マンスリー・ビットコイン・レポート:オンチェーンデータは下落トレンドの底打ちか?投資リスクの低下を示唆
今年のビットコインの値動き
- 1月のビットコインの月足は16.7%下落した陰線を記録した。ビットコインは11月から価格が下落しており、3ヶ月連続の陰線となった。2月も上値が重い展開となり、4ヶ月連続の陰線の可能性が高かったが、最終日に持ち直し陽線を記録した。1月24日には400万円を割り込む値動きも見られ強く売り込まれた。安値を記録した後、2月にかけて500万円を回復するも、戻り売りが入る展開となり再度安値を試す値動きとなった。2月はマクロ的なイベントに影響される値動きが多かったが、終わってみれば1月の安値を割り込むことなく底堅い推移だった。
- 1月の月足テクニカルのポイントとしては、久々に1年間の移動平均線である12EMAを下回った。コロナのパンデミックの影響から金融市場全体が下げた2020年4月以来のことだ。当時は高値から57%ほど下落したが、次の月から大陽線を記録し、長い上昇トレンドが始まっている。今回は間近高値700万円から最大で50%ほど下落している。ビットコインの下落トレンドは50%下落した辺りから底堅く推移し始めることが多く、ドルコスト平均法のような投資方法のリスクがかなり低くなっている。ビットコインの2月の月足は陽線となり、12EMAの上位を回復し、2020年のように即座に買われた。

オンチェーンデータ
- ネットリアライズド・プロフィット/ロス
- この指標は、ブロックチェーン上で動いている全てのコインの損益を表している。0より高い値は、動いているコインが利益を生み出している状態を指し、下回っている場合は損失を出している状態を意味する。この値が高いと、利益確定する動きが想定され、低いと損失を確定する動きが含まれていると考えられる。
- この指標の値は、100万ドル単位で表されており、ビットコイン自体の価格が大きくなれば、上下に大きく振れる。1月後半には過去最安値付近となる-86.6万ドルを記録している。史上最低値は、2021年6月に記録した-103.7万ドルだ。こちらの指標では、すでに多くのトレーダーが損失を確定させていると見られ、潜在的な売り圧力は減少傾向にあることを示唆している。

- 含み益アドレス割合
- この指標は、コインが送金された時の平均価格が、現在の価格を下回り含み益を出しているアドレス数をカウントし、全体の割合を算出している。
- 昨年末から始まった価格の下落と共に含み益を抱えるアドレスの割合は、下落傾向が続いている。1月には64%を記録し、昨年7月に記録した69%を下回った。1月の64%は、2020年4月以来の低水準だった。昨年11月にビットコインが最高値圏で取引されていた時期は、この指標は95%を超えて推移していた。glassnodeでは、含み益アドレスの割合が95%を超えると売り圧力が増える水準に該当するとしている。昨年は95%を超えた期間が1ヶ月ほどあったが、その後上昇トレンドは天井を付け下落している。
- glassnodeは50%のラインを売られすぎを意味する総悲観に設定している。ここ5年間で50%を下回ったのは2018年12月と2020年3月の2回のみだ。現在の水準は2年ぶりの低い値となり、50%に到達してはいないものの高値からは十分調整しており、過熱感がない状態を示唆している。

- 取引所BTC保有変化
- この指標は、国内外の取引所が保有するビットコインの変化を表す。取引所が保有するビットコインが増えると、潜在的な売りが増加することになる。逆にビットコインの保有が減ると潜在的な売りが減ることになる。
- 1月の取引所のBTC保有は、1月中旬から後半にかけて増加し、日次で約2万BTC増加する日もあった。これは、ビットコインが昨年11月に最高値圏で推移していた時期に約4万BTCの増加が観測されて以来の高さだった。取引所の保有BTCが増加すると共に、ビットコインは1月後半から売りが加速した。ビットコインは、1月19日から22日にかけて4日連続の陰線を記録し、485万円から395万円まで約20%下落している。2月に入ると、ビットコインの取引所へのトランザクションは減少傾向に変わり、指標は0を下回り推移している。

- リザーブリスク
- リザーブリスクは、ビットコインの価格に対する投資リスクを表している。指標が低いと投資リスクは低く、リザーブリスクが上昇すると共に投資するリスクが上昇することを意味している。ビットコインを長期間に渡り保有するアドレスのデータを使って算出される同指標は、最低でも6ヶ月から1年間のスパンでの投資指標として利用される。
- 1月のリザーブリスクは1月27日に0.0022を記録している。これは2020年11月以来の低水準だ。最近で最も高かったのは、2021年5月にビットコインが600万円を超えていた時で0.0078だ。ビットコインの価格の下落と共にリザーブリスクも下落しており、間近1年間では最も投資リスクが低いことになる。glassnodeでは、0.0025以下を投資リスクが低い水準に設定しており、1月の数値はこれに該当する。0.02以上は投資リスクが高い水準に設定されており、2017年12月には0.02を超えている。

デリバティブ市場
- 先物年次乖離率(3ヶ月)
- 先物年次乖離率(3ヶ月)は、先物価格と現物価格の乖離を年率換算した指標だ。乖離率を見て、相場の過熱感や総悲観を知ることができる。
- 1月の取引が始まった当初は、乖離率が8.8%程度で推移していた。価格の上昇を見込んだ多くのトレーダーが、先物を現物価格よりかなり高い値段で購入していたことがわかる。しかし昨年に天井を付けた後、下落トレンドが続くに連れ乖離は縮小し、1月後半には6.5%まで下落している。これは21年9月にビットコインが最高値を記録する前の押し目となった水準と同程度の低さだ。同年7月には2.5%まで下落しているため、ここ1年間の最安値ではないが、現在の水準は過熱感がほとんどない状態だと言える。

- 資金調達率
- 資金調達率は、無期限先物取引のロングとショートの割合で算出される指標だ。ロングの割合が多いとポジティブに振れ、ショートが多いとマイナスに振れる。0.01%がニュートラルな状態だ。
- 1月の資金調達率は、マイナスに振れる日もあり安値圏でショートが増えていることを表している。1月後半、ビットコインが425万円付近で推移していた27日には-0.01%を記録している。ショートが増加するとビットコインは底堅く推移することが多く、価格は2月初旬にかけて一時上昇している。昨年10月に史上最高値圏となる700万円より上位で推移していた時は、資金調達率が0.02%で推移していた。1月の水準と比べるとロングが非常に多かったことを表している。指標の推移を見ると、1月には多くのロングポジションが解消されたことがわかる。ショートの割合が増え、資金調達率はマイナスに振れるようになった。

まとめ
- ビットコインは1月までに3ヶ月連続の陰線を記録し、下落トレンドが継続した。一方、2月は陽線を記録し反転の兆しが見られる値動きとなった。オンチェーンデータでは、昨年7月以降で最も含み益が出ているアドレス数が減少するなど、多くの利益確定の売りをこなしたと考えられる。ここ数ヶ月で投資リスクが減少しているというデータもあり、下落トレンドの底打ちが近いことを匂わせている。デリバティブ市場では、昨年後半と比べるとロングの比率が大きく下がっており、現在の相場に過熱感は見られない。ロングが減少したことにより上値が軽い相場展開が期待される。










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