BTC月足は反発も上値は限定的 大底の形成は続くか:8月のBTC相場
反発するも上値重い
7月のビットコイン(BTC)ドルは5万8544ドルから取引が始まった。
上旬は6月の米雇用統計の下振れに加え、米証券取引委員会(SEC)のへスター・ピアース氏が、クラリティ法案が8月に上院を通過すると予想したことで、相場は6万ドル台中盤まで戻した。ただし、イランがホルムズ海峡を通航する民間船舶を攻撃したことで、トランプ米大統領は6月に合意された停戦覚書が終了したとの認識を示し、中東情勢の緊迫化がBTCの上値を抑えた。
中旬には、6月の米消費者物価指数(CPI)が前年比で+3.5%と5月の+4.2%から減速した一方、TSMCの決算を皮切りに同社株へ利益確定売りが入り、ハイテク株全般に売りが波及したことがBTCの上値を圧迫し、相場は底堅くも6万5000ドル回復に苦戦した。
下旬に差し掛かると、ホワイトハウス(WH)がクラリティ法案の倫理規定を巡って共和党議員との協議を始め、最終的には合意したことで、6万7000ドル近辺まで上昇したが、米・イランの軍事衝突が激化し原油価格が上昇するなか、ハイテク企業による過剰AI投資懸念が続き、BTCは上値追いに失敗。その後もハイテク株安が続いた一方、米連邦準備理事会(FRB)が米連邦公開市場委員会(FOMC)で政策金利を据え置き、追加的なタカ派サプライズがなかったことから、BTCは6万4000ドル周辺で方向感を模索する展開が続いた。
しかし31日には、コールドウォレットのコールドカードから不正にBTCが流出したと報告されると、相場は6万2800ドル周辺まで下落。月足終値は6万2830ドルとなり、7月の騰落率は+7.32%と3カ月ぶりに反発したものの、月間高値の6万6898ドルから押し戻される展開となり、上値の重さも残す結果となった。

クラリティ法案の行方は?
8月に入り、制度面ではクラリティ法案が正念場を迎えている。同法案は米国における暗号資産市場のルールを明確化する法案として期待されてきたが、8月7日の夏季休会入りを目前に控えた8月3日時点でも、上院本会議の審議日程には盛り込まれていない。
法案を成立させるには、議事妨害(フィリバスター)を回避するために上院本会議で60票以上の賛成を確保する必要があるほか、銀行委員会と農業委員会の調整、上下両院での法案一本化、さらにはステーブルコインへの付利や消費者保護を巡る論点の整理など、多くの課題が残されている。特に民主党の一部からは消費者保護や倫理規定を巡る慎重論が根強く、銀行業界による反対ロビー活動も続いていることから、土壇場での成立に対する不透明感は依然として強い。
尤も、法案を巡る期待は既に大きく後退している。予測市場では年内成立確率が30%を下回る水準まで低下しており、8月の休会前に採決が行われない可能性は相応に織り込まれているとみられる。このため、仮に今週中に採決が実現しなかったとしても、BTC相場への下押し圧力は短期的かつ限定的となる可能性が高い。一方で、急転直下で上院採決が実現し法案が通過すれば、制度整備への期待が改めて高まり、BTCの買い戻しを誘発する可能性は十分にあるだろう。
なお、SECのポール・アトキンス委員長は、仮にクラリティ法案が成立しなかった場合でも、SEC自らが規則制定を進める考えを示している。制度整備そのものが頓挫する可能性は低いとみられるものの、市場が期待する包括的な法整備は後ずれする公算が大きく、当面は制度面からの積極的な追い風は期待しにくい。
米インフレの鈍化が続くかが焦点
マクロ面では、FRBの金融政策が引き続き最大の注目材料となる。7月のFOMCでは政策金利が9対3で据え置かれた一方、中東情勢を背景とした原油価格上昇を理由に3名のメンバーが即時利上げを支持したことは、市場にとってややタカ派的なサプライズとなった。
尤も、7月に公表された6月分のCPIやPCEなどインフレ指標は総じて物価上昇率の鈍化を示しており、ウォーシュFRB議長も実質金利の上昇が景気抑制効果を発揮していることに加え、インフレリスクや期待インフレはピークを付けたとの認識を示している。このため、8月もインフレ鈍化が続けば、市場が警戒する利上げ観測は後退し、BTC相場にとって支援材料となる可能性がある。
8月27日から29日にかけて開催されるジャクソンホール会議も重要イベントだ。歴代FRB議長は同会議で金融政策の転換を示唆するケースが多く、「転換点」として市場参加者に意識されやすい。しかし、ウォーシュ議長は市場とのコミュニケーションを必要最小限にとどめる姿勢を示しており、7月FOMCでも具体的なフォワードガイダンスは提示しなかった。7月分のインフレ指標が引き続き鈍化基調を維持すれば、ジャクソンホールで利上げを強く示唆する発言が行われる可能性は必ずしも高くないとみている。
一方で、中東情勢が再び緊迫化し、原油価格が一段と上昇すれば、インフレ再燃を通じてFRBの利上げ観測を押し上げる可能性がある。従って、BTC相場は引き続きイラン情勢と原油価格の動向に左右されやすい展開が続くだろう。
8月の見通し
テクニカル面では、BTCは半減期サイクルにおける大底圏として意識される実現価格や200週移動平均線近辺で推移している。これらの水準は過去の弱気相場でも強いサポートとして機能してきたことから、中長期投資家による押し目買いが入りやすい価格帯と言えよう。
総じて、8月相場はクラリティ法案の進展やインフレ鈍化が確認されれば、5月以降の下落幅を取り戻す反発局面へ移行する可能性がある。一方、クラリティ法案の8月中の審議見送りは相応に織り込まれており、これだけを理由に相場が大きく崩れる可能性は高くないと考えている。むしろ最大のリスクは、原油価格上昇などを背景に米インフレが再び加速し、FRBの利上げ観測が強まることだろう。ただし、BTCは既にサイクル的にも売られ過ぎとみられる水準まで調整が進んでおり、6万ドル割れでは押し目買いが入りやすいとみている。先月も指摘の通り、BTC相場は当面200週線近辺で値固めを続けながら、マクロ環境や制度面の改善を待つ展開を基本シナリオとしたい。

第2図:8月のBTC対ドル想定レンジ 日足 出所:Glassnodeより作成









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