しぶといBTC相場 復調の希望、泡と消えるか?
先週(4日〜10日)のビットコイン(BTC)対円相場の週足終値は、前週比231,279円(8.86%)高の2,842,193円と反発。一方、相場は20,000ドル水準となる272.5万円周辺を巡り中期的に方向感に欠ける展開が続いている。
売り一巡により自律反発の様相で、260万円から280万円まで反発して始まった先週のBTC対円は、5日海外時間に欧州のガス価格高騰による景気減速懸念のリスクオフが波及し、一時は上げ幅の殆どを吐き出すも、米長期金利急低下による米株の上昇に連れ高となり粘り腰を発揮。20,500ドル水準となる280万円周辺で上値を抑えられるも、米株が堅調に推移する中、6月米連邦公開市場委員会(FOMC)でも追加のサプライズは確認されず、底堅く推移した。
週央を通過すると、米連邦準備制度理事会(FRB)のウォーラー理事が9月に利上げペースを現行の75bpから50bpに縮小する余地について言及したことで、リスクオンがさらに加速しBTCは280万円乗せに成功、300万円にタッチした。
しかし、これによりBTCの対ドル相場が200週線に肉薄すると相場は失速。8日の米雇用統計が強めの結果となり景気後退懸念が若干和らぐ中、相場は再び300万円をうかがったが、FRBのブレイナード副議長が暗号資産(仮想通貨)市場の厳格な規制について言及したことや、Blockchain.comがスリー・アローズ・キャピタルに融資した2.7億ドルが貸し倒れになっていると発表、さらにマスク氏のTwitter買収撤回も嫌気され相場は上値を重くした。
週末に入ると、ブリンケン米国務長官が中国とロシアの連携を非難しBTCは290万円台で不安定な値動きとなると、ロシア側がこれに反応したかカラキフとドネツクで市民を巻き込んだ攻撃を展開しリスクオフムードが広がり、10日には相場は290万円を割り込んだ。


マイニングを巡る需給バランスが悪い中でBTCはなかなかしぶとい値動きを演じている。相場が対ドルの200週線に肉薄した8日には、マイナーから取引所へのBTC送金がまたもや増加したが、相場が崩れることはなかった(第2図)。これも先週の米株市場が堅調に推移したことが背景にある。特にウォーラー理事の発言で相場は上値を伸ばすことができたが、市場はこれにより本当にFRBが利上げペースを緩める環境が整ったか見極めるため、一層インフレ統計や経済の指標に敏感になるだろう。
事実、8日の雇用統計でBTCの短期的な方向感も定まると見ていたが、結果は非農業部門の雇用者数が市場予想を上回る増加となった一方、インフレの種となる賃金上昇率は高止まりとなり、ある意味でまちまちな結果で相場の反応も今一つだった。こうした中で今週は米国の消費者物価指数(CPI)、卸売物価指数(PPI)と小売売上高の発表を控えている。

CPIは直近3ヶ月間、8%台前半から中盤で高止まりしている(前年同月比ベース)。6月は賃金上昇率やエネルギー価格も高止まりとなっており、インフレ抑制はあまり期待できなさそうだ。市場予想では、6月のCPIは8.8%と前月の8.6%から更なる上昇が見込まれており、米株先物は週明けから警戒感を反映してか弱含んでいる。実際に6月のCPIが高止まり或いは上昇となれば、9月にFRBの利上げペースが緩む可能性も低くなると判断され、リスクオフムードが広がると指摘される。
テクニカル的にもボリンジャーバンドの幅は縮小し新たなトレンドが始まることが示唆されており、一目均衡表では遅行線が相場実体に接近しており、時間論的には相場がそろそろ動いてもおかしくはない。
利上げペース減速の可能性が僅かに見えてきた先週だったが、依然としてマクロ的な転換点を迎えたとは言えず、米国のインフレがさらに加速すればその僅かな可能性も泡となるか。引き続き、BTC相場はもう一段下げる余地があると見ている。













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