2万ドル回復ならずも底堅いBTC FRBの姿勢にも変化が?
10日〜16日のビットコイン(BTC)対円相場の週足終値は、前週比32,460円(1.15%)高の2,862,443円と、終値で280万円台を維持し小幅に3週続伸した。
先週のBTC相場は、中国国慶節の連休明けとなった10日のアジア時間にCSI300指数やハンセン中国企業株指数が強く押し、280万円台中盤から小甘く推移すると、米バイデン政権による対中半導体輸出規制の拡大を嫌気した米株安に連れ安となり280万円を割り込む展開で始まった。その後は、米長期金利の一時的低下により270万円台後半で下げ止まると、米株が上値を重くする中、GoogleがCoinbaseとの提携でクラウドサービスでのBTC決済を開始するとの報道や、BNYメロンがNY州で暗号資産(仮想通貨)カストディ業ライセンスを取得したことで底堅く推移した。
週央には、外国為替市場でドル高円安が加速したことでBTC対円相場はジリ高となると、9月米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨で、経済への影響を懸念して利上げペースの調整を求める声が数名の参加者から上がったことが明らかとなり、小確りと推移し282万円を回復した。
一方、9月の米消費者物価指数(CPI)の発表が迫ると警戒ムードが広がりBTC相場は上値を重くし再び280万円を割ると、CPIの結果が市場予想を上回り、一時的に270万円を割り込んだ。しかし、9月はCPI上振れが一部で予想されていたことや、インフレ頭打ちが意識され米株が急反転を演じたことで、BTCも連れ高で下げ幅を奪回すると、翌14日東京時間には290万円を回復した。この日の米時間には、米ミシガン大学消費者信頼感指数の速報値が前月から改善したことと、消費者インフレ見通しが上昇したことで相場は上げ幅を縮小したが、節目の19,000ドル水準(≒282万円)で下げ止まり、週末も底堅く推移した。


9月の米CPIは米連邦準備制度理事会(FRB)による積極的な利上げを正当化する内容ではあったが、6月の9.1%からは3ヶ月連続で伸びが鈍化しており、コアCPIの上昇率鈍化も時間の問題と言えよう。また、FOMC議事要旨からも読み取れるように利上げによる景気への影響を懸念する声がある他、昨今ではFRB高官から、来年からインフレが鈍化し始める旨の発言などもあり、一貫してタカ派姿勢を維持してきたFRBに変化が現れ始めているのも事実だ。勿論、インフレ抑制は現在でもFRBの最優先事項ではあるが、セントルイス連銀のブラード総裁は先週のCPI発表後、引き続き利上げのフロントローディングの必要性を訴えた一方、CPIの上振れが必ずしも現在公表されているFOMCの見通しを上回るペースの利上げを正当化する訳ではないと発言した。
依然としてFRBの政策先行きを楽観している訳ではないが、①CPIの伸び鈍化、②FRBメンバーからの景気を懸念する声、③さらに今年の物価高を主導している原油価格の上昇もピークを迎えた可能性も加味すれば、年末までには利上げサイクル折り返しのタイミングがより明確になっている公算があると言えよう。また市場としては、FRBが現在想定している以上に早いペースで利上げを敢行するシナリオが排除される期待も生まれてくると予想され、リスク選好度の萎縮にも、一旦、歯止めが掛かり始めるか。
今週は、19日〜20日にかけて米住宅市場関連の経済指標の発表が控えている他、20日未明には米地区連銀景況報告(ベージュブック)が公開される。住宅市場も米国のインフレ加速に寄与してきたため、需要の落ち着きを確認できるか注目される。また、次回のFOMCが11月2日に迫っていることから、物価や労働市場について情報を幅広く得られるベージュブックには注目した。
他方、BTCの対ドルは、今月4日に史上最高値(69,000ドル)と3月高値(48,240ドル)を基点とする長期下降トレンドラインの上抜けに成功し、13日には同トレンドラインでのサポートを確認する格好で反発した。ブレイクアウトにしてはボラティリティが低かったが、これによりBTCはダウ理論の下降トレンドから脱したと言え、テクニカルの面でも底堅めフェーズに入ったと指摘される。
今週も積極的にリスクを取りにいける環境とは言い難いが、BTCは引き続き底堅い展開を想定している。




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bitbank Report 2022/10/17:2万ドル回復ならずも底堅いBTC FRBの姿勢にも変化が?










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