NFTのポテンシャルは無限大?注目を集めるNFTの基本的なところ
NFTとは
これまで暗号資産(仮想通貨)市場ではブロックチェーン技術を活用したユニークなアプリケーションが多く生み出されてきました。ICO(Initial coin offering)、IEO(Initial exchange offering)、DeFi(Decentralized finance)などがその代表例として挙げられますが、現在最も注目されているのがNFTです。
NFTとは英語でNon-Fungible Tokenの略語で、「代替不可のトークン」という意味です。代替不可と言われても、イマイチよくわからないですよね?この「代替不可」という言葉の理解が難しい点は、代替不可なモノが人それぞれ違うというところにあります。感覚で判断される部分もあるでしょう。
例えば、ナイキのサッカーシューズは、商品の品番と状態が同じであれば代替は可能でしょう。しかし有名サッカー選手のサイン入りシューズは同様の新品であっても代替は不可になります。これは機能が同じでもサインが入ったサッカーシューズを人がユニークであると感じるからです。このため、大衆または複数人が愛着を持ったり、感情移入できるモノがNFTとして流通しやすいと考えられます。
NFTは実在するモノやデジタル上のコンテンツなどをシリアル番号のような数字を付けた電子データに変換し、オリジナルの識別や所有者を特定しやすくすることを目的にトークン化します。
最近、話題になったのはTwitter社CEOのジャック・ドーシー氏のツイートがNFT化され、チャリティー・オークションとして出品されました。2006年3月22日の創業当初にツイートされたモノがNFTプラットフォームのValuables by Centを通じて出品され、約1630ETH(イーサリアム)で落札されました。時価で290万ドルの値段が付きました。
また、今年3月にストリートアーティストとして知られるバンクシーの絵画もNFT化されオークションに出品されました。出品者はオークションの際、実際の絵画「Morons」を燃やすことで、物理的に存在するモノではなくなり、デジタル上にしか存在しない絵画になったことをアピールしました。
NFTは、あらゆるものをデジタル化し所有者を明確にし、そのデータをブロックチェーン上に半永久的に記録し続けます。また所有権の証明と譲渡を容易にしたことで新たな市場を開こうとしています。
NFTの過去と現在
NFTは最近の暗号資産(仮想通貨)市場の盛り上がりと共に注目されるようになっていますが、その歴史は仮想通貨界隈の中では長く2015年頃からビットコインのブロックチェーンを活用し存在してきました。
NFTの知名度を飛躍的に伸ばしたプロジェクトは、2017年頃に流行った猫のキャラクターを集める「クリプト・キティズ」でしょう。当時はクリプト・キティズを交換するトランザクションが急激に増え、イーサリアムの手数料が高騰するほどの影響力がありました。

その他、「クリプト・セレブリティズ」という著名人をトークン化したプロジェクトも一時的ではあるものの、注目を集めました。こちらは著名人の写真データをトークン化し収集または転売などを目的に利用されていました。トークンはイーサリアムのスマートコントラクトを使い取引されていましたが、もちろん実際の著名人との法的な関連性は何もないただの写真データに高額な値段が付けられていました。これは今振り返っても完全なバブル状態だったと言えます。イーサリアムの創設者であるビタリック・ブテリン氏は、20ETHで取引され当時の時価で約2万ドルの価格が付けられました。

2017頃は相場の上昇トレンドに乗ったハイプが流行し、このようなNFTが高額で取引されていました。では現在のNFTの価格はオーバープライスなのでしょうか?その可能性は十分にあります。ですが一つ言えることは過去よりもNFTで扱われるトークンの質が向上していることです。現在は特定の分野の第一線で活躍する人のモノからトークンが作成・取引されています。高額取引されるトークンは誰でも簡単に作れるモノではなくなっており、ユニーク度も増しています。
NFTの課題点
あらゆるモノをデータ化しトークンとして取引するNFT市場には、参入障壁の低さや自由度の高さなどから、まだまだ多くの課題点を抱えています。一つは、デジタルがゆえにコピーも簡単に作れてしまう点です。物理的な絵画であれば素人が簡単にコピーすることはできませんが、一度絵画がデータ化されインターネット上に流れてしまえば誰でもコピーを作成し、作者でなくてもトークン化し販売することができてしまいます。このようなコピートークンの流通を防ぐためには、トークンのオリジナリティを鑑定・保証する団体や機関が必要になります。一度、オリジナルの作品がトークン化されると流通経路がブロックチェーン上に記録されるため、コピー品の判別が容易になります。
2つ目の課題点は、トークン保有者の所有権や著作権を守るための法律がない点です。例えば、ジャック・ドーシー氏の初めてのツイートがTwitterから削除された場合はどうなるのでしょうか?すでにトークン化されたデータはブロックチェーン上に存在し続けますが、Twitterから元ツイートが消えたら、そのトークンに意味はあるのでしょうか?現状、NFTはデータ化されたただのトークンであり、トークン化される前の実態に対してなんの効力も持たないことが課題点として挙げられます。
ビットコインはブロックチェーン上で生まれブロックチェーン上でしか存在しないデータであり、コピーが不可、取引も不可逆であり、秘密鍵を知っていることが所有権に該当し、実際に取り扱えるのは所有者以外いません。しかしNFTは、物理的な世界からバーチャルな世界へ擬似的に所有権を移行するプロセスがあるため、無数にあるデータセンターで繋がるバーチャル世界と物理的な世界の両方に同義のモノが存在する場合があり、その場合はトークン保有者を特定し、所有権を保護する必要性が今後出てくるでしょう。
ゲーム業界での参入が進むNFT
NFTはクリプトキティズなどゲーム関連のプロジェクトからのアプローチが話題になることが多く見られます。ゲーム業界ではNFTを事業に取り入れようと企業の参入が徐々に進んでいます。
NFTは現実世界のモノをデジタル化することと共に、デジタルのコンテンツを細分化しそれぞれに所有権を与えることもできます。例えば、ゲーム内でのキャラクターやアイテムなどをNFT化しユーザーに所有権を与えることができます。
NFT化したトークンは、ユーザーが自由に他プレーヤーと実際に売買することもできるようになります。取引履歴はブロックチェーン上に記録されているため、本物を見分けるプロセスを自動で行えるためニセ物を売られる可能性は低いでしょう。
現状のゲーム業界では基本的に運営側が全てのコンテンツの所有権を100%持っており、ユーザーはキャラクターやアイテムを借りて遊ばせてもらっている状態と言えます。全ての権限が運営側にあるため、ユーザーのアイテムを没収したり、アカウントの凍結などを簡単に行うことができてしまいます。
しかしコンテンツをNFT化することでユーザーと運営側のパワーバランスをフラットに近づけることができ、よりフェアで新たな方向性のゲームコンテンツが制作されることが期待されています。NFTの交換や売買を通じて新たな市場が形成され、プラットフォーム外での遊び方も一新されるでしょう。面白いゲームには非常に高価な値段で取引されるアイテムやキャラクターも登場することも予想されます。
ゲーム制作会社としてもコンテンツのNFT化を通じて新たなマネタイズポイントを設計できると考えられており、日本でも大手のゲーム会社がNFT事業に参入することを発表しています。今後どんなコンテンツが出てくるか非常に楽しみな分野です。
NFTは一般消費者に広くリーチする可能性があるブロックチェーン分野かも
多くの仮想通貨やブロックチェーンプロジェクトは投資面や金融分野での将来性が注目されることが多く、これまでマス層向けの業界ではありませんでした。NFTはトークン化するモノによっては機能面で一般消費者に受け入れられる可能性があります。
絵画、歌、漫画、ゲームなどのコンテンツをNFT化することで、今まで仮想通貨市場に興味を持たなかった人たちを惹きつけることができるポテンシャルを持っていると考えられます。
インターネットやビットコインが広がったように、NFTも自由でフェア、オープンな市場が形成されれば多くの人に受け入れられるでしょう。一方、NFT化するコンテンツの高いクオリティや、取引の容易さ、トークンの真贋を検査するシステム、最低限の法的な所有権の認知・保護が求められます。
NFTは電子データに所有権を持たせ移転を可能にすることが重要なタスクであり、電子データ化できるもであれば何でも取引することができるようになります。ジャック・ドーシー氏のように個人のSNS上のデータも売買することもでき、まさに可能性は無限大と言え、今後の要注目の分野です。人間は取引を活性化させることで生活や文化を発展させてきました。NFTは電子データの取引を活性化させることで、私たちのオンライン上の生活をより豊かにしてくれるかもしれません。







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