半減期サイクルを崩せるか? 2026年のBTC相場

最高値更新も勢い続かず
2025年のビットコイン(BTC)対ドルは9万3430ドルから取引が始まり、安値は4月7日の7万4496ドル、高値は10月6日に記録した史上最高値の12万6223ドルとなり、終値は前年比-6.34%の8万7535ドルで着地した。
1月はトランプ大統領就任に向けた祝賀ムードも束の間、事実確定売りや関税政策の段階的な発動によって暗号資産(仮想通貨)を含め広範な金融市場でリスクオフムードが広がり、BTCは節目の10万ドル維持に失敗すると、大統領令による戦略的ビットコイン備蓄(SBR)創設も肝心な追加購入はなく不発となり、3月には8万ドル下抜けを窺う展開となった。
4月に入ると、トランプ政権による相互関税発動を警戒し、BTCは明確に8万ドルを割り込み、昨年の安値7万4496ドルまで下値を広げた。しかし、相互関税には90日間の交渉期間を設けると発表され、相場は急反発を演じ、8万ドルを回復。これを機に、「トランプはいつも逃げる(Trump Always Chickens Out)」ということを揶揄する「TACOトレード」が広がり、市場のリスク選好度が上向くなか、トランプ政権が利下げを渋るパウエルFRB議長の解任を仄めかしたことがBTC相場の追い風となり、月末には9万6000ドル近辺まで水準を戻した。
その後も、米国の一部の州で仮想通貨を準備金とする法案が成立したことや、ムーディーズが米国債の長期信用格付けを最上位のAaaからAa1へ1段階引き下げたことが相場の支援材料となり、5月には11万2000ドルの高値を付けた。
6月13日には、イスラエルによるイランに対する軍事攻撃によりイラン・イスラエル戦争が勃発し、BTCは10万ドル割れを試す場面もあったが、22日には米国軍による軍事介入によって事態が収束に向かうと、翌23日には急反発を演じ、10万8000ドル近辺まで回復した。7月には、FRBによる利下げ期待もBTC相場の支援となり、初めて12万ドル台に乗せた。
8月に入るとジャクソンホール(JH)を控え、警戒感から弱含みに推移すると、クジラによるBTC売却も相場の重石となり、11万ドルの維持に失敗したが、米国の雇用とインフレの減速を背景に底堅い推移に転じると、10月には米政府機関の一部閉鎖を背景にBTCは買われ、6日には12万6223ドルの史上最高値を記録した。
ところが、その後は米中関係悪化を契機とするリスクオフの中で、バイナンスで USDeがデペッグする事態が発生し、ロングポジションの巨額な強制決算が生じ、BTCは12万ドル周辺から10万7000ドルまで急落。さらに、FRBによる年内の利下げ観測の後退や、AIバブル懸念が強まると、BTCは米主要株価指数の下落に追随し、11月には大台の10万ドル維持に失敗。失望感から売りが加速し、21日には8万638ドルと、史上最高値から36.11%の下落を記録した。
しかし、同日には米ニューヨーク地区連銀のウィリアムズ総裁が、利下げを「近い将来」に実施できると発言したことで、市場は急速に12月米連邦公開市場委員会(FOMC)での利下げを織り込み、BTCは下げ止まった。12月には、一時9万4000ドル台まで戻すも、米株式市場でのAIバブル懸念は払拭されず、9万ドル台の維持には失敗。年末には取引材料に乏しい中、8万8000ドル周辺での取引が続いた。

利下げの効果はこれからか?
昨年9月のFOMCで、FRBは9カ月ぶりの利下げに踏み切り、そこから3会合連続での25ベーシスポイント(bp)の利下げを実施したが、第3四半期のBTC相場は下げ足を速めた。10、11月は米中関係の悪化やAIバブル懸念といった予期せぬ材料もあったわけだが、利下げの効果が存分に発揮されず、金融機関の流動性が低下していた可能性も指摘される。
その要因として挙げられるのが、米財務省がFRBに保有する一般口座(TGA)残高の上昇だ。米財務省は昨年、短期国債(Tビル)の増発によって市中から流動性を急ピッチで吸収しており、6月には3000億ドル程度だった残高は、10月には約1兆ドルまで肥大した。12月まで継続していたFRBによる量的引き締め(QT)と合わせて、昨年は市場の流動性が低下していたと言える。
ただ、米財務省借入諮問委員会(TBAC)の四半期報告では、今年3月までにTGA残高を5900億ドルまで取り崩すとしている。加えて、FRBは12月のFOMCでQTの停止と同時にTビルの購入によるバランスシートの拡大を決定しており、2026年は昨年の流動性問題が解消に向かうことが期待される。
ここで注意しておきたいのは、今年のTGA取り崩しは、景気を刺激するための財政支出ではないということだ。コロナ禍の2020年には、積極的な財政支出によって世帯単位のミクロレベルまでマネーが注入され、資産バブルを助長し、BTCもその恩恵を受けたが、今年のTGA取り崩しは昨年の債務上限問題を受けた財政バッファの正常化であり、運用の最適化と称するのが正しいと言えよう。よって、今回のTGA運用最適化には、2020年末から2021年初頭にかけての爆発的な資産バブルを引き起こすほどのポテンシャルはないだろう。
とは言え、これによって金融機関の流動性問題は緩和されると指摘され、リスク選好度も改善しやすいだろう。特に、ETF経由の機関投資家マネーの流入再開が期待され、BTC相場の後押しになると見ている。
年末にかけて二つのリスク
今年の注目トピックとしては、米国の中間選挙が大きいだろう。関税による金融市場の混乱や史上最長の政府機関閉鎖など、トランプ氏就任から何かと問題は尽きず、昨年のニューヨーク市長選挙でも象徴されるように、第2次トランプ政権下の共和党は勢いを失いつつある。
よって、トリプルレッドを維持するために、共和党とトランプ政権は景気刺激策や減税政策などで支持率向上を図ると見ている。その一環として、仮想通貨に関する法案の成立を中間選挙までに急ぐ可能性も十分にあるだろう。なんと言っても、2024年の大統領選挙でのトランプ氏の勝因の一つは仮想通貨の規制緩和やSBR創設を公約として掲げたことが挙げられ、仮想通貨は選挙に大きな影響を齎す。
昨年1月の就任以降、SBR創設やステーブルコインのガイドラインとなるジーニアス法が成立したが、仮想通貨の法的枠組みを定めるクラリティ法案や、上院に提出されたが審議に進んでいないSBRに関する法案などが依然として残っており、政策面が相場の支援材料となる可能性が指摘される。
一方、中間選挙で共和党が劣勢となったり、実際にトリプルレッドを維持できなかったりした場合は、仮想通貨市場にとってリスクとして認識される可能性が指摘され、第4四半期にかけてBTC相場の上値圧迫材料となるだろう。
また、年後半にはFRBの動きにも注意が必要だろう。現状、インフレの伸び鈍化や労働市場の減速が利下げ継続を正当化しているが、政策の効果が発揮されれば、今年中の利下げ停止はほぼ確実と言え、早ければ年末にかけて利上げの議論が始まる可能性もあるだろう。
加えて、先述のFRBによるバランスシートの拡大は、納税期限である4月15日に向けた流動性措置という建て付けになっており、それ以降の運用は現状では白紙と言える。よって、春から初夏にかけてはこうした緩和政策がストップする可能性も考慮する必要があるだろう。
価格の見通し
以上に鑑みて、2026年のBTC相場は、前半は流動性の改善や米国における政策面の後押しが支援材料になると見ており、強気相場に回帰するシナリオを想定している。最も重要なポイントとしては、相場が史上最高値を更新できるかであり、成功した場合は「半減期サイクル」の崩壊によって、①昨年に利益確定した長期筋の買い戻し、②直近2年ほど活動が乏しかったリテール層からの資金流入、③さらには過熱感を帯びる貴金属市場からの資金ローテーションなどが起きると指摘され、アップサイドは相応に大きいだろう。
これまでの半減期サイクルから逆算した2025年のターゲットが20万ドルだったが、こうした経験則が通用しないとすれば、20万ドル以上もあり得なくはないだろう。これまで、オンチェーン上の実現価格から平均して4.23倍がこれまでの強気相場の天井となっていたことに鑑みると、足元の実現価格が約5万6000ドルであることからターゲットは約23万7000ドルとなる。実際にそれだけの相場上昇が起きれば、ターゲット算出に用いられる実現価格も上昇していると言え、心理的に意識されるチャートの節目25万ドルをベストシナリオとして見据えている。本ターゲット算出法もあくまで経験則がベースとなっているが、最低限半減期のバイアスは除外されている。
一方、年後半からはFRBの利下げ停止や中間選挙のキャンペーンが始まることで、強気相場が反転すると想定している。とは言え、長期BTC保有者の増加やETFによって、潜在的な売り圧力は過去の下落局面と比較して減退していると指摘され、過去の弱気相場のように70%〜80%のドローダウンはないと見ている。
実際に長期下落相場でのドローダウンはサイクルを重ねる毎に浅くなっており、こうした傾向はETFの台頭によって強まるだろう。今年の上値ターゲットを20万ドル〜25万ドルと仮定すれば、年末の着地はそこから40%ほど低い12万ドル〜15万ドルになると想定している。









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