停戦協議決定もBTC反落 4万ドルに厚い壁【Weekly Market Insight】
先週(21日〜27日)のビットコイン(BTC)対円相場の週足終値は、前週比54,387円(1.23%)安の4,363,257円と小幅に下落し、3週続落。一時は心理的節目の400万円を1カ月ぶりに割り込む場面もあった。
シカゴマーケンタイル取引所(CME)のBTC先物がギャップダウンして取引を開始したことで、先週21日のBTC対円相場は40,000ドル水準となる460万円へ戻りを試したが、欧州株の続落や、ロシアのウクライナ東部2地域の独立承認と同地域への増兵が相場の重石となり、450万円台中盤から反落し420万円にタッチした。22日には欧州株が下げ止まったこともあり、再び450万円まで戻りを試したが、欧州議会で暗号資産(仮想通貨)の包括的規制を取りまとめた「MiCA」の草案にPoWコンセンサスアルゴリズムの禁止案が盛り込まれたことが明らかとなると、BTCは同水準から反落、24日にはロシア軍がウクライナ東部での軍事作戦を開始したことでリスク回避の動きが加速し、395.5万円まで下値を広げた。
一方、その後のBTCは押し目買いの様相で徐々に値を戻すと、バイデン米大統領の対露追加経済制裁発表、さらに、開戦初日からウクライナ首都キーフ陥落は時間の問題との報もあり、軍事衝突が長期化しないとの期待感からか相場は上値を追う展開に転じ460万円にタッチした。しかし、対ドルで節目40,000ドルとなる同水準は相場のレジスタンスとなっており、欧州議会のMiCA草案投票延期もあったが、1月の米個人消費支出(PCE)上振れによる金融政策引き締め加速への警戒感から上値を抑えられた。
週末には欧米が対露追加制裁としてロシア金融機関300行を国際銀行間通信協会(SWIFT)から排除。これがロシアによる仮想通貨での制裁回避を想起させたかBTCは一時上値を重くするも、ウクライナ政府がBTC、ETH、USDTでの寄付を募っているとの報道が広まると反発し、再び460万円をトライ。しかし、ロシアとウクライナの停戦協議が決まったにもかかわらず、プーチン露大統領が核抑止力部隊に特別警戒命令を出したことが嫌気され、またも同水準の上抜けに失敗している。


欧州議会がMiCA投票を延期したことで、週明けの警戒材料が一つ解消された。MiCA草案は先週、ドイツのメディアからのリークによりPoWコンセンサスアルゴリズム禁止が盛り込まれていることが明らかになった訳だが、FinTech領域による欧州の技術的優位性後退への不満などが挙がり、PoW利用の制限について修正の上、投票延期の運びとなった。欧州経済金融委員会委員長のStefan Berger氏によれば、2〜4週間後には再投票が行われる見通しだ。
さて、先週は遂にロシア軍によるウクライナ侵攻が始まり市場に衝撃が走ったが、こうした中で米連邦準備制度理事会(FRB)がタカ派的な姿勢を緩めるとの声も散見され、3月の連邦公開市場委員会(FOMC)での50bp利上げ織り込みもやや減少した。しかし、25日発表の1月米個人消費支出(PCE)は、前年同月比で6.1%上昇、前月比では実に2.1%上昇と、市場予想の1.5%を大きく上回り、物価上昇ペースが加速したことが示された。消費者物価指数(CPI)の1月は前年同月比と前月比でそれぞれ7.5%と0.6%と上昇しており、物価上昇を懸念するFRBとしては政策引き締めペースを速めたくなるデータとなったと指摘される。
ウクライナでの戦争も米経済への影響が、現状、限定的であると考えれば、16日のFOMCで50bpの利上げが決定される可能性は高いと言えよう。今週は米地区連銀経済報告書(ベージュブック:3月3日午前4:00)と雇用統計(4日午後10:30)の発表も控えており、労働市場の改善も確認されれば、利上げペースの加速や量的引き締め(QT)開始前倒しが正当化され、BTC相場にとっては重石となるか。

ただ、世界情勢が不安定化する中で、BTCにとってはポジティブな材料も出てきている。ウクライナでは先週から戒厳令の一環で電子決済システムが止められている模様で、現金の代替としてステーブルコインを筆頭に仮想通貨需要が伸びているとの報道があったり、既に仮想通貨で10億円相当の寄付がウクライナに送られていたりと、仮想通貨本来の役割を果たしている。また、SWIFTからの除外が決まり自国通貨が暴落するロシアでは、一部でバンクラン(市民がATMに殺到する現象)が起きているとの報道もあり、近いうちに同国で有事の仮想通貨需要が生まれることも想定される。
以上に鑑みて、今週のBTC相場の上値は雇用統計まで限定的と指摘され、40,000ドル水準となる460万円近辺がレジスタンスとなると見込んでいるが、下値の余地もある程度限定されるか。ただ、本日から始まるロシア・ウクライナの停戦協議の行方次第で相場が大きく動く公算は高く、ゼレンスキー烏大統領自身も「期待していない」と発言していることから、協議の結果を確りと見定めたい。



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bitbank Weekly Market Insight 2022/02/28:停戦協議決定もBTC反落 4万ドルに厚い壁










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