半減期後の上昇フェーズ「賞味期限」で反落 BTCはもう終わった?:11月のBTC相場
史上最高値更新も関税の悪夢再び
10月のビットコイン(BTC)ドルは11万4063ドルから取引が始まった。月初より米政府機関の一部が2019年ぶりに閉鎖したことを切っ掛けに、相場は上値を試す展開となり、現物ETFへの連日の巨額資金流入も相まって、6日には12万6223ドルの史上最高値を記録した。一方、10日にはトランプ米大統領が中国のレアアース輸出制限に対する報復措置として対中関税の100%引き上げを発表し、リスクオフムードが加速。相場が急落するなか、バイナンスでUSDeが一時0.64ドルまでディペッグしたことで、USDe建てで証拠金を入れていたロングポジションが強制清算され、暗号資産(仮想通貨)市場は過去最大となる約3兆円規模のロスカットを記録し、BTCは一時11万ドルを割り込んだ。
10日以降は一時11万6000ドルまで戻すも、トランプ氏の対中関税発表の約30分前にハイパーリキッドで巨額のBTCとイーサ(ETH)のショートポジションを入れたユーザー(通称「トランプ・インサイダー」)の動向が警戒され、戻り高値から反落すると、16日には米地銀破産による金融株安に連れて再び11万ドルを割り込んだ。
米中関係が危惧されるなか、その週末の19日には月末に米中首脳会談の開催が調整されていると伝わり、20日には11万ドルを回復した。21日には金(ゴールド)相場が利益確定売りで急落するなか、BTCへの資金ローテーションで相場は11万4000ドルまで戻したが、先述のトランプ・インサイダーがBTCショートポジションを積み増したことで、相場は三度11万ドルを割り込んだ。
ところが、トランプ・インサイダーが23日、ショートポジションを閉じたことで、相場は反転すると、9月の米消費者物価指数(CPI)の下振れや、米中閣僚級通商協議で合意の準備ができたと報じられ、相場は11万6000ドルを試す展開となった。
しかし、米連邦公開市場委員会(FOMC)後の記者会見でパウエルFRB議長が市場の12月利下げ期待を牽制したことで、相場は三度11万ドル割れを試すと、30日には連日の米株高の反動が相場の重石となり、10万6000ドル近辺まで水準を下げた。翌31日からは揺り戻しとなり、月足終値は10万9619ドルとなった。

「賞味期限」切れで奇しくも反落
先月は、BTC相場の半減期後の上昇フェーズの「賞味期限」を10月17日に迎えると指摘したが(第2図)、ETFへの資金流入がマイニングによる日次のBTC供給量を大幅に上回っていることや、シーズナリティ、FRBによる利下げ継続の可能性や、政府機関閉鎖を背景に10月は強含む展開を予想していた。ただ、蓋を開けてみれば、4月のトランプ関税ショックの再来とも言える展開となり、10月としては2018年ぶりの月足陰線を記録した。
10月FOMCを巡っては、2会合連続の利下げが決定された一方、パウエルFRB議長が利下げ期待を牽制したことによってタカ派的に写った訳だが、政府機関が閉鎖し公的機関からのデータ発表が延期されるなかでそこまで先の判断は当然下せないだろう。逆に言えば、労働市場が減速する状況下で政府機関の閉鎖が長期化し、雇用や消費への影響がでてきてもおかしくない筈で、市場の利下げ停止懸念はやや行きすぎているように見える。また、10日の相場急落の発端となった米中関係の悪化は、30日の米中首脳会談で蟠りも相応に解けていると考えると、足元の相場水準は売られ過ぎとも言える。

ただ、それでも急落前の12万ドルを回復できていないのは、10日以降のBTC相場の地合いが弱まっている何よりの証拠だ。一つの大きな要因としては、急落の最中に話題となったハイリキの大口ショートだ。23日にポジションを閉じ切るまで、同ユーザーのポジション動向に合わせるような短期の値動きが続いた。加えて、相場が頭打ちとなるなか、BTCの長期筋(Long-Term Holder、LTH)による売りも今夏と同水準まで上昇している(第3図)。LTHによるBTC売却は相場の上昇時には珍しいことではないが、相場が高値で揉み合うなかでの利食いの増加は、やはり半減期の上昇フェーズの折り返しが意識されている可能性が指摘される。
経験則から鑑みれば、FRBの利下げが続き、QTの停止も視野に入っていることから、BTCの年末までの先高観は維持しているが、市場的には半減期アノマリーの経験則も働いていると言えるか。そうなれば、反転の切っ掛けがなければ、カピチュレーションを迎えるまでダラダラと弱地合いが続く恐れがある。

11月の見通し:まだこれからと思う理由
半減期サイクルを意識した大口のBTC売りが相場の重石となっている模様だが、前回サイクルの史上最高値(ATH)を記録した2021年11月と現状では金融環境が180度異なる。当時はコロナ禍後の世界的大規模金融緩和が一巡し、2022年からはFRBの利上げとQTの開始が示唆されていた。こうした流れのなかでBTCは2021年12月から急速に下値を模索する展開を繰り広げ、2022年11月のFTXショックまで下落トレンドを形成した。
それと比較すれば、今回の利下げサイクルは依然として再開したばかりだ。トランプ関税や政府機関の閉鎖によって見通しが悪くなっているが、想定以上に緩やかなCPIの伸びや、10月も右肩下がりが続いたインディードの米求人掲載件数から考慮すれば、利下げの終着地点はまだ先な筈だ。切っ掛けがどのデータになるかは断定できないが、12月の利下げ期待復活によって11月は復調する余地があるだろう。
先月の急落前の12万ドルを回復できれば、半減期サイクルの「賞味期限」への懸念は幾分薄れるだろう。ATHの更新に成功すれば、サイクルが崩れたことを示唆し、市況が好転すると見ている。
ただ、前述の通り、足元の地合いの弱さを克服するには、一旦、売りが出尽くす必要も念頭に入れておきたい。









.jpg&w=3840&q=70)

.jpg&w=3840&q=70)
