株・為替市場混乱もBTCは安定 ポンド建て取引増をどう評価する?
9月26日〜10月2日のビットコイン(BTC)対円相場の週足終値は、前週比61,765円(2.29%)高の2,762,417円と小幅に反発し、ドル建てでは週足終値で19,000ドル(≒275万円)を回復した。
イングランド銀行(BOE)の国債購入開始によるサプライズと米連邦準備制度理事会(FRB)関係者のタカ派的スタンス保持で先週のBTCは280万円を挟み込み揉み合いが続いた。8月の米消費者物価指数(CPI)の上振れを受けて警戒されていた30日の米個人消費支出(PCE)は、前年同月比のヘッドライン指数を除き市場予想を上回る加速を記録。BTC相場は米株の上昇に連れ高となり290万円にタッチしたが、この日もブレイナードFRB副議長らがタカ派的な発言を繰り返し、FRBが高い政策金利水準を維持する姿勢を示したことで米株は大幅反落。BTCもこれに連れ安となり、上げ幅を掻き消した。
週末も概ね280万円周辺での推移が続いたが、分散型取引所アグリゲーターのTransit Swapがハッキングの被害に見舞われたと報じられると、若干、上値を重くした。また、シカゴマーケンタイル取引所(CME)のBTC先物の取引が再開されると不安定な値動きとなり、足元、相場は270万円台中盤まで押している。


米主要3指数が3週続けて大幅に続落し、外国為替市場にボラティリティの波が押し寄せる中、BTC相場は異様な落ち着きを見せている。日英が自国通貨防衛に踏み切り、中国や韓国も為替介入の準備が報じられており、通貨危機が囁かれる中で安定していることは一定の評価に値するが、相場は方向感を示すことなく、閑散に売りなしといった具合だ。英国ではポンド建てのBTC取引が急増したとも報じられているが、ポンド建ての取引が数%しか占めないことに鑑みれば、相場への影響が皆無なのも納得がいく。
こうした中でビットコインのハッシュレートは再び水準を切り上げている。相場復調の先行シグナルともなってきたハッシュレートの復調だが、相場が復調しない状態で2ヶ月ほどマイニングの競争率が上昇し続けている状態は、マイナーの収益率の観点から相場への影響も懸念される。現状では、マイナーから取引所へのBTC送金に異常な動きは確認されないが、そろそろマイナーのアドレス動向にも目配りした方が良さそうだ。
相場が回復すればこうした懸念も解消されていくが、8月の米PCEは上振れとなり、中長期的なPCEのトレンドを示すトリム平均PCEインフレ率も7月の4.5%から4.7%に加速した。セントルイス連銀のブラード総裁が、過去にトリム平均PCEを政策金利の目標地点を示す一つの指標として言及していたことから、同指標はターミナルレートを推定するに当たり重要と指摘される。9月の米連邦公開市場委員会(FOMC)にて来年末の政策金利着地見通しが4.6%と示されたことから、今回の結果はそれほどサプライズではなかったと言えるが、市場のリスク選好度は萎縮した状態が続こう。
一方、FRBによる積極的な利上げ継続を見込み、米国の期待インフレ率(BEI)は一段と低下し、5年物BEIと10年物BEIの逆転がおよそ1年9カ月ぶりに解消された。先週も指摘の通り、市場は長期のインフレより目先のインフレが高くなることを織り込んでいたが、こうした歪みが解消された。BEIの差が大きく開いた今年の3月から利上げペース加速を示唆し始めたことから、中長期BEIの逆転解消でFRBメンバーの姿勢に変化が出始めるか注視したい。


今週は米国の雇用統計ウィークとなっており、JOLTs求人件数(4日)、ADP雇用レポート(5日)、雇用統計(7日)の発表を控えている。8〜9月と失業保険の新規と継続申請件数が共に低下していることに鑑みれば、賃金インフレの減速も見込まれるが、雇用者数の数値が強く出ればFRBによる積極的な金融引き締めを正当化するとも言え、見通しがつけ難い。勿論、市場は積極的な金融引き締めを織り込んでおり、相当なサプライズがでない限り混乱は起きないと見ているが、週後半にかけては警戒ムードが広がる展開に注意したい。今週もBTC相場は上値が重くも底堅い展開が見込まれる。



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bitbank Report 2022/10/03:株・為替市場混乱もBTCは安定 ポンド建て取引増をどう評価する?










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