も多く、審査に通るまでに時間がかかるケースもあります。
法人化をスムーズに進めるためにも、口座開設に必要な書類を用意するのはもちろん、審査に通るための利益を確保しておきましょう。
想通貨で法人化を考えるタイミング
仮想通貨で法人化を考えるタイミングは、利益だけで判断すると「800万円前後」がラインとなります。
法人の税率 | ・年800万円以下の部分:15% ・年800万円超の部分:23.2% |
個人(雑所得)の税率 | ・5%~45% ・695万円から899万円まで23% ・900万円を超えると33% |
(例)仮想通貨の利益が900万円の場合
- 法人税の場合:(800万円×15%)+(100万円×23.2%)=143万2,000円
- 個人の場合:900万円×33%=297万円
法人化のラインはあくまでも目安で、維持費や設立費なども踏まえると、人それぞれ税金が安くなるラインは変わります。
法人化のタイミングを判断できない方は、税理士に相談してみましょう。
仮想通貨投資における法人化がおすすめな人
法人化がおすすめな方に共通する特徴は、以下のとおりです。
- 法人向けの事業をしている
- 節税する手段を探している(年間利益が800~900万円を超えている方)
- 事業拡大の予定がある
法人相手に事業を進めたい場合は、個人よりも法人の方が企業からの信頼を得られます。事業拡大を考えている方にとってはメリットといえます。
また、仮想通貨投資での年間利益が800〜900万円を超えている場合は、法人化によって節税可能です。
仮想通貨における法人化がおすすめではない人
一方、法人化がおすすめでない方の特徴は以下のとおりです。
- 仮想通貨の利益しか得られていない
- 法人相手の事業を計画していない
- 事業拡大を考えていない
たとえば、美容院やエステサロン、飲食店などは、法人相手に営業をかける機会が少ない場合、法人化するメリットはほとんどありません。
仮想通貨の利益だけで法人化したとしても、毎年安定して利益が出せないと、メリットを得る機会が少なくなります。
できれば仮想通貨の利益だけでなく、他事業の利益も上げられる状況での法人化をおすすめします。
法人化して仮想通貨に投資する際の注意点
法人化して仮想通貨に投資する場合の注意点を確認しておきましょう。本章では、以下3つの注意点を解説します。
- 法人化の流れを把握しておく
- 税金が発生するタイミングを理解する
- 副業可能か会社に確認しておく
法人化の流れを把握しておく
法人化を検討している場合、スムーズに進めるためにも設立までの流れを把握しておきましょう。想像以上に時間がかかり、利益が発生していても法人化が遅れる可能性もあるためです。
- 定款の作成
- 出資の履行
- 期間の設置
- 設立の登記申請・成立
登記申請が完了するまで1週間〜10日、法人設立の手続きがすべて終わるまで2週間〜3週間かかります。
必要書類の準備や定款の作成などの工程を考えると、1ヶ月以上かかるため計画的に進めましょう。
税金が発生するタイミングを理解する
仮想通貨取引で税金が発生するタイミングは、基本的には個人と変わりません。売買や交換、貸出による利益付与などで発生した利益が課税対象です。
法人の場合、期末に課税されるタイミングがあります。自社で保有している仮想通貨は、銘柄の種類ごとに期末で時価評価するため、算出された差損益が課税対象となります。
仮想通貨の税金については、以下の記事も参考にしてください。
https://bitbank.cc/knowledge/column/article/bitbankplus-column-tax
副業可能か会社に確認しておく
仮想通貨でサラリーマンが法人化する際は、副業が可能か会社に確認しておきましょう。後々会社にばれてトラブルになるケースもあるためです。
たとえば、会社に確認を取らずに副業をしている場合、以下のトラブルが発生する可能性もあります。
- 企業情報の漏洩で損害賠償問題に発展
- 会社規則で副業禁止になっており、懲戒免職で退職金が出ない
会社員の状態から法人化する場合は、会社とトラブルを起こさないよう事前に確認しておきましょう。
仮想通貨の副業については、以下の記事も参考にしてください。
https://bitbank.cc/knowledge/column/article/bitbankplus-column-sidejob
仮想通貨の利益が増えたら法人化を検討してみよう
仮想通貨の利益が増えた場合は、節税のために法人化を検討してみましょう。個人の仮想通貨利益にかかる最大税率が45%に対して、法人税率は最大で23.3%と低く抑えられるためです。
ただ、節税メリットが大きい法人化に関する注意点を理解しておかないと、逆に損する可能性があります。
- 設立費、維持費がかかる
- そもそも仮想通貨で法人化は難しい
- 含み益にも課税されてしまう。
仮想通貨の利益以外に安定した事業をしていない場合は、無理に法人化する必要はありません。
仮想通貨など事業で800万円前後の利益を得ている方は、節税のためにも法人化を検討してみましょう。
ディスクリプション
法人化のラインは「800〜900万円」です。本記事では仮想通貨の利益が発生した場合、法人すべきかどうかを解説しています。法人化のメリットやデメリットを解説しています。