イーサリアムオンチェーン分析:小口アドレスは足元で増加傾向、アクティブユーザー数も堅調に推移

イーサリアム保有数別アドレス推移
- 保有数別アドレスは、ETHの数量別にアドレスを区分している。
- ブロックチェーン上のETHの保有数別アドレスを見ると、100ETH以下のアドレスの数は全体的に上昇している。10〜100ETHに限定するとアドレス数は、2020年10月に最高値680万を記録している。2020年春頃からイーサリアム相場では急激な上昇トレンドが発生しており、4.4万円程度だったイーサリアムは2021年5月には47.8万円を記録している。同アドレス数は、最高値を記録した2020年10月以降減少しており、2021年5月には606万まで減少した。10〜100ETHを保有する投資家の売りが発生した。価格は2021年5月にピークを付け、7月までに最大で60%ほど価格を下げている。
- 2021年7月からは、同アドレス数が再度増加傾向に転じている。増加に転じた時期に相場も反転し価格が上昇し始めた。2022年に突入してからは、アドレス数が100万程度増えており、3月には650万を回復した。間近では上昇傾向が続き、2021年1月以来の高さを記録している。

- 上昇傾向が見られる100ETH以下のアドレスとは対照的に、1000ETH以上を保有するアドレス数は減少傾向にある。1000〜1万ETHが保有されているアドレス数は、価格が5万円程度だった2018年7月に最高値となる18.8万を記録している。しかしその後は、右肩下りで下落しており、今年2月には13.1万を記録。今年に入ってからの減少数は4000程度となり、イーサリアムを大量に保有していた大口アドレスから売りが出ていることがわかる。

- 取引所が保有するイーサリアムは、2016年頃の誕生から2020年まで上昇傾向が見られた。2020年3月には過去最高値となる31.4万ETHを記録している。注目ポイントとして、2018年3月頃から取引所の保有は大きく上昇している。2018年春は、ICOバブルが弾けた直後でイーサリアムの長い下落トレンドが始まった時期と重なる。多くのイーサリアムが取引所に送られたことで価格上昇の重しとなった。
- 取引所が保有するイーサリアムは2020年7月頃から下落し始めており、価格の上昇トレンドも同時期に始まっている。価格は2021年11月に最高値となる52万円を記録している。2020年7月に取引所が保有するイーサリアムは31.4万ETHだったが、2022年2月には21.8万ETHまで下落している。2022年に入り、取引所のイーサリアムの保有数は横ばいで推移しているが、さらに減少するようなら価格を押し上げる要因となりそうだ。

損失アドレス数
- 損失アドレスは、ブロックチェーン上で送金が記録された時のイーサリアムの平均価格が現在の価格より上回っているアドレスをカウントしている。損失アドレス数が低いと、利益を確定するインセンティブが増加し、逆に高いと売るインセンティブが減少する。
- 2022年の損失アドレス数は上昇傾向にあり、25.3万にまで上昇している。2021年11月に価格が最高値を記録した後に損失アドレス数は急上昇している。現在の値は2020年5月にイーサリアム価格が2万円程度で推移していた時期と同等の水準だ。
- 損失アドレス数の最高値35.2万は、2020年3月にコロナショックが発生しイーサリアムが1.3万円で推移していた時期だ。当時のイーサリアムは2020年2月に2.8万円で推移していたが、約1ヶ月間で60%以上価格が下落している。

アクティブアドレス数
- アクティブアドレスは、ブロックチェーン上でETHの送金や受信を行った数をカウントしている。相場が盛り上がり過熱感が出た時に急上昇する指標だ。
- アクティブアドレス数は、2018年1月に大きな山を作っており64.0万を記録している。当時は、2017年10月時点の14.0万から上昇し始め、約3ヶ月間で50万もの増加があった。ICOバブルで盛り上がった影響で新しいユニークユーザーが市場に参加したことを表している。バブルが弾けた2018年夏以降は、アクティブアドレスは下落傾向になり2020年1月に底打ちし19.5万を記録した。
- 2020年以降は、相場の大きなトレンドが上昇に転じアクティブアドレスも増加し始めた。2021年5月にイーサリアムが最高値圏の47万円付近で推移している時、アクティブアドレスも最高値を記録し71.9万まで増加した。2022年に入り相場が停滞していることもあり、アクティブアドレスは49.2万付近に留まっている。現在のアドレス数は最高値からかなり減少はしているものの、2020年と比べると倍増しておりユニークユーザーが拡大していることがわかる。

スマートコントラクト上の供給率
- この指標は、イーサリアムの総供給量に対してスマートコントラクト上にロックされているイーサリアムの割合を示している。こちらの指標は2017年から2020年まで10%前後で横ばい推移をしている。
- 2020年以降、同指標は急激に伸びており、現在は26%程度のイーサリアムがロックされている。。これはスマートコントラクト上のアプリケーションの利用が増えたことが影響している。間近で流行を見せるDEX、DeFi、NFT、メタバースなどのアプリケーションを使うユーザーが増加傾向にあることがわかる。

先物価格年次乖離率(3ヶ月先)
- この指標は3ヶ月先の先物取引価格と現物価格の乖離を年率換算したものだ。上昇トレンドが長く続き、過熱感が出ると先物取引は現物価格より高く買われプラスに乖離する。
- イーサリアムの先物取引は2021年4月に46%の乖離を記録している。2020年9月にイーサリアムは3.7万円で取引されていたが、2021年5月には一時47.8万円まで上昇している。半年以上にわたり強い上昇トレンドが発生したため、先物取引が買われ過ぎて加熱感が出た。
- 現在2022年3月現在の乖離率は、3.5%程度推移しており過熱感がない状態だ。2020年以降では2番目に低い水準で取引されている。2021年7月には0.9%まで下落しており、2020年以降ではこれが最も低く、その後イーサリアム価格は最高値を更新している。

まとめ
- ブロックチェーン上のデータを見ると、足元では100ETH以下のアドレスが全体的に増え、アクティブアドレス数やスマートコントラクト上のイーサリアムは安値を切り上げ増加している。日を追うごとにネットワークを利用するユーザーが増えていることがわかる。
- 先物価格の乖離率を見る限り現在の相場に過熱感はなく、強気筋には有利な状況だ。損失を出しているアドレスの推移は増加し、取引所の保有ETHも減少傾向にあることから売り圧力は限定的だと見られる。長期的な価格の押し上げ要因となるデータも多くあり、冴えない値動きが続くイーサリアム相場だがそこまで悲観的になる必要はなさそうだ。