BTCは上に往って来い FOMC以外に注目ポイントも
先週(7日〜13日)のビットコイン(BTC)対円相場は35,578円(0.81%)高の4,454,161円と小幅に2週続伸。ただ、ドル高円安の影響で、BTC対ドルの週足は小幅に反落した。
先週のBTC対円は、欧米のロシア産石油輸入禁止検討を巡り、世界の株式市場が波乱含みで始まる中、リスクオフの波及で450万円周辺から下値を模索する展開で始まったが、中国の王外相がロシアとウクライナの関係を「必要に応じて仲裁する」と、国際社会と足並みを揃え外交的手段での解決に傾いたことや、トルコでの露・烏外相会談が決定したことで持ち直し、450万円台回復をうかがった。
7日の米市場では、米国のロシア産石油輸入停止が決まり原油価格が高騰。これを受けて米株が大幅続落となる中、BTCも下げ足を速め、430万円にタッチしたが、コモディティ価格高騰によるインフレと消費減少による景気後退が同時に起こるスタグフレーション懸念が台頭し、期待インフレの急上昇とそれに伴う実質金利の低下を受けてか、BTCは同水準から反発。翌8日にはロシアがウクライナ首都キーフ(キエフ)を含む5つの都市で停戦するとの報道もあり、再び450万円をトライした。
週央に差し掛かると、アラブ首長国連邦(UAE)が原油増産を表明し原油価格が急落。同時に米株も切り返すとBTCも440万円台で底堅く推移し、9日東京時間に米税務省から暗号資産(仮想通貨)の規制方針を含む大統領令が漏洩すると、比較的前向きな内容が好感され、相場は上値を追う展開に転じ490万円にタッチ。一方、この日は欧州連合(EU)がロシアの仮想通貨による制裁回避策として仮想通貨を証券と分類、さらに10日にはバイデン米大統領が仮想通貨大統領令を発令したことによる事実確定売りが入り、相場は450万円まで急反落した。
その後、2月の米消費者物価指数が7.9%と前月から上昇すると、相場は一時乱高下を演じた末底堅く推移。11日の東京市場で日経平均株価が米株の下落を引き継ぐ格好で大幅に反落すると、BTCも連れ安となり450万円を割り込んだが、株価の下げ止まりを眺め440万円台中盤で反発。そこにプーチン露大統領がウクライナとの「停戦協議で進展」が見え始めたと発言し、相場は470万円まで上値を伸ばしたが、米株の続落と米証券取引委員会(SEC)が2件のBTC上場投資信託(ETF)上場を棄却したことが相場の重石となり、上げ幅を維持できなかった。
週末のBTC相場は460万円を背に概ね横ばいに終始したが、今朝方にシカゴマーケンタイル取引所(CME)のBTC先物が今週の取引を開始すると、先物主導で保ち合い下放れとなっており、440万円割れを試す展開となっている。


今週はいよいよ米連邦公開市場委員会(FOMC)が開かれ、日本時間では17日午前3時に政策金利誘導レンジ目標と経済見通し(Summary of Economic Projection)が発表され、午前3時半からパウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長の定例記者会見が行われる。1月のFOMC会合では、今年の利上げ回数や3月会合での利上げ幅についてのヒントが乏しく、結果的に失望感を生むこととなり、BTC相場はそれ以来方向感に欠ける展開が続いている。一時は政策金利の50ベーシスポイント(bp)引き上げが織り込まれていたが、ウクライナ情勢の悪化を受けて95%以上が25bp引き上げを予想している(FedWatch調べ)。
先日行われた議会証言でもパウエル議長は25bpの利上げを支持していたが、2月消費者物価指数(CPI)の上昇(7.5%→7.9%)や期待インフレ(BEI)の高値更新を受けてFOMCメンバーの物価に対する懸念は一層強くなっている可能性も指摘される(第2図)。ウクライナでの戦争の影響を受けて、主要国中銀が緩和縮小ペースを緩めるとの観測も上がっていたが、先週は欧州中央銀行が緩和ペース加速を決断した。その背景にもインフレ加速への懸念があり、今週のFOMC会合でも同様の理由でタカ派的なサプライズが出る公算は排除し切れないだろう。利上げ幅に多くの注目が集まっている印象を受けるが、経済見通しで年末時点の政策金利着地地点及び利上げ回数がどれだけ引き上がるかも注視したい。

FOMCへの不透明感が募る中、市場にとっては気になるテーマがもう一つ浮上している。ウクライナ情勢の悪化に加え、先進国によるロシア産石油輸入停止による原油価格高騰を受け、物価の更なる上昇が消費を圧迫し、物価上昇と景気後退が同時に起こるスタグフレーションが始まっている可能性だ。先週末に発表された3月のミシガン大学消費者態度指数(消費者マインド指数)は、59.7と前回の62.8と市場予想の61.4を下回る結果となり、少しずつ消費に陰りが見えてきたか。今週は16日に2月の小売売上高の発表があり、売り上げが3ヶ月ぶりに上向いた1月から比較すると、ベース効果で大幅に市場予想を下回る可能性もあり、スタグフレーション懸念が加速すれば株式市場ではリスクオフムードが一層強くなりそうだ。
BTC相場も突発的な株価の急落には影響を受けると指摘され、FOMCに小売売上高と、週央から波乱含みとなっている。ただ、先週指摘の通り、中期的にはリスクオフとインフレ高進懸念の狭間で綱引き状態が続くと見ており、引き続き、中期的には1月から続くアセンディングトライアングル内で揉み合う展開を想定している(第3図)。相場が40,000ドル(≒471万円)以下で推移する際は、先物資金調達率がマイナスに振れやすくなっており(短期筋の売りがある程度出切っている可能性)、足元の水準から相場が下げるには相応な弱材料が必要そうだ。2月に頭打ちとなったハッシュレートも戻りを試しており、実需の回復が見られる。
依然として決定的な買い材料は視野に入ってこないが、今週も値固めが続くシナリオを想定している。














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