BTC週足は大幅安 仮想通貨サミットに失望売り

3日〜9日のビットコイン(BTC)対円相場の週足終値は、前週比231万2511円(16.24%)安の1193万円と大幅に水準を下げた。
週前半の下落から戻りを試した先週のBTC円だったが、1400万円近辺で失速すると、米景気後退への懸念から米株先物が下落し、徐々に上げ幅を縮小した。7日取引開始直後には、トランプ米大統領が戦略的ビットコイン備蓄(SBR)を創設する大統領令に署名したが、追加のBTC購入が決定されなかったからか一時は失望売りで1360万円周辺まで押した。
ただ、その後は押し目買いの様相で相場は下げ幅を縮小。また、この日発表された2月の米雇用統計が米連邦準備理事会(FRB)による追加利下げを正当化する結果となり、一時は東京時間の下げ幅を完全に奪回した。
しかし、雇用統計が下振れたことで景気への懸念から米株相場が伸び悩み、BTCはその後反落。パウエルFRB議長がこの日の講演で経済は「良好」と述べたことで一時は下げ止まったが、利下げを急がない姿勢を維持したことで、米金利の上昇がBTC相場の重石となった。また、この日開催されたホワイトハウスの暗号資産(仮想通貨)サミットで目星い進展もなく、失望感から1260万円台まで水準を下げた。
週末8日は小動きに転じたBTCだったが、9日米国時間から再び売りが加速すると、ロングの投げを伴って1220万円まで下落。更に今朝方、相場は1200万円を割り込み、終値ベースでは4カ月ぶりの安値に沈んだ。

米国の戦略的仮想通貨備蓄に関して市場では実需の創造が期待されていたが、追加のBTC購入は引き続き「検討」にとどまった。サミットでは他にも仮想通貨のキャピタルゲイン税撤廃などが期待されていたが、特段の材料はなく、なぜかFIFA会長による「FIFAコイン」の発行計画が発表され、市場にとっては空振り感が強かった。
また、2月の雇用統計では月間の非農業部門雇用者数が市場予想の+16万人に対して+15.1万人と下振れ、失業率も4%から4.1%へ悪化し、一時はFRBによる利下げ前倒し期待で金利が低下したが、パウエル議長が利下げを急がないスタンスを保持したことで、5・6月の米連邦公開市場委員会(FOMC)での市場の利下げ観測が後退し、BTC相場の重石となった。
尤も、FRBの政策動向はあくまでデータドリブンであり、最大雇用と物価上昇率2%の達成がゴールだ。そういった意味で2月の雇用統計は利下げ再開の足掛かりとなる可能性はある。
一方、問題はインフレだ。今週は2月の消費者物価指数(CPI)と卸売物価指数(PPI)を控えている。このところ上昇率の加速が確認されている両指数だが、景気の減速にインフレの加速が伴えばスタグフレーションが意識される可能性もある。市場では前年比のCPIが+3%から+2.9%、コア指数が+3.3%から+3.2%と若干の減速が予想されているが、結果が上振れとなれば市場が荒れ模様となる可能性に注意しておきたい。
他方、今週14日には昨年12月21日に可決した米政府のつなぎ予算が期限を迎える。8日にはジョンソン共和党下院議長が、共和党が一方的に作成した9月いっぱいまでのつなぎ予算案を公表した。通常であれば超党派の支持を得るために民主・共和党双方の議員が枠組みの作成を進めるが、上下両院で共和党が過半数議席を獲得していることから、共和党は強硬手段に踏み切った格好だ。
ただ、共和党の思惑通りに予算案が上下両院でスムーズに可決されなければ、2019年ぶりの政府機関一部閉鎖の可能性が浮上する。仮にそうなれば、政府に対する信用低下がBTC相場の支援材料になるとみている。
足元のBTC円は長期トレンドとして意識される200日日移動平均線を終値で割り込んだ。一方、相対力指数(RSI)は「売られ過ぎ」の30%付近まで低下しており、下値余地は案外限定的と指摘される。先物市場では資金調達率がマイナスに振れており、既に過熱感があるとも言えるか。仮想通貨サミットに対する失望売りは一時的と言え、今週の難所である米CPIまでBTCは底堅い推移が期待される。また、相場が足元の水準から一層下落した場合でも、テクニカル的な過熱感から押し目買いが入りやすいだろう。



