Bitcoin Monthly Report:値動き、デリバティブ共に下落トレンドの継続を示唆し、300万円割れに現実味
ビットコイン週足チャート

- ビットコイン週足は非常に弱いチャートを形成している。価格は400万円の下位での推移が定着し始めており、先週も8%を超える下落を記録している。現在価格は350万円近辺で取引されている。週足は4月2週から9週連続で2ヶ月移動平均線(8EMA)を下回っている。
- 長期の値動きを見ても昨年の最高値から高値を切り下げる動きを見せており、明確な下落トレンドを抜け出せていない。足元の350万円から320万円のサポートラインに支えられ下落は一時的に停滞している。しかし買い需要が戻る気配はなく、このまま安値圏で推移すると、サポートを割り込むことが既定路線の値動きとなる。サポートを割り込むと売りが加速し200万円台前半への下落懸念が高まるので注意が必要だ。
デリバティブ市場
未決済建玉

- ビットコイン先物取引の未決済建玉は2月頃から上昇傾向にある。1月に一時的に下落し、停滞していた時期もあったが現在は上昇傾向が見られる。現金を裏付け資産にするキャッシュ・マージン、BTCを裏付け資産するBTCマージンが共に今年の最高水準で推移している。
- キャッシュ・マージンは22.5万ドルで推移し、1月の17.3万ドルから約23%上昇している。BTCは16.1万BTCで推移し、1月の11.6万BTCから約26%上昇している。年初から価格は下落しているが、どちらの先物取引も建玉数が増加している。
- 通常であれば、価格が下落した際はロングポジションの清算が発生するため未決済建玉数は減少するが、5月に今年の最安値を更新した時でも未決済建玉数は減少しなかった。未決済建玉数の増加は今後のボラティリティの上昇を示唆している。
先物価格乖離

- 先物価格乖離は、ビットコイン先物取引の3ヶ月先の価格と現物価格を示している。乖離率が高いと先物市場が強気であることを示唆する。現在の乖離は、3%程度で推移している。glassnodeのデータがある2020年9月以降で現在は、最も低い水準となっている。一方、先物価格はまだプラスで推移しており、先物を取引するトレーダーの目線としては、3ヶ月先の価格上昇を見込んでいる。
- 約1ヶ月先の先物取引の乖離は、ほぼゼロか小幅にマイナスなモノが多い。これは、短期では弱気だが長期では強気であることを示している。期先の先物取引価格ほど高い状態はコンタンゴと呼ばれている。一般的に相場が総悲観な時には見られない状態だ。ビットコイン価格は今年に入り下落が目立つが、先物取引を見る限りまだ総悲観ではないと言える。
オプションP/Cレシオ

- オプション市場のプット/コールオプションの割合は足元で上昇している。4月以降でプットの割合が増加しており、価格下落へのリスクをヘッジする動きが見られる。プットオプションは決められた価格で売る権利を有しており、価格が大きく下落した際のヘッジとして利用される。
- 年初は0.5を下回っておりプットオプションはコールオプションの半分を下回っていた。一方、5月に入り価格が下落した際はプットオプションが上昇している。現在は0.7程度で推移しており、コールオプションの約7割まで上昇した。オプション市場では、5月以降、価格の下落を恐れたトレーダーがリスクを抑制する動きが広がっている。
オンチェーンデータ
含み益アドレス

- 含み益アドレス割合は、ビットコイン全体のアドレスで現在価格よりプラスのアドレスの割合を示している。3月に価格が上昇し580万円を付けた際は、含み益アドレス割合は80%まで上昇している。
- 現在は価格下落の影響から60%まで下落している。一方でまだ6割のアドレスで含み益が出ていることを示している。2018年、2020年の安値圏で推移し下落トレンドが底打ちした際は、含み益割合は40%台まで下落しており現在の水準よりかなり低かった。現在はまだ含み益が出ている割合が高く利益を確定する動きが出やすい状況だと言える。(執筆時点で60%で推移していた含み益アドレスは、週末に価格が下落した影響から今年の最低低水準となる55%で推移している。週末に同指標は下落したが、まだ含み益が出ているアドレスが若干多い状態だ。)
取引所保有BTC

- 取引所保有BTCはユーザーの潜在的な現物の売り圧力を示している。取引所保有BTCは5月に価格が大きく下落した際に上昇している。価格の下落が現物主導だったことを示している。一方、同指標は足元で下落しており、増加した現物の売りを徐々に吸収していることがわかる。現在は247万BTCで推移している。長期で見ると取引所保有BTCは減少傾向にあり、売り圧力は徐々に減少していることを示唆している。一方、相場の状況次第では再度取引所への送金が増加することもあるため、今後も指標を注視する必要がある。

リアライズドP/L
- リアライズドP/Lは、送金時のコインが利益が出ている割合を示す指標だ。これが、1を下回ると損失を出しているコインの送金が多いこと示す。3月に価格が大きく上昇した際にこの指標は9.2まで上昇しており、利益を確定する動きが見られた。一方、4月に入り下落トレンドが始まると1を下回って推移することが増えた。現在は0.1で推移しており、損失が出ている送金が大半を締めており、損失を確定するために取引所に送っている可能性がある。
- 3年スパンの長期で見ても現在は最低水準で推移している。2020年3月のコロナショック相場では瞬間的に0.03を記録しているが、現在もかなり損失を確定する動きが広がっている。損失を確定する動きがある程度一巡すると、下落トレンドが反転することが期待される。足元の推移からは、下落トレンドの底打ちが遠くないことを示唆している。
まとめ
- 値動きは弱い状態が続き高値を切り下げている。弱気のチャートパターンとなるディセンディングトライアングルも形成されており、トレンドの反転はまだ期待できない。300万円近辺まで下落はかなり現実的なものとなっている。
- デリバティブ市場ではプットオプションが増え、価格の下落に対するヘッジポジションを取る弱気な市場参加者が増加している。一方、3ヶ月先物乖離はまだプラスで推移し、長期的にはまだ楽観的な市場参加者も多数いることを示している。
- オンチェーンデータのはリアライズドP/Lはヒストリカルで見てもかなり低水準で推移している。含み益アドレス割合も徐々に50%に近づいており、半分以上が損失アドレスとなると徐々に底堅く推移する可能性がある。足元では価格の下落に歯止めはかかりそうもないが、一時的なクラッシュでさらに急落すると上値が軽くなることが期待される。










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