市場の主役はアメリカへシフトか、バブル崩壊後に日本のシェアは明確に低下
2016年頃から2018年にかけて日本では暗号資産(仮想通貨)市場は大いに盛り上がり、市場の牽引役となっていた。日本の取引所が扱う銘柄が年間上昇率ランキングで軒並み上位に食い込むなど日本の影響力は高かった。日本では2017年に資金決済法が適用され世界からみて早い段階で規制が施行された。当時は2017年が「仮想通貨元年」になると大手メディアで謳われていた。
しかし2021年現在、日本の市場シェアや影響力の低下といったデータが見られるようになった。これは韓国にも当てはまり、ビットコイン取引の伸びが鈍化しており、市場シェアの低下といった日本と同様の傾向が示されている。2017年頃の韓国ではビットコインの需要が高く、価格に高いプレミアムが付いていた。高いプレミアムはキムチプレミアムと表現され、SNS上でも話題になっていた。
2017、18年頃の韓国では一時、他国の取引所より50%ほど高い価格で取引されていたこともあった。当時はアービトラージなどの取引所間の価格差を利用した取引が少なかったことも影響しているが、非常に強い需要によるプレミアムが存在していた。2021年に入り約3年ぶりの高いプレミアムを記録したが、20%程度に留まっている。
ビットコイン取引のシェアを失う日韓の取引所
下記の図は、ビットコインのブロックチェーン・データを元に作成された国別のトランザクションを示している。
2016年から2018年のデータ

2019年から2021年Q1までのデータ

市場が盛り上がっていた2016年から2018年にかけて日本の取引所における送受信の合計額は約238.4億ドルだった。当時はアメリカの合計額450.7億ドルと比較して約半分ほどの市場シェアを持っていた。
一方、2019年から2021年Q1の期間になると、日本の取引所の合計額は132.8億ドルにまで減少している。アメリカは同期間に949.4億ドルまで合計額が伸びており、対アメリカの日本のシェアは14%ほどにまで減少している。このデータからは、日本の仮想通貨市場が伸び悩んでいることがわかる。
2016年から2018年の韓国の取引所における合計額は189.0億ドルで日本よりやや少なかった。キムチプレミアムが付いていた当時、日本の方が送金額が多かったのはやや驚きのデータだ。2019年から2021年Q1では韓国の送金額は228.2億ドルに伸びている。一方、伸び率ではアメリカが優っており、やはり韓国の市場シェアも低下している。
2018年以降、日韓の市場シェアが低下している一方、セーシェル共和国やマルタといった聞き慣れない国の送金額と市場シェアは伸びている。セーシェル共和国にはBitmex,OKEx、Huobi、マルタにはBinanceといったサービスを世界規模で展開する取引所が本拠地を構えている。これらの国ではKYCや規制が緩いため、多種多様な取引サービスが提供できるためビットコインが集まる傾向にあると推測される。
影響力を増すアメリカ、大きな価格変動はアジア時間からアメリカ時間へ
ビットコインがアメリカに集中している影響からか、価格が大きく動くタイミングもアメリカ時間に発生しやすくなっている。ビットコイン価格におけるアメリカの影響値が拡大していると考えられる。


上記の2つの画像は、2017年12月から2018年1月のビットコインのチャートだ。この期間に最も価格変動が大きかった時間にチェックを入れている。価格変動を測るインジケーターとしてATR(Average True Range)を利用している。
同期間に1時間足のATRが大きく上昇した時間は3つあった。当時最も高かったATRは12万円から14万円ほどだった。17年12月8日16時、17年12月23日9時、18年1月17日13時にATRがピークを迎えている。これらの時間帯は日本、韓国を含むアジア時間の早朝または昼間にあたる。
では、2021年のチャートを見てみよう。


上記の2つの画像は2021年1月から7月のチャートだ。今年に入りATRのピークは20万円を超えている。上記では今年最もATRが上昇した3つの時間にチェックを入れてある。21年1月12日2時、21年2月4日0時、21年5月20日3時が最もATRが高かった時間だ。いずれもアジアでは深夜帯にあたる。現在の相場はアメリカ時間に価格が大きく動きやすいことが示されている。
まとめ
2017年以降、日本におけるビットコインの送金額は減少しており市場シェアをかなり落としている。韓国の送金額は微増しているものの、アメリカやセーシェル共和国といった地域に対しては伸びが鈍く、やはり市場シェアが減少している。
現在ビットコインはアジア地域よりアメリカに集まりやすい傾向がある。アメリカの市場シェアが伸びており、アメリカ時間に価格が大きく動くことが多くなった。価格形成における主役はアメリカに奪われてしまったようだ。










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