利下げ期待と景気懸念で揉み合うBTC 雇用ベンチマーク改定に注目

1日〜7日のビットコイン(BTC)対円相場の週足終値は、前週比55万7585円(3.50%)高の1650万2265円と4週ぶりに反発した。
米連邦準備理事会(FRB)による利下げ期待を背景に、先週のBTC円は1500万円台後半から徐々に戻りを試し、5日には一時1678万円まで上昇した。ただ、この日発表された8月の米雇用統計では、非農業部門雇用者数が2.2万人増加と市場予想の7.5万人を大きく下回り、失業保険も4.2%から4.3%と4年ぶりの水準に上昇したが、景気への懸念が米国株相場の重石となり、米国時間序盤にBTCは1630万円周辺まで一段安を演じた。
週末も前半は上値の重い展開となり、相場は1620万円台で推移する場面もあったが、7日からは徐々に戻りを試し、1650万円を僅かに上回った。

8月の米雇用統計は、非農業部門雇用者数が市場予想を大幅に下回っただけではなく、6月のデータに-2.7万の下方修正が入り、雇用が減少(+1.4万→−1.3万)していたことが明らかとなった。これによってFF金利先物市場では9月の米連邦公開市場委員会(FOMC)にて50ベーシスポイント(bp)の利下げを織り込む動きも確認されたほか、年内3回の利下げが織り込まれた一方、景気後退懸念によって金融市場のリスク選好度は萎縮する格好となった。
米国株相場の軟化のみならず、5日は現物ビットコインETFからの資金流出も確認され、FRBの政策動向よりも米株市場の動きにBTCは左右された。
尤も、こうした市場の値動きには既視感もある。8月1日に発表された7月の米雇用統計も非農業部門雇用者数の下振れと過去分の大幅下方修正によって、米株は下落、ETFからは資金流出、BTC相場は11万6000ドル(≒1740万円)から11万2000ドル(≒1653万円)まで下落していた。しかしその週末には、BTCは売り一巡となり、週明けからは利下げ期待から買い戻しが入り、ETFへの資金フローも時間差で回復し、相場は8月14日に史上最高値(1824万円)を記録していた。
他方、今週は9日に年次の米雇用ベンチーマーク改定を控えている。雇用ベンチマーク改定では、直近3月までの過去12ヵ月分の雇用者数が修正される。通常であればそれほど注目されない指標ではあるが、今回は-81.8万と大幅な下方修正が予想されており、9月の大幅な利下げ観測や、年内3回の利下げ観測が一層強まる可能性が指摘される一方、景気への懸念も強まることが予想される。
以上に鑑みると、FOMC前の今週のBTC相場は利下げ期待と景気後退懸念で揉み合う展開が想定される。今週は10日と11日に8月の米卸売物価指数(PPI)と消費者物価指数(CPI)も控えているが、労働市場の下振れリスクがこれだけ顕在化し、9月の利下げが織り込み済みとなっている以上、インフレ指標の市場への影響力は限定的と言えよう。




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bitbank Report 2025/09/08:利下げ期待と景気懸念で揉み合うBTC 雇用ベンチマーク改定に注目